真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「超過激 淫らな浴室」(1994『過激!!同性愛撫 蜜の舌』の2008年旧作改題版/製作:プロダクション鷹/配給:新東宝映画/企画:中田新太郎/脚本・監督:珠瑠美/撮影:伊東英男/照明:石部肇/美術:衣恭介/音楽:鷹選曲/編集:井上編集室/現像:東映化学/録音:ニューメグロスタジオ/出演:柴田はるか・本城未織・麻生雪・杉本まこと・樹かず・中田新太郎)。出演者中、中田新太郎は本篇クレジットのみ、助監督クレジットはなし。
 商社の社員ファッション・デザイナーである玲子(本城未織/現:林田ちなみ)は、以前のモデル選考からは漏れた美大生の美紗(柴田)を、アシスタントとして個人的に雇ふ。そのことを知つた企画部長の加治(杉本)は、下心を包み隠しもしない興味を示す。流石に、この頃ともなると、杉本まことも大企業の部長にしては少々若い。会社に暗然とした影響力を及ぼす総会屋の下川(樹)は、真性ビアンであるといふ性癖も知らず玲子に淫欲の食指を伸ばす。樹かずもポジションに比して若いことは若いが、この人の場合、そもそも今もそれほど変らない。玲子が秘かに美紗を狙ふ一方、実はモデル選考時に美紗を手篭めにしてゐた加治も、再び獣欲を滾らせる。麻生雪は、当然の如く玲子とは肉体関係も持つ、お手伝ひ・由貴。お手伝ひまでゐる、一介のサラリーマンにしては分不相応に思へなくもない玲子邸。加治の説明台詞で、玲子が亡夫の“膨大な遺産”を相続した旨語られるが、そこは普通“莫大な”だろ。アフレコは樹かずが兼務する中田新太郎は、下川が女を抱く様子を撮影する、三国系の―劇中表現ママ―ヌード写真家・陳。
 腰から下の情動にのみ結びつけられた登場人物の各々が、それを超えた物語を織り成す、ことなど日本人出演者による洋ピン志向、といふ風に当サイトに於いては既に作家性の説明もついてゐる珠瑠美の映画にあつてある訳がない。などといつてしまへば正しく実も蓋もないが、実際に概ねその通りなので仕方がない。珠瑠美が好むドラマ内での春画の乱舞に関しては、今作固有の事象ともいへないため通り過ぎると、強ひて見所をデッチ上げる挙げるならば、美紗がまんまと誘ひ込まれる天井裏処刑部屋の、瞬間移動でもしかねない勢ひで玲子が現れるところまで含めての自由奔放なイメージと、本城未織と麻生雪、二人並んだ貧乳微乳との比較では殊更に際立つ、絶妙に肉づきの良い柴田はるかの美体か。もうひとつ、淫画とクレジットの配置の妙が素晴らしい、オープニング・クレジットは普通に洗練されてゐる。幾ら無理にとはいへ、クレジットにまで触れなくてはならないのか。天井裏処刑部屋に関しては、ミサトにはこんな空間もあつたのか、といふ点はひとつの発見ともいへるが。

 正直なところ、疲躯を心で奮ひ立たせながら、何とかまんじりともせずに完走を果たしたものではあつたが、これ以上にも以下にも、ツッコミ処すら最早見当たらない。物理的映像の受容以外には、一切の観客による鑑賞すら拒まうといふのか、珠瑠美。さう考へると、恐ろしくすらなつて来るやうな気もする。


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