山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

クッチャロ湖の夕陽

2008-02-06 07:00:56 | くるま旅くらしの話

  北海道の地図の、オホーツク海側を北の方に辿って行くと、宗谷岬の少し南に位置した所にクッチャロ湖というのがある。北海道には海水と淡水とが入り混じった汽水湖と呼ばれる湖が多いが、このクッチャロ湖もその一つである。知ったかぶりをして言えば、クッチャロというのは、アイヌ語で「沼の水が流れ出る出口」という意味だそうで、そのような地形の場所は全てクッチャロと呼ばれていると言うことだ。道東には北海道では最大、日本では7番目に大きい屈斜路湖というのがあるが、この湖も地形的にはクッチャロと同じ形状をしている、とアイヌの人たちは考えていたようである。屈斜路などという当て字を使ったので、うっかりすると別の意味を考えてしまう。北海道の地名には要注意である。

 さて、そのクッチャロ湖だが、毎年訪ねるというわけには行かないけど、道北へ行く時には必ず立ち寄る場所である。周囲が33kmほどの、それほど大きいとは思えぬ湖だが、この湖は日本では最北に位置するとのこと。湖面が広がる以外は、殆ど何も無い所なのだが、日中のオホーツクの空の青さと、その青空がやがて夕刻を迎える頃に、天空を真っ赤に染めた残照が、ひときわ美しいのがこの湖の素晴らしさなのである。その僅かな時間を味わいたくて、ここを訪ねないわけにはゆかないのである。

 今年(07年)は、湖畔のキャンプ場に3泊した。そして、幸運なことに何と、3種類の夕陽を見ることが出来たのである。その中には、地元の人でも年に2、3度しか見られないという夕焼けを見ることが出来て大感激だった。夕陽というのは、当たり前ではあるけど、雲が空を覆っている時には見ることは出来ない。雲があっても晴れているというのが絶対条件なのだが、空における太陽と雲との関係がどのようになっているかで、夕陽のあり方が変わってくるのである。

 

             

   初日の夕陽は、最初諦めていた。朝から空の9割近くが雲で覆われていて、その分夏の日差しを遮(さえぎ)ってくれて過ごし易かったのだが、夕陽を見るのはとても無理だろうと、午後3時頃から昼寝を決め込んだのだった。ところが、18時ごろ起き出してみると、なんと先ほどまでの雲が殆ど無くなって、快晴の天気となっているではないか。これならば大丈夫と、カメラを構えてその瞬間を待ったのだった。

 19時近く、待ちに待ったその瞬間が近づいた。何処から撮るのがベストショットなのか、走り回って、手当たり次第に撮った1枚がこの写真である。夕空に透明感のある標準的なクッチャロ湖の夕陽だと思う。写真は、相棒の方がカメラも腕も上なので、自分が撮った写真はどうも頂けないのだが、今回は無理して使ってみた。

 翌日、朝方は良く晴れていたのだが、午後から雲が増え出して、今日はもうだめだろうと、これ又諦めていたのだった。昨日、すでに此処らしい夕陽を見ることが出来たので、そんなに欲張らなくても良いのだと自分に言い聞かせていた。ところが、不思議なことに、日が沈む少し前になると、丁度沈む場所付近の雲が上下二つに割れて、そこに晴れた夕焼けの空が現れたのである。しばらく経つと、その空間に上の方から太陽が現れて、やがて静かに湖の彼方の丘の中に消えて行ったのだった。まるで夕陽を見せてくれるために空の雲が急いで分れてくれたようだった。その雲も湖水も、沈む太陽に茜(あかね)色に染め上げられて、何とも神秘的な濃い夕陽の風景となったのである。いやあ、昨日とは違う夕陽の景観を、息を呑みながら眺めたのだった

              

                                                         

 

 

  3日目は、朝から暑くて、日陰を求めて湖畔にある林の中の文学碑のある散歩道などを散策したりして、時間を過ごしたのだった。午後からは次第に雲が増えて、夕方近くになると、群雲が空を覆って、とても夕陽を見るのは無理な状態となってしまった。またまた諦めて夕食の準備に取り掛かろうとしていて、ヒョイと車の外を見てみたら、何だか辺りが赤っぽいのである。あれっ、何だろうと外へ出てみると、何と空が夕焼けなのか、夕映えなのか真っ赤に染まっているではないか!キャンプ場の管理人さんがスピーカーのスイッチを入れて、滅多に見られない夕焼けなのだと、ボリュームを上げて来場者に向かって放送していた。いやあ、このような夕焼けを見るのは初めての経験だった。太陽は何処にも見えないのに、雲が真っ赤に染め上がっており、それが湖面を同じ色に染めているのである。何とも、何ともいえない神秘的な風景だった。夕食のことなど忘れ果てて、感動と興奮に浸ったのであった。

              

 

  空には様々な表情がある。それはあたかも人間の表情と同じであり、心の動きとも重なっているように思う。茜のこの鮮やかな色は、空の何を語る、何を表現するものなのであろうか。3日間、同じ場所で、同じ時刻に、夫々違った天空のドラマを見せて貰って、只々感動に酔いしれたのだった。

 これから少しずつ写真入り旅のエッセーにチャレンジしてゆきたいと思っています。今日はその始まりですが、相変わらずうまく写真が入りません。ご容赦を。

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