弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

東海村JCOでの臨界事故(3)

2006-05-10 00:05:35 | 歴史・社会
一昨日、昨日に書いた東海村のJCOで臨界事故の関連です。

重大事故が発生した場合、警察の捜査が始まると、判で押したように関係者は「警察による事情聴取中だから」を理由に黙り込みます。事故原因の実態が明らかになるのは判決を見るしかないのか、という気にさせます。
ところが、刑事裁判というのは個人の刑事責任を解明する場でしかなく、本当の事故原因を総合的に解明することを目的とはしていません。弁護側の目標は被告人が情状酌量されることであり、事故原因の究明ではありません。
またJCO判決では、国の安全審査や動燃の発注の仕方について責任を追及せずに、他の理由を挙げて執行猶予の理由としています。それは検察の上訴をできるだけ避ける目的が裁判官にあった、と著者は推測しています。
もしそうだとすると、結局は裁判の結果に期待しても真の原因は明らかにならないということです。

もちろん、今回の臨界事故についても事故調査委員会が組織されました。しかし、責任の一端を担うはずの科学技術庁が事務局を務め、同じく責任を負う発注者である動燃から二人の委員が入っています。結局最終報告書では、科学技術庁と動燃が負うべき責任については十分に解明されませんでした。

事故原因が総合的に解明されない限り、事故を教訓にした再発防止策を合理的に構築することもできません。

裁判をあてにせず、事故調査委員会もあてにしないとすると、残るはマスコミによる真相解明です。
そして、真相究明を進めるためにも、当事者が「捜査中だから」を理由として沈黙することを社会は許してはなりません。

「東海村臨界事故への道」を執筆した七沢潔氏は、NHKディレクターとしてこの事故を取材し番組を作成しました。しかしその後、本人が気落ちするような部署に異動します。また、本書の出版は「誰もが嫌がった」ということです。
私が待ち望んでいた本書のような書籍の出版が、誰もが嫌がるような事業だとすると、現在のマスコミにはこのような事故の真相解明に意欲を燃やすような体質ではないということになります。
コメント
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