山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

皇帝ダリアのこと

2007-11-08 09:13:11 | 宵宵妄話

この季節、楽しみにしていることの一つに皇帝ダリアの開花がある。皇帝ダリアは、木立ダリアとも呼ばれる、メキシコ原産の花である。メキシコという国へは行ったことが無いので(日本以外の国は殆ど知らないのだが)、その気候風土は良くわからない。アメリカの南に位置しているから、平地ではかなり暑いのではないかと思う。確か首都のメキシコシティは2000mを超える高地にあるのではなかったか?皇帝ダリアがメキシコのどの辺りに原生していたかわからないが、メキシコといってもわが国と似たような気象条件の所にあったのではないかと思っている。

皇帝ダリアは3mを超える巨大な草である。正確に測ったわけではないけど、目視では4mを少し切っているほどだ。春先に芽を出し、旅に出かける6月末頃には1mほどの背丈しかないのだが、これが旅から戻った9月初めには2mを超え、見上げる大きさになっている。そして10月半ばを過ぎるとそこから又1m以上急速に背を伸ばし、11月の半ばに花を咲かせ始めるのである。

日本にはこのような巨大な草はあまり無いと思う。北海道の野草の中にはイタドリのような巨大なものもあるけど、数は少ない。また沖縄のサトウキビなども巨大な草だけど皇帝ダリアのような花を咲かせる植物ではない。幹周りが20cmもあるのだが、上の方に葉を茂らせているので、支えをしてやらないと、まともに立っていることができず、倒れてしまうのである。台風などで強風が吹くとよほどしっかり支えをしておかないと、せっかくの育ちがそこで空しくなってしまうことが多い。大木のような形(なり)をしているくせに、実に女々しく意気地の無い草木なのである。

しかし、花は素晴らしい。薄紫のダリアに似た花を深く晴れ渡った秋空に幾つも飾り上げる姿は、まさに皇帝という名に相応しい風格がある。一度に40個もの花を咲かせる最盛期はまさに見ものである。

ところで、この皇帝ダリアを始めて見たのは、3年前に九州を旅していて、宮崎県の飫肥を訪ねたときだった。飫肥城近くに車を止め、市街を散策したのだったが、武家屋敷跡辺りを通ると、どの家の庭先にもその巨大な花が咲き誇っていた。今まで見たことも無い大きさの花であり、それが木ではなく草の態様をしているのが不思議だった。少し離れた道の駅にもそれが植えられていたので、名を訊いたら皇帝ダリアと呼んでいるという。どうやって増やすのかを尋ねたら、花が咲き終わった後に幹を節毎に切って、土中に埋めておくと春先にその節から芽を出すのだという。種で増やすのではないらしい。

これを聞いて、何とかこの花を自分の庭にも咲かせてみたくなった。ホームセンターや植木屋さんなどにないかと、それ以降いろいろな町を通るたびに、そのような所に寄って覗いて見たのだったが、宮崎県内では何処にも見つけることが出来なかった。諦めながらも、隣の大分県に入って、更にしつこく捜し求めていたところ、竹田市に近い清川村という所にある道の駅の売店で売っているのをついに発見したのだった。いやあ~、嬉しかった。

しかし、見つけた鉢植えのそれは、ひよろーっとしていて、1mほども無く、花など咲かせる元気もなさそうで、やせ果てて息も絶え絶えの様子だった。気の毒に思った売店のおばちゃんが半値近くにまけてくれたのだった。もしかしたら、おばちゃんはもうこれはアカンと思ったのかもしれない。それほど頼りない状態だった。それを日中は車のトイレに入れ、夜間は外に出したりしながら、その後1ヶ月かけて家に戻ったのだったが、その時は生死不明の状態になっていたように思う。すぐに庭先に植えたのだが、もう冬に入っている季節だったので、根付くかどうか心配だった。ま、根がしっかりしているようなので、ダメもとで春を待つことにしたのである。

翌年の春になって、庭先に僅かに芽を出したのを見つけた時は感動した。宮崎と比べると関東のこの地の方が寒い冬だったのではないかと思ったが、見事に違った土地の条件を乗り越え、息吹を上げたのである。その後は、全てのプロセスが初めての体験だった。夏までにはもの凄くゴツイ姿となり、秋の終わりごろになって見事な花を幾つも咲かせてくれたのだった。

ところで、実はこの花をたっぷり観賞できたのは1回ほどしかないのである。花が真っ盛りの時は、たいていは秋の旅に出かけていて、いつも咲き出しと咲き終わりの時しか家にいないからだ。皇帝ダリアによらず初夏のカサブランカなどもまだ一度も咲いているのを見たことが無く、倅が撮った写真で見るだけなのである。まことに残念だけれど、旅を優先させている限りは致し方なく、諦めるほか無い。

今年は、株分け(というより節分け?)したものが庭の5箇所くらいに分散して育っている。今蕾が膨らみ、薄紫の色が見え出している。しかし今年もあと数日後には旅に出かける予定であり、咲き出しを見るのは難しいかもしれない。でも2週間後には帰宅予定なので、その頃が花の最盛期となっているに違いない。旅の楽しみに加えて、家に戻れば澄んだ青空に咲き煌(きらめ)く大輪の花を見る楽しみが待っているのだから、今からそれを思ってワクワクしているのである。(その時が来たら、横着をやめてブログに写真を載せたいと思っている) 

コメント
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