山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

サクランボは夢の果実

2008-02-07 22:47:31 | くるま旅くらしの話

サクランボといえば山形というのが、サクランボを知らない人たちの間では一般的になっている。確かに寒河江から東根あたり一帯はサクランボの一大生産地帯ではある。何度もそこを通っているけど、本気になってサクランボを買ったことは無い。本気になれないくらいに高価なのである。だから、見るだけということになる。

私の中では、サクランボといえば、青森と北海道が親しみの持てる産地として登場する。三戸や名川のサクランボは山形に引けは取らない品質なのに、値段はずっと親近感を覚えるレベルである。そして北海道は、サクランボの穴場だ。北国なので、7月に入ってもサクランボは健在なのである。

     

北海道では、道南の余市に隣接する仁木町のサクランボが一番有名なようだけど、私たちが訪ねるのを楽しみにしているのは、仁木町ではなく、道央の丘の町美瑛の奥まった所にある「辻サクランボ園」である。北海道を訪れるときには、特別のことが無い限り必ずここを訪ねることにしている。そして、二人別々に2種類のサクランボを1kgずつほど買い、それを口に含んで丘の中を走りながら、鳥たちになり代わって、プッ、とタネを撒き散らすのである。ゴミ問題だ、などと言う勿(なか)れ。鳥たちのまねをしているだけなのだから。

     

さて、そのサクランボだが、私はたくさんある果物の中で、一番瑞々(みずみず)しくて美しく可憐な夢のある果実だと思っている。普通の桜の実から見れば巨大だけど、桃や柿などと比べたら、小さく可愛らしい。そして梅などとは違って、何ともいえない優しい色合いで、光り輝いているのだ。このような果実は他には無いように思う。

     

サクランボは木に生()っているのも美しい。濃い緑の葉の中に真っ赤に輝く実は、青空を引き立たせる力がある。美味しいとかいうレベルではない美しさが、その実に詰まって輝いており、それを見ているだけで夢を見ることが出来るような気がするのである。

サクランボは、1個でも十分に美しいが、これが集まると、その輝きは益々いや増して、何だかこの世のものとは思えないほどの存在となる。サクランボの生産農家は、短期決戦で最盛期には超多忙のようだけど、この夢の果実に囲まれて作業できるというのは、幸せだと思う。樹園の売店に行くと、皆さんそのようなお顔をして仕事に従事されているように思えてくる。

        

昨年は、比較的安い値段で、大量のサクランボを手に入れることができた。相棒は意気込んでサクランボのジャム作りに挑戦した。半日ほどかけて出来上がったジャムは、色鮮やかで、ほんのりと夢の香りがして、良い仕上がりだったようだ。私は甘いものは苦手なので、ほんの少しパンに塗っただけで、後は相棒が口に運ぶ香りを楽しんだだけだった。

         

季節はずれのサクランボの話は、いかにも唐突だけど。やたらに雪などが降って、妙に寒さが居座っているこの頃には、このような話もいいのではないかと、写真を引っ張り出したのだった。

 

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サロベツ原野を想う

2008-02-07 03:45:57 | くるま旅くらしの話

 今日は守谷にも雪が降っている。どうやら今年の冬の寒さは本物らしい。暑いのも嫌だが、寒いのはもっと嫌だ。なぜなら旅に出かけられないからである。ましてや雪が降るなど、1、2日の雪見酒を楽しむくらいならいいけど、大地が凍てついてしまっては、歩くのもおぼつかない。旅どころの候ではなくなってしまう。天のこのような悪しき所作は早く止めて貰いたいものである。

今頃、北の大地のサロベツ原野辺りはどうなっているのだろうか?只々灰色の雪が舞う暗い世界があるだけなのだろうか?晴れない限りは、雪ばかりで、人の入り込めない世界となっているのだろうか。昨年訪れた時のことを、写真などを見ながら、思い出している。冬の北海道へは旅をする勇気が無い。ましてやこの季節にサロベツ原野へ行くなんて、とてもとても出来るものではない。ひたすらその荒涼たる厳しい冬の世界を想像するだけである。

