山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

2010年北海道くるま旅でこぼこ日記:第24日

2010-09-22 02:42:04 | くるま旅くらしの話

第24日 <8月2日(月)>

【行 程】 別海町ふれあいキャンプ場に滞在(野付半島往復) <100km> 

今日はキャンプ場での4日目となる。3泊を申し込んであり、出発しなければならないのだが、どうやら天気が晴れるとの予報なので、それを信じてもう1泊延長することにした。そう決めたのだが、朝になって見ると、外は一面の霧で太陽は見えない。この辺りは、海抜26~27mくらいの高さで、丁度守谷市と同じくらいなのだが、海から近いこともあって、天気が良い日でも霧が押しかけて日の出を隠すことが多い。どうやら今日もそうらしい。

実は今日はその海の方に出かけることにしている。毎年ここで顔を合わせ、すっかりおなじみになっている釣り好きのTさんご夫妻が居られるのだが、昨年もここに寄った時に魚を頂いたりしていたのに、別れた後にその奥さんの方が尾岱沼の港で釣りをしている最中に突然倒れ、そのまま帰らぬ人となられてしまったのである。それが判ったのは、旅から戻ってかなり経ったときだった。そのご主人からのメールで亡くなられたことを知り、本当にびっくりしたのだった。旅先でしか会わない方だったので、今度別海を訪ねた時には尾岱沼に行き献花をしたいと考えていた。今日はそうしたいと思っている。

朝食が済んでしばらく経つと、霧は次第に晴れて、久し振りの青空が見え出してきた。もう昨日からは8月。お天気もそろそろ本気で夏のそれに切り替えることにしたようである。10時少し前に出発し、途中花を買うためにスーパーに立ち寄ると、見たことのある春日部ナンバーの旅車が駐車場にあった。店の中に入ってみると、やっぱりNさんだった。Nさんは、毎年ご夫妻で釣りを楽しみながら北海道の旅を味わっておられる方で、今頃になると別海にやってこられるのである。今年は、今は尾岱沼の方に居られると管理人さんから聞いたのだが、会ってお話を聞くと別海町の尾岱沼ではなく霧多布の方に滞在されていて、今日初めて別海に来られたとか。事情を話すと、Nさんも献花に出向くつもりだったとのことで、それならば一緒に行こうという話となった。というのも、Nさんは去年一緒に釣りに行っていて、直接その出来事に係わり、その対応に何かとご苦労された方なのである。その現場もご存知だというので、これは好都合だった。

尾岱沼までは20kmちょっとくらいか。Nさんの後に続いて車を走らせ、海側に出てしばらく走り、港の中の方へ。着いてみると、その現場は生憎と工事中だった。事情を話して中に入れさせて頂いて、Nさんご夫妻共々現場の海に献花をして、ご冥福を祈って般若心経を誦す。毎年心から釣りを楽しんでおられた本当に仲の良いご夫婦だった。人の世の様々な出来事の中に自分たちも居るのだということを改めて思った。

Nさんは、今夜は同じキャンプ場泊りである。標津の方に用を足しに出向くというNさんと別れて、その後このまま尾岱沼の温泉に入って帰ってしまうのも勿体ないので、野付半島の花を見て行くことにする。野付半島にも原生花園があり、ワッカと似たような野草たちが細い半島に狭く延びる原野に花を咲かせていることであろう。今年は彼らにはお目に掛れないかも知れないと思っていたのだが、やっぱり来てしまった。

野付半島は我が国最大の砂嘴である。その長さは28kmにも及んでいる。海の流れと海底の地形との関係で、長い時間を掛けて砂が積もった場所に植物達が茂って、やがて陸となったと聞くが、不思議としか言いようがない。ここが東京の近くだったなら、人間どもは開発などと称して、あっという間に野付湾を埋め立ててしまって、超高層のビルを何棟も建てまくるに違いない。遙か離れた大自然の中に在り、そうならないのが幸せである。

左手には天気が良ければ国後島が間近に見えるのだが、今日は霧が煙っていて視界が僅かなため、ライトを点灯しないと危険な状態である。海霧というのは、冷酷な感じがする。それに襲い掛かられると、真夏であっても一気に気温が下がり、心までも冷えさせられてしまう。何年か前、宗谷近くの猿払村の海岸でその邪悪な海霧に出会い、慌ててクッチャロ湖まで逃げ帰ったことがある。今日はその海霧が半島を間断なく襲っており、お陰で暑さとは無縁となっているようだ。霧があっても花を見るには支障はなさそうである。

しばらく走って、ネイチャーセンターに到着。車を止め、先ずは腹ごしらえをと、焼きそばを作る。食欲のない邦子どのに作ってもらうわけにはゆかず、これは自分の作業。急場の仕事としては、まずまずの出来具合か。食欲のない邦子どのも手を出しているのだから。その後は花を見にカメラ持参で花園の散策路に出向く。本当はもう花の写真は殆ど撮らなくてもいいほどたっぷりあるのだけど、やっぱりここはここなのだという思いがあり、この地の花たちに申し訳ないような気がして、一通り写真を撮る作業を続けたのだった。植生はワッカとさほど変わっていない感じがするが、こちらの方は蔓性の植物が少なく、カザグルマやクロバナハンショウヅルのような植物は見られない。多いのはカワラマツバとアキカラマツ、彼らが今花の最盛期のようだった。しかしちょっと見にはそれを花と認識するのは難しいかもしれない。

    

左はカワラマツバ、右はアキカラマツの花。拡大しているので花らしく見えるけど、実際はこれらが草叢を作っており、ちょっと見にはボヤーっとした野草の広がりにしか見えない。

多くの人たちは花期が終わりかけて咲き残ったハマナシやナデシコやチシマフウロなどの目立つ花を話題にしながら、急ぎ足で通り抜けて行った。散策というよりも皆さん歩行訓練をしているように見える。

   

カワラナデシコの花。もう花期は終りかけていっるようで、いつもの群生した花の乱舞は見られなかった。野生のものは、栽培種よりも何倍も美しいと思う。

所々散策路が乱れていて、何人かの不心得者が、花園を乱して原野を踏みにじった場所があり、憤りを覚えた。大したこと無いという思い上がりが、人間の本性であるというならば、自然世界遺産に登録された知床の原生林には、観光客を入れるべきではないのではないか。世界遺産に登録されれば金儲けが出来ると考える人も多いのだと思うが、本当の遺産ならば、正倉院の宝物のように、日限を気って最少人数への披瀝で対処すべきであろう。多くの人が訪れば訪れるほど遺産が破壊されるのは明白なのであるから。サンダルやハイヒール履きのご夫人達が、熊を見たなどときゃあーキャアー騒いでいる景色は、世界遺産に対する冒涜以外の何ものでもない。自分たちは知床が世界遺産に登録されたと聞いた以降は、知床五湖に行くことさえも諦めることにした。カムイワッカの湯の滝も夢の中でいいと思っている。世界遺産というのは、その様な場所ではないか。

チョイと脇道に逸れたけど、ホンマに散策路に脇道を勝手に作ってはならないのである。1時間半ほど野草たちとの邂逅を楽しんで十二分に満足してネイチャーセンターを後にする。依然として海霧は細く長く続く道路の先端をぼやかしており、気温は18℃を示していた。酷暑の内地の人たちに分けてあげたい空気ではあるけど、直送したら風邪を引いてしまうに違いない。

尾岱沼の港に戻り、浜の湯という温泉に入る。ここは昨年は休業となっていてガッカリしたのだった。温泉場というよりも銭湯という感じの造りなのだが、お湯の方は極上なのである。泉質と湧出温度の異なる二つの源泉が引かれており、熱い湯に入って汗が吹き出た後に、今度は冷たい方に入ると、実に爽快となり、これを繰り返していると、時間が経つのを忘れてしまうほどなのである。今年は営業が再開されており安堵したのだった。邦子どのは入らないというので、一人出かけて1時間ほど湯に浸って戻る。

キャンプ場への帰り道、床丹という場所の海岸をチョイと覗くと、今年はオカヒジキが生えていた。それを一株頂いて車に戻る。ここは昨年亡くなられた釣好きのTさんの奥さんに教えて頂いて採りにきた場所なのだ。供養のつもりで今夜の食卓に供したい。17時過ぎキャンプ場に戻る。

   

浜辺に自生するオカヒジキ。これはワッカで撮ったもので、床丹のものは写真を撮らなかった。これよりももっと柔らかそうなレベルだった。北海道の浜辺には至る所にオカヒジキが自生しているけど、食用にと気づく人は少ないようだ。幸いなことではある。

夏休みが本格化したのか、平日でも今日は来場者が多いようである。かなりの子供連れの人たちのテントが張られていた。Nさんたちも先着されていた。旅車は少ないようで、キャブコンは2台だけだった。それから夕食の準備に取り掛かり、いつものように夜を迎えたのだが、食卓のオカヒジキは絶妙な味わいで、群馬県産のものとは格段に違っていた。勿論美味なり。

コメント
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