閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

絵本のつくりかた・つづく篇

2009-06-21 11:35:38 | 絵本のつくりかた
このカテゴリの更新、1年以上あいてしまいました。
Mとの共作の絵本は『りんごのおじさん』以来になります。
今回は2003年に出た『せんろはつづく』(金の星社)の続編!

前作の評判が良いので、ぜひ続編を…と言っていただけるのは
作者にとってはたいへんありがたくうれしいことです。
しかし、またこれほど難しいものはなく…
一昨年くらいから話は出ていたのですが、
なかなかとりかかることができませんでした。

続編だと、世界はそのまま、キャラクターもそのまま使えます。
画材や画法もあらたに考える必要がありません。
では、何が難しいか、というと、

第一に、いわゆるプレッシャー。
前作を継承しつつ、前作より面白くなくてはいけない。
二番煎じとか、二匹目のドジョウとか言われたくない。
そういう事前のプレッシャーが、わたしはすごく苦手。

それと、考えることも苦手。
何かの拍子にヒラヒラと空から舞い降りてくる、
いわば天啓のようなものを頼りにいつも仕事をしており、
意図とかテーマとか先に考えると、ろくなものはできない。

第二に、前作とのつなげ方。
『せんろはつづく』はタイトルどおり鉄道工事の絵本で、
子どもたちが野原に線路を敷き、鉄橋とかトンネルとか踏切とか
ひたすらどんどんつくっていく、という内容です。
「まだつづく」風なラストシーンにしてはありますが、
実際の「つづき」は想定してありませんでした。

つまり、前作でやれることは全部やってしまったので、
もうやることが残っていない!

それなら、2冊目は応用編ということで、
汽車が海へ行ったり、町の中を走ったりしてはどうでしょう…
という提案が出版社のほうからありました。
が、いくら背景が変わっても、やることが同じでは、ね。
どう工夫して新鮮味をプラスするか。
それが、二番煎じと紙一重。

第三に…
前作が出てからすでに6年たっています。
大人の本ならともかく、子どもは数年で絵本年齢を過ぎ、
興味もどんどん他に移っていきます。
だから、前作を読んだ同じ子が「あ、つづきだ」といって
2冊目を読む、とは限りません。

しかも、子どもの本の売り場はたいてい狭いので、
2冊並べて置いてもらえるとは限りません。
2巻ものの本があって、たまたま書棚に「2」しかない場合、
「1」を読んでいない人はまず手を出さない。
だから、営業的に理想的な「続編」とは、
「前作を知っている人にはつづきだとわかり、
前作を知らない人にはふつうの新刊に見える本」
そして、
「1冊目から読んでも、2冊目から読んでも、
片方だけ読んでも、両方読んでも楽しめる本」。

それって、座って立ってろってくらい難しいじゃないの。

というようなわけで、出足がもたもたして、
昨年10月に最初のラフをつくりましたが、会議にて却下。
それから二転三転七転八倒あれやこれやしまして、
(ラクダとか、ゾウとか、スイカとか、アヒルとか!
電車の中でも、ファミレスでも、居酒屋でも、ナミビアでも!)
今年4月にやっと最終ラフが通過。
このとき文章も「第7稿」になっていました。
わたしはわりとよく書き直すほうですが、
それにしても7稿までというのは初めてかもしれない。

と、さも大変だったように書いているわたくしは、
1場面に
「ああして こうして こうやって」
とたった3語しか書いてないような原稿を、画家に丸投げ!して、
いつものことながら、大変だったのはその絵を描いた人なのでした。

順調に進めば、今秋には本になると思います。
どうぞおたのしみに。

コメント
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