    

 サロベツ原野は、道北日本海側に広がる広大な湿原である。その本性はで泥炭地であり、層の深さは8mにも及ぶと言う。広さが200平方キロメートルというから、何と守谷市の5.5倍もあるのである。湿原にはお花畑などが広がり、原生花園となっている所が多い。原生花園は、北海道独特の植生帯である。もし花を咲かせる植物が無かったら、サロベツ原野は、文字通り荒涼たる原野が、一年中広がるだけの寂しい場所となるに違いないのだが、6月から7月にかけてのシーズンには、人の心を和ませてくれるたくさんの野草が花を咲かせ、様々な表情で我々を迎えてくれるのである。

去年の夏の、7月の北海道は寒かった。夏に入っているというのに、稚内のキャンプ場では、暖房が必要なくらいの寒さで、風の強い日は、防寒服を着用しないと外を歩けないほどだった。その稚内の基地から、2度ほどサロベツ原野を訪ねた。花を見たかったのである。初回の時は、原生花園の観察拠点であるネイチャーセンターに向かいながら、原野全体がエゾカンゾウやノハナショウブなどで彩られているかなと、胸を弾ませながら行ったのだが、着いてみると、湿原の花たちは、控えめで、期待は全く外れてしまった。どうやらエゾカンゾウやノハナショウブなど大群落を形成する野草たちは、既に最盛期を過ぎ、花は終りに近づいていたようである。或いはもしかしたら寒すぎて、花を咲かせるのを控えていたのかも知れない。パラパラと点在する残りの花が、咲き遅れた花びらを風になびかせているだけだった。

    

 そのような派手な花を見るのは諦め、湿原の中につくられた遊歩道を辿って、小さな花を探すことにした。湿原の野草というか、原生花園の花にも、大小さまざまの種類があって、その表情は豊かである。派手な花を咲かせるのもあれば、これが花なの?と思わせるほどの地味な花をつけるものもある。湿原の中を丹念に見てゆくと、結構たくさんの植物が花を咲かせていた。小さなツルコケモモには可愛らしい実がついていたし、アサヒランやトキ草なども可憐な花をひっそりと咲かせていた。咲き終えたワタスゲの白い穂が風になびくのも美しかった。(ここに載せたのはノハナショウブとトキ草である)

    

 この原生花園は、ワッカや小清水や野付半島のそれとは違って、総じて派手な花は少ないようである。深層の泥炭地の上に生息するというのは、植物にとっては結構厳しいのかも知れない。子孫を残し増やすのが、なかなか難しいのであろうか。何処の原生花園にも見られるハマナシの花も、ここでは一つも見ることが出来なかった。それでも小さな野草たちの存在は、花を味わうには充分なものであった。

サロベツの原生花園を後にして、ここへ来るともう一つ行く所がある。それは最北の温泉街のある豊臣温泉である。この湯は、信じられないことにお湯に石油が浮いているのである。最初に入ったときにはびっくりして、どうしようかと思ったのだったが、意外と石油の臭いはのこらず、よく温まっていい感じのお湯だった。ここはその昔石油の掘削が行われた所で、石油はたっぷりとは出なかったけど、掘削の途中で温泉が噴出したということである。ここの湯はアトピーなどの皮膚炎などに効くとかで、全国から湯治に来る人も結構多いようだ。あの石油入りの湯の温泉は、今頃は雪の中に埋まっているのだろうか。サロベツ原野のおまけというか、熱い涙というか、不思議な場所であった。

今日の守谷の雪は積もらない。今頃のサロベツ原野の雪も積もらないのではないか。積もるほどの暖かさが無いのではないか。守谷とは全く反対の厳しい寒さの理由で、サロベツ原野の雪は積もらないのではないか。そう結論付けた。

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