真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「発情夜這ひ未亡人」(1996/製作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/監督・脚本:関根和美/企画:桜井文昭/撮影:三原好男/照明:秋山和夫/編集:《有》フィルム・クラフト/音楽:リハビリテーションズ/助監督:加藤義一/監督助手:小谷内郁代/撮影助手:伊藤琢也/効果:協立音響/出演:有賀美雪・吉行由実・林田ちなみ・杉本まこと・樹かず・真央元)。出演者中吉行由実が、ポスターには吉行由美。“配給:大蔵映画”ではなくオーピー映画提供としたのは、白黒のOP開巻に従つた。
 ところはデフォルトのやうに南酒々井、下宿屋「コーポ後藤」。店子の大学生・武男(樹)と未亡人―亡夫に関しては一切触れられない―の大家・裕子(有賀)が一緒に風呂に入る。金銭の授受込みでトルコ紛ひ、といふかそのもののスペシャル・サービスに突入。尺八から武男が点火し後背位、フィニッシュまでには至らず朝―か昼―のハウススタジオ全景を抜いてタイトル・イン。朝から何杯もお替りする会社員の健治(杉本)に裕子が匙を投げつつ、女子大生・恵子(林田)はダイエット中とのことで朝食を抜く、以上四名がコーポ後藤に暮らす面々。その夜かどうかは厳密には判らないし別にどうでもいいのだが、健治が一階で眠る―店子の部屋は全員二階―裕子に夜這ひを敢行するのは、武男に対するものとは別の形での有料サービス。
 配役残り、真央元は最終的には捕獲された裕子にいはゆる逆レイプで喰はれる下着ドロ。実質的には三番手の吉行由実は、劇中御歳三十五といふのは若干逆サバの、ノルマの達成に汲々とする保険屋・鈴木。鈴木のファースト・カット、後方を通り過ぎる加藤義一が薮蛇気味に見切れる。
 通算二作前「女子寮潜入 覗きとレイプ」(1995/監督:川井健二《=関根和美》/脚本:川井健二・如月吹雪/主演:有賀美雪)の予習を経ての、関根和美1996年第一作。三年間使用した川井健二からの、名義戻し作に当たる。裕子との一戦の最中、健治が上げた「堪んねえぜ、こりやあ」といふ咆哮に、恵子が女子高生時代田舎でのレイプ被害を想起する瞬間に何某かの物語なり伏線の起動を認めかけたのは、概ね早とちり。無造作あるいは豪快な吉行由実の放り込みやうが寧ろ潔い、諸々の組み合はせの絡み絡みをなだらかに連ねるに終始する始終に、起承転結らしい起承転結は存在しない。裕子の恵子いはくの“自由奔放”は若くして亭主に先立たれた寂しさの一言で片付けられ、恵子の―オナニーは大好きだけれど―男性恐怖症も、樹かずのイケメンの前に容易く氷解する。但し、恵子の短い回想を除けば前半を男優部三冠を達成する有賀美雪で費やし、以降十分ごとに林田ちなみと吉行由実を完璧なタイミングで投入、裕子と恵子がタッグを組み武男を昇天させる―本当に武男もデスる訳ではない―締めの濡れ場へと繋げる構成は案外磐石。快晴の白夜の如き中身のなさが最早清々しく、何処から観ても何処で観るのをやめても全然困らない穏やかな裸映画として、これはこれとしてこれでも、量産型娯楽映画のひとつの然るべき姿と思へなくもないやうな、矢張り思へるかと叱るべきなのか。


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