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念奴橋 赤壁懐古 蘇軾

2015-11-20 05:17:01 | 文学
北宋の詩人、蘇軾の漢詩です。

念奴橋 赤壁懐古

大江東去
浪淘尽 千古風流人物
故累西辺
人道是 三国周郎赤壁
乱石崩雲
驚濤裂岸
江山如画
一時多少豪傑

遥想公謹当年
小喬初稼了
雄姿英発
羽扇綸巾
談笑間 強虜灰燼飛煙滅
故国神遊
多情応笑我
早生華髪
人間如夢
一尊還酹江月

大江東ニ去リ
浪ハ淘尽ス 千古風流ノ人物ヲ
故累ノ西辺
人ハ道フ是レ 三国ノ周郎ノ赤壁ナリト
乱石ハ雲ヲ崩シ
驚濤ハ岸ヲ裂キ
江山ハ画ケルが如シ
一時多少ノ豪傑ゾ

遥カニ想フ公謹ノ当年
小喬ハ初メテ稼シ了ハリ
雄姿英発ナリシヲ
羽扇綸巾
談笑の間ニ 強虜ハ灰ト飛ビ煙ト滅ビヌ
故国ニ神ハ遊ブ
多情応ニ我ヲ笑フべシ
早ニ華髪ヲ生ゼシヲ
人間ハ夢ノ如シ
一尊還タ江月に酹ガン

「訳」

大江は東へと流れ去り、波は千載のいにしえよりこのかた、この世にあらわれた英雄をことごとく洗い流してしまった。古い砦の西のあたりを、人は、三国の雄、呉の周郎の戦った赤
壁だという。赤壁の遺跡のあたりは、大小ふぞろいな岩が雲をつきくずすほどに高くするどく、さかまく波が岸を裂き、まるで、うずたかく積もった雪をまきあげるかのよう。
江山は絵さながらのたたずまい。かつてここの群がった豪傑は、いったいどれほどいたことであろうか。
想いをめぐらせば、赤壁の戦いのその昔、公謹(周ゆ)は小喬が嫁入りしてきたばかりで、雄々しい姿に才知があふれていた。羽扇を手にとり、頭巾をかぶり、にこやかに談笑している間に、強敵・魏の水軍は灰のように飛び、煙のように滅びてしまった。こころは、かく赤壁の
故地をめぐる。多情なわが身のおかしさよ。それゆえに憂い多く、はや髪も真っ白なのだ。人の世は夢のごとし。またひと樽の酒を地にそそいで、江上の月に祈りをささげよう。

    「鑑賞」
建安十三年(208)冬12月、魏の曹操は数千の船団と数十万の大軍を率いて長江を下り、孫権・劉備の呉蜀連合軍と赤壁で遭遇する。迎え討つは、呉の周愈と蜀の知将孔明。長江北岸の烏林
に軍船をつないで陣を構えた曹操軍を「苦肉の計」「火攻めの計」によって撃破し、曹操の野望
をうちくだいた。
 赤壁の戦は、天下統一の執念のぶつかり合いであり、三国鼎立のきっかけとなった決戦であったが、その英雄たちの面影に古戦場の景を重ねて、蘇東坡は「人間は夢の如し」と詠懐した。
石川忠久「NHK 漢詩紀行 三」 日本放送出版協会
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