真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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変態熟女 裏わざ表わざ
深町章
/
2010年12月26日
「
熟女淫行マニア
」(1997
今度こそ
『変態熟女 裏わざ表わざ』の2010年旧作改題版/製作:国映・新東宝映画/配給:新東宝映画/脚本・監督:深町章/企画:朝倉大介/撮影:千葉幸男・池宮直弘/照明:伊和手健/助監督:広瀬寛巳/編集:酒井正次/協力:セメントマッチ/出演:しのざきさとみ・相沢知美・林由美香・森山龍二・池島ゆたか)。
東京での生活に疲れた教師の池上(池島)は、教職は休職した上で、過去に捨てたといふか一方的に逃げた女を追ひ、山梨県甲州市は大菩薩山麓の田舎町に流れて来る。即ち、要は御馴染み
水上荘
映画といふ寸法である。池上にとつて二十年ぶりともなる当地が、故郷なのか単なるかつての赴任地に過ぎないのかは、特に明示されない。池上は早速、当時直截にいへば手をつけた元教へ子の綾子(しのざき)と再会する。高校時代に両親を同時に事故で亡くした綾子は二人暮らしにしては大き過ぎる実家―が、いはずと知れた水上荘―に、現在は家族ではない加代(相沢)と同居してゐた。至極スムーズに綾子との関係を再燃させた池上を、矢張り元教へ子で今は父親の石材工場を継いだ横山(森山)も歓待、身の振り先のない恩師を快く自身の会社の顧問に迎へる。初めて見たが、森山龍二といふ人はメガネを外した方が幾分ハンサムだ。頑強な眼鏡至上主義者としては、単に壮絶なミス・チョイスに過ぎないやうにも思ひたいが。林由美香は、横山行きつけの囲炉裏が売りの居酒屋女将、兼情婦のミユキ。この居酒屋も、店名の特定にまでは未だ至らないが地味にサブ頻出の物件ではある。ひとまづ、順風に新生活をスタートさせたかに見えた池上ではあつたが、昼間の水上荘が無人なのか鍵が閉ざされがちなことと、絶頂に達した綾子が漏らす「タロー」といふ聞き覚えのない男の名前とに猜疑を募らせる。
とりあへず作劇の軸が通つたところで、以降は展開上の目立つた手数にも欠き、中盤清々しく中弛む感は否めない。この期に改めて気が付くと、この物語の薄さといふ特徴は、深町章映画にしばしば見られるものではなからうか。池上先生と女学生の綾子との回想もさしたる深まりを見せないばかりか、よくよく考へてみると、鍵を半分握る「タロー」との間に齟齬も生じさせなくもない。この点に関しては、当時の綾子は、未だ女の悦びを完全には知らなかつたのだ、といふ回避の方便もなくはなからうが。とはいへ、唐突ともいへるクライマックスの謎明かしに際し、一旦は濡れ場要員をわざわざ尺の繋ぎに再登板させたものかと早とちりさせかけた、ミユキと横山の二開戦を発端に配する構成の妙は、林由美香が初登場時に何気なく撒く「女は寂し過ぎると、色情狂になるんだつて」といふ伏線も当然に踏まへて、一見全くさりげなくもピンク映画として実は実に秀逸。煌くやうに可憐な相沢知美が、終に辿り着かれた真相の露見を前に零す涙も頗る叙情的に、稲尾実から数へて二百作を優に超える深町章のキャリアは流石に伊達ではないと唸らされる、決して殊更に前に出てくることはないままに地味な秀作である。
反面、よくいへば最早瑣末には囚はれぬとでもいふことなのか、ところどころで微笑ましく花開く綻びは側面的なヒット・ポイント。「タローのお宿」来訪時の符丁として、超有名ドッグ・フードの商標が堂々と実名登場する大らかさも兎も角、綾子とは百合の花も咲かせる、加代の自慰シーン。手動のボカシが堪へきれなくでもなつたのか純粋に頃合を見誤つたか、必要ない時点あるいはアングルから、フレーム内にウロウロと入り込む粗相は爆発的に可笑しい。これでそのまま完成品で御座いと通してしまへるといふのも、何と麗しき世界よ。
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