真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「いんらんな女神たち」(2014/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/製作総指揮:池島ゆたか/第一話『さよなら好きになつた人』脚本・監督:金沢勇大/ヘアメイク:山崎恵子/イラスト:suu/音楽:石川真平/出演:佳苗るか・津田篤・明智半平太・郷志郎・栗本修次・熊谷まどか・悟志・佐々木聡・川崎ショウヘイ・森ななこ・なかみつせいじ/第二話『屋上』脚本・監督:中川大資/協力:ImportLingerieShop KURONEKO/音楽:小鷹裕/ヘアメイク:ビューティ☆佐口/主演:森ななこ・津田篤・本多菊次朗/第三話『騒々しい隣人』脚本・監督:矢野泰寛/ヘアメイク:芹川善美/出演:円城ひとみ・津田篤・森羅万象・堀晃大/Special Thanks:日高ゆりあ&ブルちやん・山口真里/第四話『ノリオのわくせい』脚本・監督:江尻大/協力:ファンデッド/応援:躰中洋蔵/音楽:與語一平/脚本協力:川上腐/出演:上原亜衣・久保田泰也・岡田智宏・吉行由実・依田湧星・田中尚仁・伊藤雅仁・土井光・石原裕司・宮本勉・津田篤・明智半平太・カトウユウキ/撮影:飯岡聖英/編集:酒井正次/録音:シネ・キャビン/助監督:田中康文/監督助手:菊嶌稔章/撮影助手:宮原かおり・浅倉茉里子/照明助手:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/スチール:津田一郎/協力:小川兄弟/現像:東映ラボ・テック)。出演者中、栗本修次から川崎ショウヘイと、吉行由実から宮本勉に、カトウユウキは本篇クレジットのみ。第三話監督の矢野泰寛は、北川帯寛の変名。
 タイトル開巻、第一話「さよなら好きになつた人」。第二話では実在するのか、萬の字の社旗まで抜かれるよろずや商事株式会社。仕事の出来ないオタク社員・松村邦雄(明智)が小言を喰らひ、営業部主任の田畑ノリオ(津田)は、お目当ての新入社員・綾瀬結衣(佳苗)に鼻の下を伸ばす。一方、屋上ではノリオと同期で、係長と出世頭の才媛・野原マコト(森)が悩ましくしやがみ込む。飲みの席、遅れて現れた松村に実は同好であつた結衣をカッ浚はれ愕然とするノリオに、部長(なかみつ)は社内で掃き溜めと称される博多支社への―課長に昇進するゆゑ一応―栄転を言ひ渡し、火に油を注ぐ、あるいは止めを刺す。郷志郎はイケイケの若手・阿部、熊谷まどかが、関根和美2012年第三作「奴隷人妻 恥辱のあへぎ」(脚本:金沢勇大・関根和美/主演:東尾真子)ぶりで飛び込んで来る。
 第二話「屋上」、自身に続いて意気消沈し屋上に退避したノリオに、マコトは悩みを打ち明ける。美人の顔を曇らせる元凶は無職×借金×DV、挙句に趣味はハメ撮りとかいふろくでもなさが過積載の彼氏・ユウ(本多)であつた。
 第三話「騒々しい来客」、引越しの荷造りに追はれる最中、話の通らないピザ屋にノリオが声を荒げる雨の夜。同じアパートの内田奈美(円城)が、部屋に転がり込んで来る。五年ぶりに出所する元夫・英二(森羅)から逃れるために、一晩恋人のふりをして呉れといふのだ。堀晃大は、態度の悪いピザの配達員。堀晃大の事故ネタ同様、限られた尺の中で無用な枝葉としか思へないチワワは、日高ゆりあの愛犬らしい。となると、ドアの隙間からお犬様を回収する殆ど映らない飼ひ主が順当に日高ゆりあか、何処に見切れてゐるのか全く判らないがクレジットはされる山口真里?
 第四話「ノリオのわくせい」、高校生時代(このノリオ役誰?/声は津田篤のアテレコ)、頻繁に自宅に久保田泰也や岡田智宏を連れ込む姉・麻里子(上原)の姿に青い性欲を拗らせたノリオは、近所の吉行由実のパンティを盗んで捕まる事件を起こす。そんな弟に、麻里子は自らのパンティを贈る。ノリオが吉行由実―ノーブラだよね―に詰め寄られる件、不自然なほど周囲に大勢が投入される。
 ピンク映画最後の新人監督と悲しい称号も囁かれた小川隆史が、初陣でやらかした―目下はAVを撮つてゐるらしい―のも何時の間にか今や昔。十五分×四本の形で四監督が一挙にデビューする、豪快な企画の第一弾。今作の三ヶ月後に中川大資は目出度く一人立ちを果たし、更にその一月弱後には、今度は渡邊元嗣のプロデュースで小山悟と残された最後の大物助監督―何だそれ―永井吾一(=永井卓爾)が処女航海に出港する。因みにオムニバス企画自体だとエクセスの「白衣の痴態 -淫乱・巨乳・薄毛-」(2002/監督:坂本太・佐々木乃武良・羽生研司/脚本:佐々木乃武良)以来、更に遡ると「人妻不倫痴態 義母・未亡人・不倫妻」(2001/監督:しのざきさとみ・小川真実・佐倉萌/脚本:有馬仟世)で三人官女が、「痴漢エロ恥態 電車・便所・公園」(1998/監督:勝利一・坂本太・佐々木乃武良/脚本:有馬仟世)では勝利一と佐々木乃武良が、今回の四人と同じく合同デビューを果たしてゐる。あくまで最終的には一本の統一された物語になる形で、十五分づつリレーを繋げる。案外困難なミッションに思へるのは素人目なのか、無難に纏めた第一話と第二話。塀の中で仕込まれたと思しき、薔薇の花香るオチに落とす第三話。銘々が拡げたあれやこれやを、無理から走馬灯に捻じ込んだ第四話。当然四本柱の裸は潤沢に見せなくてはならず、制約も決して少なくなからう中、総じてよくいへば手堅いともいへ、反面初々しい覇気なり才気には欠いた印象も弱くはない。特に目についたのは、金沢勇大が乱打する師匠・関根和美譲りの妄想ネタと、逆に池島ゆたかの下で長く修行を積んだ割には、覚束なくセンシティブな中川大資の叙情性。小娘小娘する佳苗るかと上原亜衣に対し、森ななこと、スチールでは間の抜けた馬面に見え、動いてるところの方が断然いい円城ひとみの濡れ場が―即物的に―クッソエロかつたゆゑ、ひとまづは楽しめた。四篇からなる一篇を、力づくにせよ何にせよ畳んでみせた江尻大の単独作を早く観たいが、関根和美と感動的に変り映えしない金沢勇大に、頭なり腹を抱へてみるのも悪くはない気がする。北川帯寛は・・・・傍目に過ぎないけどなかろ?


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