真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「喪服の人妻 ‐白い長襦袢‐」(1991『喪服妻の生下着 突つ込む』の1997年旧作改題版/製作:プロダクション鷹/提供:Xces Film/脚本・監督:珠瑠美/撮影:伊東英男/照明:墨田浩行/音楽:新映像音楽/美術:衣恭介/編集:西脇尚人《井上編集室》/出演:浅間夕子・広瀬未希・朝比奈樹里・野澤明宏・清水義人・大島徹・中満誠治・村田ゆり子)。
 黒いブーケと脱ぎ乱れた喪服を抜いてチャッチャとタイトル・イン、浅間夕子と朝比奈樹里の濡れ場に乗せてクレジットが走る。クレジットされないことが間々あるけれど、その場合珠組には助監督居ないのか?
 亡夫―後に見切れるそこそこ爽やかイケメンな遺影の主は不明―の四十九日を終へ、田舎から唯一出席しこれから友達と会ふといふ義妹の雅子(広瀬)と別れた新村優子(浅間)に、高校と大学の同級生・吉川弓子(朝比奈)が合流、二人で喪服のまま飲みに行く。かつては百合の花を咲かせた間柄にある優子と弓子が仲良くボックス席で飲んでゐると、カウンターに弓子と仕事上の、因縁に近い付き合ひのあるらしき野澤明宏(役名不詳につき以後OZAWAにNを足してNOZAWA)が現れ、優子は二人の様子に軽くやきもきする。NOZAWAを子飼ひのスケコマシに、実は女だけでなく男も派遣するデートクラブを経営してゐる癖に下宿感覚―物件的には桃色アパート―の自宅に弓子が優子を招き、改めて旧交をマキシマムに加熱するところに、野獣NOZAWA大乱入。正体不明のギミックでしかないが内側から開けられない鍵をかけ、弓子と優子を順々に手篭めにする。優子に対し念仏唱へるより成仏させてやるぜ、野澤明宏のカッチョいいワイルド・ビートが、今作数少ないどころか唯一の見せ場。
 元々職場結婚し寿退社した会社に、優子は再“お勤め”―劇中無闇に連呼される用語より―することに。配役残り清水義人は、優子に求婚しフラれたこともある同僚・辻野で、大島徹が見るからな助平課長。三股かけた末に妊娠した雅子が、家出し優子一人の新村家に転がり込んで来る。村田ゆり子は堕胎に訪れた産婦人科医院の看護婦で、中満誠治がそんな状況にも関らず雅子が性懲りもなく見初めるハンサム産婦人科医。
 本公開から何と二十三年、地元駅前ロマンにて合見えた珠瑠美1997新版。確かプリントは残つてゐない筈なので、かういつた機会に恵まれるのも、プロジェク太上映館ならではの―両義的に―それはそれとしてのラックと尊ぶべきなのであらうか。闇雲に勿体ぶつた―割に中身は全くない―台詞回しと、辻野が過去に処女の優子をレイプしてゐた。だなどと無造作な薮蛇さを除けば、今回珠臭さは非常に薄い。物語らしい物語は存在しない中、絡みに次ぐ絡み、適当な相手が見当たらなければオナニーさせればいい。始終は女の裸を銀幕に載せることに一筋に奉仕する、それなりに健気な裸映画ではある、二番手の面相が非常に残念でもあるのだが。NOZAWAにチョロ負かされ課長を客に取らされた雅子が、中満医師と寝る為にNOZAWAを逆に利用する展開は珠瑠美にしては驚異的な妙手。弓子宅乱入時に撮影された印画紙写真と録音された音声テープ―この辺りに時代が感じられる―を出汁に、優子も課長を客に取らされる。雅子は望み通りに中満医師と、他方弓子はNOZAWAと何だかんだな腐れ縁。三本柱それぞれの濡れ場がトリプルクロスするフィニッシュは、珠瑠美らしからぬ定石中の定石、面白いとは一言もいつてゐない。

 “辻野が過去に処女の優子をレイプしてゐた”と先に触れたが、因みにこの時優子は男性経験は確かにないものの、女性経験は弓子と開花済み。それでも一応処女といへるのかな?(´・ω・`)


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