閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

「はなねこちゃん」

2013-05-29 16:34:11 | お知らせ(新刊)

 

今年2冊目の新刊絵本です。
「はなねこちゃん」(小峰書店 2013年5月刊)
絵は、いしいつとむさん。

はなちゃんがクレヨンで描いたねこ、はなねこちゃん。
でも、はなちゃんは、ひげを描くのを忘れたまま、
外に遊びに行っちゃった!
こまったはなねこちゃんは・・どうしたでしょうか。
というお話。

いしいさんとは18年ぶり?のお仕事。
(えー、そうでしたっけ? いつも絵本を送っていただいたり、
お手紙書いたりしていたので、そんなにお久しぶりとは・・)
前作の「みなみかぜのヒュー」(佼成出版社 1995年)も
とてもすてきな絵だったのですが、今回はまたすこし違ったタッチで、
この世界を魅力的に描いてくださいました。

「絵の中に絵を描く」というのは、
なかなか難しいことなんじゃないか・・と思います。
そもそも絵本の「絵」そのものが二次元なわけですが、
その中でさらに二次元と三次元が混在しているという設定。
はなねこちゃんと、町のボスねこが会話するシーンなんて、
ふつうに描いたら、どっちも「絵」でしょ?
どうすれば違いが出せるのか。
それが、どうすればうまく溶け合うのか。
わたしにはサッパリわかりませんでした。
(わからないことを平気で書くという無責任な・・笑)
そこのところ、いしいさんは巧みに描き分けてくださっています。
晩春から初夏の木々や草花。
この季節らしい温度と湿り気。
ふと懐かしさの漂う路地の板塀に瓦屋根。

この話、最初に考えたのは、6年くらい前だったかも。
内容も、名前も二転三転しまして、最後に「はなちゃん」にしたら、
それにつられるように、全体がするするとまとまりました。
主役のはなねこちゃんを主旋律とすると、
ベースラインに「花」がきたことで、世界が完成したわけです。
名づけって、大切。

この絵本の中で、わたしが大好きな場面は、
「えいっとすくってつかまえる」ところです。
はなちゃんの立場でも、お母さんの立場でも、
(そして、はなねこちゃんも、ね?)
なんだかとってもうれしく、気持ちいいシーンです。

それと、いちばん最後の場面。
ここは、最初の原稿では、こうではありませんでした。
いしいさんのラフを見ているうちに、ふと思いつきました。
ひとことだけのセリフは、さらにそのあとで思いつきました
こんなふうに、あとからオマケのように思いついたものが、
じつは重要な要素だった、ということは、よくあります。
出かけて行って、帰ってくる場所。落ち着く場所。
理解して、受けとめて、応えてくれる人たち。
この絵本の「隠しテーマ」は、じつはこのへんにある・・かもしれません。

 

はなねこちゃん (にじいろえほん)
文・竹下文子
絵・いしいつとむ
小峰書店 2013年5月
コメント
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