真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢 痴漢 痴漢」(昭和57/製作・配給:新東宝映画/監督:伊豆洋/撮影:西川卓磨/照明:石井明/編集:酒井正次/監督補:石部肇/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:杉佳代子・長谷圭子・島本優・にしき香・田口あゆみ・螢雪次郎・西中清・伊藤猛・富士光男・関たかし)。石部肇が演出部に入つてゐるのは初めて見た。
 夜の公園、青姦するカップル。女優部が島本優かにしき香といふのは兎も角、大問題なのが―外見による消去法で―最終的に男は伊藤猛しか名前が残らない。単なる同姓同名でない伊藤猛だとするとjmdbの記載を五年も遡る、当時二十歳の仕事となる訳だが遠くて暗くて識別不能。ただどちらに張るかと問はれるならば、背格好から違ふ気はする。一方茂みに潜んで、二人の様子を覗く螢雪次郎。螢雪次郎が中央にハート状に何かを塗つたサングラスを装着すると、暗闇の中もよく見えるやうになり、真正面に向かつて大股開いたパンティから飛び出す形でタイトル・イン。恐らくビデオ仕様の端折られたクレジットは脚本を通り過ぎ、朗ではなく螢雪次郎も一応クレジットまゝ。
 本篇インは、今夜こそと観音様に香水を振る杉佳代子。眼鏡に塗ると暗視効果を発揮する乳剤の開発に今日も帰りの遅い夫の井上和夫(螢)に、結婚五年目にして十日のレスに堪へかねた妻の美子(杉)はザクザク迫る。一旦は拒みかけつつ、和夫が容易く陥落する格好の夫婦生活。美子が旦那に尺八を吹き始めるや、尺八が鳴り始める画期的にポップな選曲には感動した。中途で奥多摩の山の中にカット移り、現存する旅館「玉翠荘」。斯様にクッソ古いピンクを見るなり観てゐて、実名登場する物件が今なほ現存してゐると、柄にもなく何となくホッコリする。帰宅した際美子には難航してゐる風も窺はせながらも、実際には開巻に於いて既に効果を発揮してゐるやうに、赤外線乳液はひとまづ完成してゐる。リフレッシュ的な出張で玉翠荘に逗留する和夫は、河原で軽く開戦するカップル・春子(長谷)とノブオ(ビリング推定で西中清)を目撃。山小屋に移行した二人を和夫も追走、赤外線乳液を塗つたサングラス―何故サングラスなのかは、恐らく普通の眼鏡では何かを塗つてゐることが判り辛いからか―で屋内の覗きに垂涎しつつ、窓から落ちて退散する。その夜和夫が部屋でウダウダしてゐると、処女を奪つた旧知であると春子が訪ねて来る。
 春子があれよあれよと膳を据ゑる一夜明け、会社から所在を聞いた和夫を追ひ、美子も奥多摩に入る。配役残りにしき香か島本優と富士光男か関たかし―この辺り、後述する田口あゆみを考慮に入れると登場順即ビリングでいいのかなあ?―は、ドライブ中脇道で一服するかとした和夫と美子が、遭遇する結婚間近でカーセックス中のカップル・フミコとタツオ。フミコV.S.タツオ戦も適当に経たのち矢継ぎ早に濡れ場を連ねる―当たり前だが凄く若い―田口あゆみと関たかしか富士光男は、和夫がここは裸眼で風呂を覗く、劇中台詞ママで女学生と土方。因みに、関たかしには九年後の1991年、「愛染恭子 in 沖縄 本番快感ツアー」(脚本:夏季忍=久須美欽一/撮影:西川卓)なるぞんざいな公開題の監督作があるらしい。
 DMMをブラブラしてゐて辿り着いた、如何にも変名臭い伊豆洋唯一作。「痴漢 痴漢 痴漢」だなどと、ザックリするにもほどがあるのか、プリミティブがグルッと一周したその先の地平を目指したものなのかよく判らないタイトルの一作。暗視乳剤と結構な秘密道具感も迸らせるギミックを持ち出しておいて、たとへば諸々の勢力が争奪戦のひとつやふたつ繰り広げる、といつた方向に話が膨らむでは欠片もなく。とりあへず乳剤グラサンをかけると暗がりの中もよく見えますよといふ方便で、クッキリ照明を当てた女の裸をしつかり見せるに終始する、ある種の穏やかささへ錯覚しかねない安寧な裸映画。取つてつけたとでもしかいひやうがないオチが無理からケリをつける始終からは、伊豆洋の正体を探らうにも時期的な障壁に阻まれる以前に、そもそも取つかゝりらしい取つかゝりが見当たらない。
 事の真相< 春子withノブオは美子が和夫を元気づけるために雇つた飛び道具


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )