第9日 <7月18日(日)>
【行 程】 終日厚田港の北海道HMMCCキャンプ地で過ごす(泊) <0km>
昨夜はかなりの雨降りだった。雨音が車の天井を叩き、これはもう今日は終日の雨になるのかと、半ば諦めていたのだが、記録の整理をしている3時ごろになると、音が途絶えて静かになってきた。4時近くなって、空が明るくなりだす頃、船のエンジンの音と人の声が大きいので外を見ると、地元の漁師の人たちがホタテ貝の水揚げをしているところだった。どんな様子なのか見たくて、カメラを持って見に行く。
船には幾つものホタテの養殖網が積まれており、それをウインチで吊り上げて陸揚げし、それを数人の男達が取り囲んで留め金のようなものを外していた。しばらくするとその作業が終わって、ホタテが一杯詰まった5m近くもある重い筒を、せいの~、と掛け声をかけて何個かの入れ物の箱を並べた上に引上げ、筒を揺らしながら中のホタテ貝をバラバラと箱に落とすのである。かなりのエネルギーと集中力の要る男の作業である。早朝のこの作業には相当の力が入っていて、船と陸から照らす灯かりの中に、海の男達の汗の滴る逞しい顔が滲み浮かんでいた。初めて見る光景だった。箱に入れられたホタテ貝は、それを待ち受けている女性陣が水槽近くに運んで、選別や洗いの作業を忙しく行なっていた。このようにして、毎日新鮮なホタテ貝が提供されているのである。厚田のホタテ貝は、石狩川の運んでくる栄養に恵まれて、味も品質も日本有数のレベルにあるとか。3年前からこの港のこの時期に、地元のご好意で北海道HMCCのキャンプが行なわれており、我々も幸運なことにずっと参加させて頂き、その都度北海道有数の海の恵みを味わわせて頂いている。真にありがたいことです。
ホタテの水揚げ作業。早朝3時過ぎ、ホタテ貝の一杯詰まった円筒形の網をクレーンで船から下ろし、それを男たちが力を籠めて揺すり、懸命に網を外す作業を継続する。
興奮しながら車に戻り、時計を見ると、まだ5時前だった。もう少し眠ろうと再び寝床にもぐりこむ。雨は上がり空も高くなっているので、しばらくの間は、雨降りにはならないだろう。若しかしたら、今日も昨日と同じ様な天気なのかも知れないと思った。一眠りして目覚めた時は7時を過ぎていた。邦子どのはよく眠っている。外を見ると、かなりの人たちが港の構内に常設された朝市に訪れていた。今朝水揚げされたホタテ貝もその会社の倉庫の売り場で販売されており、三々五々と訪れた人たちが手に重い袋を提げて自分の車の方に戻って歩いていた。このように買いに来られる人たちを真に羨ましいなと思った。
車の中でぐずぐずしていると、外からお声がかかって、ドームテントの中で、もう皆さん集まってウニを食しているとのこと。早く来ないと無くなっちゃうよ、ということで、慌てて出向く。ウニは自分よりも邦子どのの大好物。行ってみたら、皆さんもうお揃いで、一杯きこしめしておられる方も居られた。ナマコも切られており、これは自分の好物。ウニは邦子どのに任せて、久しぶりのナマコの歯ざわり感触と味を賞味した。邦子どのの方は、最後となったウニの福を独り占めにして、その喜びを味わっていた。その他に肉なども焼かれていて、健啖家の多い集まりに圧倒された。
次々と焼かれてゆく海の幸。この二日間で、1年分の海の幸を食べてしまったの感がするほどだった。海の幸の中にジンギスカンが混ざるのは、北海道ならではの光景である。
この間にも外を行き交う人たちの数は増え続け、今日は日曜とあって、朝市の賑わいは相当なものの様である。港の朝市の向こうは小さな海水浴場となっており、外海の波を防ぐように堤防に囲まれた砂浜があり、子供連れの家族などが短い夏の海を味わおうと、その数を増していた。どうやら今日はぎりぎりで海水浴はOKのようである。駐車場の入口で受付を行なっている人に訊くと、この辺りの海水の温度は22℃くらいだそうである。海水浴にはあと2~3℃くらい高い方が良いのだが、という話だった。今日は太陽は望めそうも無いので、子供たちに暖を取らせるのに親は苦労するであろう。
日中は食べて、飲んで、寝ての繰り返しで、存分に楽しいグータラを味わった。昨日は大タコの刺身に舌鼓を打ったが、今日は焼き肉などが多く、普段あまり肉を食べない自分は、もうここで今年一年分以上の量をこなしたように思った。又地元の北海道では、普通の食べものとなっているらしいジャガイモだんごも初めて賞味することができた。今年のジャガイモで作ったというそのだんごを焼いて頂戴しながら、邦子どのはその作り方をお持ち頂いた製作者の杉川さんの奥さんから熱心にご教授頂いていた。これは旅から戻ってから是非ともチャレンジしなければならない食べものだと思った。又一つ新しいメニューが増えそうでありがたい。
午後遅くなって少し雨模様の天気となり、断続的に小雨が降ったりした。午後の前半は殆ど昼寝で過ごす。夕方近くなって、再びドームテントの中へ。夕べの宴が始まる。メインディッシュは、昨日の大タコを茹でた刺身だったが、この他にホタテの焼いたものや、関西風特製焼そばなども出て、もう、それらを見ただけで満腹となるような感じだった。生ビールを頂きながら、ジョーク溢れる歓談の世界は、時の経つのを忘れさせて拡がり、流れていった。一段落した頃に、地元の方も加わって、又一しきり楽しい話題が膨らむ。今日も22時を過ぎてのお開きとなった。