大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年08月07日 | 創作

<3853> 写俳二百句(160)  立 秋

           立秋や齢とともにいま少し

                         

 今日七日は立秋。思うに、暦の上のことだが、春は立春、夏は立夏、秋は立秋、冬は立冬。所謂、四季の初め、希望を意味している。この立秋が我が誕生日で、誕生日は毎年かわらないが、二十四節気はずれるので、毎年同じとはならないが、今年は一致。

 七十九回目。立秋は公の決めごとであるが、誕生日は個人のもので、この一致について人様に言ってみても「ほう、珍しい」というくらいが関の山。しかし、当の本人は少し違う。そこには希望が加味されているからである。立秋イコール希望、誕生日イコール希望という意味で本人には立秋イコール誕生日がそこには見えるものがある。

 ところがこのところ体調劣悪で、立秋にも誕生日の祝福モードにも及べず、今日の日になったという次第である。 写真は今日、立秋の日に眺めた大和平野の風景。昨日に変わりないが、立秋の風景である。絶不調の体の方、どうも自信が湧いて来ないが、いま少し頑張ってみよう。  立秋や齢とともに生きて来ぬ


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年08月06日 | 創作

<3852> 写俳二百句(159) 八 月

                    八月や思へ日本の平和主義

                       

 今日六日は一九四五年 八月、終戦直前の広島市に人類史上初の原爆が投下され、未曽有の悲劇を生んだ「広島原爆の日」。九日は長崎市への投下がり、長崎の原爆忌。この悲惨極まりない連続の光景に日本は重い腰を上げ、敗戦を認めた。そして、十五日の終戦の日。こうした日本の八月はこの太平洋戦争の敗戦による終結に不戦と平和を常ながら考えさせられるところとなり、今に至っている。

 その今を思うに、核使用をちらつかせるロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まり、果たして、戦火を長引き、世界を混乱に巻き込む状況に至っている。この状況は決して浅からず、日本にも影響を及ぼしている。しかし、敗戦の悲劇に基づく、日本並びに日本人の反省も加えるその体験的平和主義は変わらず、担保され続けているのを八月のこの時期になると思われて来る。

 なお、今日から始まった夏の高校野球なども平和主義の根幹に乗っかっている大会に思える。平和にあって感動の試合がある。ということなども加味して、つまり、日本の平和主義における精神の力は生半可ではないと言えるのではないか。 写真はイメージで、湧き上がる夏の雲。


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年08月05日 | 植物

<3851>奈良県のレッドデータブックの花たち(255) ミズトンボ(水蜻蛉)                        ラン科

                               

[学名] Habenaria sagittifera

[奈良県のカテゴリー]  絶滅危惧種(環境省:絶滅危惧Ⅱ類)

[特徴] 日当たりのよい湿地に生える多年草で、直立する茎は高さ40~70センチ。葉は長さが5~20センチの線形で、鞘状になって互生する。花期は7~9月で、茎の上部に総状花序を出し、淡緑色の小さな花をつける。花は背萼片、左右の側萼片と側花弁、3裂して十字状になって長く垂れ下がる唇弁、先が球状に膨らむ距などからなり、この花の形状がトンボに似て水湿地に生えるのでこの名があるという。

[分布] 日本の固有種。北海道南部、本州、四国、九州。

[県内分布] 奈良市、曽爾村。

[記事] 全国各地で少なくなっている植物の1つで、大和地方(奈良県域)でもごく限られた自生地に見られ、レッドデータブックは「開発などによる自生地の消失・園芸用採取・植生の遷移」を危険要因にあげている。 写真は花期のミズトンボ(左)と花のアップ(右)。

   生きものは何かの役目を担って生きている

   どんなに小さな生きものもそれなりにみな


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年08月04日 | 創作

<3850> 写俳二百句(158) ヘクソカズラ(屁糞葛)

             屁糞葛次々咲いて実の豊富

                 

 真夏の今の時期、道端の草叢などに蔓を他物に絡めて伸び上がり、外側が白く、内側が紫色のかわいらしい筒状花をつけるヘクソカズラが見られる。へクソは屁糞で、あまりな名に思えるが、茎葉などに独特の臭気があり、名づけ親には実感であろう。この花には似つかわしくないとは言えるが、古名はクソカズラで、『万葉集』にも見えるから、昔も今もかわりないということなのであろう。

 現在ではほかにもヤイトバナ、サオトメバナの別名でも呼ばれる。ともに花から来ている名で、ヤイトバナは花の内側の紫色をお灸に見立てたことによる。また、サオトメバナはこの花の紫色に早乙女の紅を差した唇を連想したのであろう。どちらの名も説得力を持つが、古名クソカズラの意を引くヘクソカズラの屁糞のインパクトが強かったということであろう。

 このヘクソカズラに対し、私は野鳥を撮り始めて評価を改めさせることになった。蔓性のヘクソカズラは他物に絡んで伸び広がり、次々に咲く花はかわいらしい。だが、横暴に見えるところもある。花は直径数ミリの球形の実に成長し、冬場になると茎葉が枯れて、実がよく目立つようになる。この実は野の小鳥たちの好物で、赤く熟す先から競うように啄む。

 この冬場の光景に接し、ヘクソカズラが冬場の小鳥たちを大いに養っていることに意識が行った。ヘクソカズラだけでなく、ほかにも多くの実が見られるが、ヘクソカズラの実には小鳥たちがよく来る。もちろん、これは広く種子の散布をし、子孫を繋ぐヘクソカズラの戦略の一端で、持ちつ持たれつの生の世界の光景と見て取れる。そういう意味で、ヘクソカズラのことが思われたという次第。

 写真は真夏のヘクソカズラの花(左)と野の小鳥たちを養うヘクソカズラの冬場の実(右・啄んでいるのはジョウビタキのオス)。


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年08月03日 | 植物

<3849>奈良県のレッドデータブックの花たち(254) ミズチドリ(水千鳥)                       ラン科

                      

[別名] ジャコウチドリ(麝香千鳥)

[学名] Platanthera hologlottis

[奈良県のカテゴリー]  絶滅寸前種

[特徴] 日当たりのよい水湿地や湿原に生える多年草で、茎は直立し、高さ50~90センチ。葉は長さが7~20センチの線形または披針形で、下部の葉ほど大きく、茎を抱いて互生する。

 花期は6~7月で、茎の上部に小さな純白の花を多数連ねる。花は先が尖る左右の側萼片が鳥の羽のように張り出し、上萼片1個が帽子の廂のように花の中の蕊を守る形に。下側の唇弁は虫を誘い入れるようになっている。蜜を貯め置く距は2センチほどと長く、淡緑色で、下垂状になる。花にわずかながら芳香があるのでジャコウチドリ(麝香千鳥)の別名でも呼ばれる。

[分布] 北海道、本州、四国、九州。国外では朝鮮半島、中国、ロシア。

[県内分布] 曽爾村

[記事] 大和地方(奈良県域)ではごく限られたところに自生。個体数も少なく、危険要因は園芸用採取や植生の遷移があげられている。 写真は湿原のあちこちで純白の花を咲かせるミズチドリ(左)と花序のアップ(右)。 なお、(254)はミズタガラシが順番であるが、今一つ確信に欠けるため、「大和の花」では採り上げたが、ここでは見送った。  

   山野の自生地に出向いて出会う植物の花は実によく覚えているものである