閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

「ビリーのすてきなともだち」

2013-05-04 09:33:43 | お知らせ(新刊)

新刊翻訳絵本です。
『ビリーのすてきなともだち』(教育画劇 2013年4月刊)
ブランチ・ボウシンスキー/原作
竹下文子/文  山田花菜/絵 


『ビリーのすてきなともだち』(原題 Billy’s Amazing Collection )は、
いまから半世紀以上前にアメリカで書かれたおはなしです。

いろんなものをコレクションするのが大好きな男の子が、
「きょうは動物を集めるんだ」と宣言して出かけます。
行く先で出会うのは、トラに、ゾウに、キリン。
「ぼくのうちに来てくれる?」と誘うと、みんなついてくる!

ああ、これ、子どもにはうれしいでしょうね。自分ひとりで、
あこがれの大きな動物を3頭も連れて帰ってくるんですから。
トラの背中に乗ったビリーの得意そうなこと!
(そして、ビリーを乗せたトラもまた得意そうなこと!)

わたしがこのおはなしにひかれた理由は、
この「子どもの夢がかなう」ストーリーだけではありません。
花壇にトラが、壁にゾウが、木立にキリンが「見えた」のは、
自由な想像力を持つ子どもだから。
「いるといいなあ」と思い、「いるみたい」と思って見つめれば、
その子にとってはもう本当に「いる」のです。
ビリーの夢をかなえたのはビリー自身、と言ってもいいかもしれません。

ビリーのお父さんとお母さんが、また素敵です。
子どもの空想を丸ごと受けとめ、子どもと同じ気持ちで、
動物たちを温かく迎え入れてくれます。
わかってもらえる幸せ。
楽しいことを共有できる幸せ。
この絵本には、「ポジティブでハッピーな気持ち」がぎゅっと詰まっています。

原作は、1959年にアメリカで出版された
"First Stories To Read Aloud" という本の中でみつけました。
幼児向きの短いおはなしや詩が40篇ほど入った童話集で、
私が幼少の頃から家にありました。
私が底なしの本好きだったので、両親は洋書店で買ってきた本の中から
いくつかのおはなしを訳して、画用紙にさし絵もつけて、
自家製の絵本を何冊も作ってくれたのです。

大人になってから、当時訳してもらわなかった作品も読んでみた中で、
このおはなしがぴかりと光りました。
元の本にはモノクロのイラストが少しあるだけですが、
私はぜひ絵本にしてみたいと思うようになりました。
海外の絵本を翻訳出版するのはよくあることですが、
童話を日本で絵本化する(しかもこんな昔の作品を!)のは異例のことで、
元の出版社はすでになく、原作者の所在もわからなくなっており、
(かなり時間をかけて調査していただいたのですが、結局、
亡くなられたということまでしかわかりませんでした)
それでも、この愛すべき作品をどうしても日本の子どもたちに紹介したい、
埋もれたままではもったいなさすぎる!と、
数年がかりでようやく出版にこぎつけることができました。

画家の山田花菜さんは、ちょうどビリーくらいの男の子のお母さんでもあり、
空想が何倍にも広がるような明るくのびやかな絵を描いてくださいました。

ブランチ・ボウシンスキーさんは、日本ではこれまで
ほとんど知られていない作家です。
半世紀前の作品なのに、少しも古くなっていません。
時代をこえ、国や文化の違いをこえて、変わらない大切なものを、
このおはなしは伝えてくれます。
かつてアメリカの子どもたちがおやすみ前にベッドで
繰り返し読んでもらったように、現代の日本の子どもたちと、
お父さんお母さんたちにも楽しんでいただけますように。


・・以上は、いわゆる「プレス資料」として書いた文章です。
絵本自体には解説をつけませんでしたので、ここにのせておきます。


個人的に、すこし追加。

原文は読み聞かせ用のお話なので、言葉だけで成り立っています。
絵本化にあたって、一部重複する語句を省略させていただき、
(「牛乳のパック」を「はこ」として、絵で牛乳パックを描いてもらう、など)
現代の日本の子どもたちにわかりづらい表現を2か所手直ししました。
(モンキーパズルツリーという聞き慣れない木の名称を省いたことと、
お父さんが車の下にもぐっている場面を「のぞきこむ」に変えたことです)
それ以外、内容の改変は一切せず、原文にそった訳を心がけました。

原作者の方に、この絵本をお届けできなかったことが、唯一の心残りです。
半世紀以上たって日本で絵本になるなんて、きっと夢にも思わなかったのでは・・。
ご遺族の所在など、何か情報をお持ちの方がおられましたら、出版社に、
あるいは、このブログの左側の「お問合せ窓口」から直接わたくしに、
ぜひご一報くださいますよう、お願いいたします。

山田花菜さんとのお仕事は、2冊目です。
じつは前回の『クリスマスのかね』は、おなかの赤ちゃんと一緒に
描いてくださったのですが、そのときの坊やがもう3歳。
そして、今回・・なんとなんと、ふたりめちゃん! ということで、
赤ちゃんと同時進行で絵本も育つこととなりました。
またしても厳しいスケジュールにもかかわらず、
花菜さんは次々と素敵なアイデアを出してくださり、
「そうか! このおはなしって、そこが大事だったんだ」と、
こちらは目からウロコの連続でありました。
いやー、間に合ってよかったです!
まもなくお兄ちゃんになるAくんと、ブックデザイン担当のだんなさまにも、
心からの感謝を。

編集担当のCさんには、度重なるエージェントとのやりとりや、
度重なる文章変更や、度重なる勝手なあれこれあれこれ・・で、
たいへんご面倒をおかけしました。
わたしにとっても「夢がかなった」気がするこの1冊。
みなさま、どうもありがとうございました。

 

(追記)

山田花菜さんインタビュー
こちら↓です♪

http://ameblo.jp/bokurano-ehon/entry-11731573971.html


 

ビリーのすてきなともだち

ブランチ・ボウシンスキー 原作
竹下文子 文
山田花菜 絵

 

教育画劇 2013年
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