真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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駄楽ひまなときブログ
行きつけのお店のブログ、下戸なのに。しかも閉めたんだけどね
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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若奥様(秘)宅配便
さ行
/
2011年08月26日
「
若妻の身震ひ 大胆騎上位!
」(1994『若奥様《秘》宅配便』の2011年旧作改題版/企画・製作:オフィス・コウワ/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:小渕アキラ/プロデューサー:高橋講和/撮影:斉藤幸一/照明:斉藤久晃/編集:金子尚樹 ㈲フィルム・クラフト/製作担当:堀田学/助監督:佐々木乃武良/音楽:伊東善行/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学㈱/撮影助手:佐藤文男/照明助手:小倉義正/スチール小島ひろし/車輛:網野一則/出演:赤木佐知・浅野桃里・本城未織・杉本まこと・樹かず・久須美欽一・平賀勘一)。久し振りに穏当な新題だ、これで穏当なのか。
交際五年、入籍六ヶ月の筒井夫婦の夜の営みでひとまづ快調に開巻。尤も、事後妻に余韻に浸る間も与へず、シャワーを浴びると床を出てしまふ夫・靖夫(杉本)に、美紗子(赤木)が長過ぎる春はさて措き結婚してから半年にも関らず、“十年も一緒にゐるみたい・・・”と臍を曲げてタイトル・イン。カット明けると男の自宅にて、美紗子の妹・宮田玲美(浅野)と、フィアンセ・戸田耕作(樹)の大絶賛婚前交渉。ところが姉が姉なら妹も妹、藪から棒にいはゆるマリッジブルーに陥つた玲美は、一旦ヤルことは済ませつつ、耕作に婚約破棄を一方的に通告する。寝耳に水こゝに極まれり、ともいへ。姉妹それぞれの絡みをダイレクトに連ねる構成も確かに酌めぬではないが、直後の筒井家を訪ねた玲美が姉の姿を通して結婚に幻滅する件を、先に噛ませておいた方が話の流れがより滑らかになつたのではあるまいかとの、文脈上の疑問も残らぬではない。話を戻して、短大の同窓会の報せを受け取つた美紗子は、自身の現況に対する不満を負ひ目に感じ逡巡する。そこに飛び込んで来る、“最も美人な三番手”界の女王にして、
だからPG誌編集長・林田義行氏の姉ではない
a.k.a.林田ちなみこと本城未織は、美紗子に誘ひの電話を寄こす、互ひに数少ない既婚者の友人・徳永恭子。本城未織の参戦を従順に補佐する平賀勘一は、何と主婦売春に手を染める恭子の客・平沢和男。そんなこんなで会当日、同窓生要員の頭数は華麗にスルー、二次会かはたまたそれ以降か美紗子と恭子が二人きりで落ち着く、角打形式の小洒落たバー。出し抜けに恭子がその夜の客の下に、美紗子を向かはせようとする。脊髄反射で驚愕する美紗子を、恭子は売春は売春であるのは認めた上で、後述する奇天烈なゲーム理論の一本槍で正しく強引に言ひ包める。そこで美紗子の初陣を火に油を注ぎ迎撃する久須美欽一が、結構アグレッシブな性癖の客・宮川勇次。エクセスライクな主演女優の挙句飛躍の大きなどころか出鱈目なシークエンスを、頑丈に形成しめる久須美欽一の侮れない安定感は、実は正方向に評価されて然るべきではなからうか。兎も角、客の男達との情事に何故か素直に開眼した美紗子は、俄に独身時代のやうな光彩を取り戻す。そんな美紗子に対し、靖夫は妻の復活を静かに注視、玲美は姉の変貌に目を丸くする。
坂本太デビュー翌年の通算第四作は、恭子いはく売春をゲームとして楽しみ得るのは、帰る家庭と愛すべき夫のゐる主婦だけである、などとする怪理論、あるいは直截には正体不明の没論理による、清々しいまでの一点突破を敢行してみせる一作。一見、結婚生活と売春行為をそれはそれとしてアクティブに両立し、輝きながらセックスを愉しむ三人の女の雄姿ならぬ雌姿には、女の側から、女が気持ちよくなるための性を描くことを頑強に旨とする、浜野佐知との近似をも頓珍漢には勘違ひしかねないが、勿論坂本太の素直な視座は単に、助平な女は男にとつて有難いことこの上ないウヒヒウヒヒといふ、シンプル極まりないものに過ぎないにさうゐなく、なればこそ理に適つた頑丈さも誇り得る。理といふか、生理といふか。細かな脈略も、映画作家然とした浅墓な色気にも脇目も振らず、ヒロインの行動原理を無理矢理に固定するや、姉妹属性も加味した濡れ場濡れ場の怒涛の連打で一息に押し切る力技は実に鮮やか。グルーヴの余波で壊れかけた二つの男女関係を修復し、仔細を操る糸を裏で引く、絶妙な伏線も踏まへた黒幕の登場と底の抜けてゐるやうに見せて、案外劇映画的に十全な段取りを何気に整へてゐたりもする。裸映画としての誠実さが、胸に爽やかな快作。女の裸をタップリ楽しませて、後にはケロッと何も残さない。意外とそんな辺りが、量産型娯楽映画の到達点であるやうにも、時に思へる。
ところで瑣末・オブ・瑣末。同窓会後の美紗子と恭子が、それぞれ未婚者ではないゆゑ男の子と会話する機会がまるでなかつたと愚痴を零し合ふのは、絶対にあり得ない話では必ずしもないものの、同窓会が短大時代のものであるといふディテールを想起するに、些かの違和感が拭へなくもない。
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