私は車を使って長期的な旅をすることを「くるま旅くらし」と名付けています。短期間の車での旅はくらしではなく、単なる旅だと考えます。どちらも同じことのように思われますが、例えば、1週間のくるま旅と1ヵ月のくるま旅とではその中身はかなり違ったものとなります。前者は単なる旅であり、後者は暮らしの要素が多いものとなります。これらについては追々理屈などを述べさせて頂くつもりです。
さて、今回は、暮らしの中の「衣・食・住」の「住」に相当する旅車について紹介することにしたいと思います。私の旅車は、グローバル社製のキング5.3というキャブコンのキャンピングカーです。愛称をSUN号といいます。購入したのは2002年3月で現在5年目に入りました。走行距離は約8万kmとなりました。この車はディーゼル車で、前住の東京では規制が関わりますが、現住の茨城県ではNOxに関してはセーフということですので、これからは、この車の命の続く限り乗り続ける考えでいます。
旅車にはたくさんのメーカーがあり、たくさんの魅力的な車がありますが、私の場合はお台場のキャンピングカーのショーでこの車と出会って一目惚れしてしまった、それだけで購入したものです。日本製のキャブコンとしてはごく普通の標準的なタイプだと思いますが、私は、装備などにあまりこだわりませんので、ひたすらに自車を信頼して旅を続けるだけです。神経を使っているのは安全性くらいのもので、それは車そのものよりも運転者、利用者の心がけ次第だという考え方です。ですから、タイヤやバッテリーは早めに交換するようにしていますし、運転のスピードも遅さにイライラするよりもその遅さを出来るだけ楽しむようにしています。
旅車については、いわゆる暮らしを行なうための基本的な「住」の場としての機能をどれだけ引き出して使うかということが最も重要だと考えます。たくさんの装備を備えていてもそれを使いこなさなければ結局は無駄になりますし、車に負担をかけることになります。必要最小限の機能を備えていれば、あとはそれに必要最小限の贅沢のための機能を付加するだけのことで、それは旅のあり方によって決まるものだと思っています。私の旅車には、オプションとして付加したのは、バイクキャリアと電動ステップくらいで、後は何もありません。現在、ソーラーだけは追加しようと考えていますが、それ以外はもう何も必要ないと思っています。十二分に満足しています。
くるま旅くらしの「住」で大切なのは、
①よく眠れる寝床であること
②雨が降っても室内で調理が出来ること
③ある程度物品の収納に余裕が持てること
④夜間に内部でトイレが使えること
⑤親しい友人・知人たちと歓談できるスペースが確保できること
などが挙げられると思いますが、①②が基本要件、そして私達の場合は③④⑤が満たされていることに満足を感じています。
何しろ車という狭い空間を住居として活用するのですから、考え方として、車はキャンピングカー(=野外活動のための車)ではなく、モーターホーム(=動く住居)という発想が基本になると思います。モーターホームといえば、USAなどの大型の車を想像してしまいますが、日本の場合は、USAの考え方とは違った新しい車を使った旅の形態としてくるま旅くらしがあるのだ、というふうに考えたいのです。即ちくるま旅くらしは戻る家のない旅くらしではなく、あくまでも定住の本拠を持った旅であり、その旅のための「住」の役割を担う簡易モーターホームなのだというわけです。 理屈をこねてもあまり意味のないことはわかっていますが、わが国の現状では、モーターホームという車の捉え方は少なく、キャンピングカーという捉え方で車を作り、求めているというケースが圧倒的に多いように思うのです。しかし、実際にその憧れのキャンピングカーを手に入れ、いざ旅に出掛けるとなりますと、1週間程度であればアウトドア気分で、キャンピングカーとはこのようなものなのかと満足できるのですが、1ヵ月を超えるような旅くらしとなりますと、アウトドア気分は消え去って、旅のための動く家として機能して欲しいという捉え方にならざるを得ません。
旅車について、これから新しくくるま旅くらしを目指そうとされる方は、アウトドア機能だけではなく、モーターホームとしての機能がどのくらい備わっているかを旅車に求めることが肝心なように思います。私自身の経験からは、日本の旅車は作る側も使う方も、それをどう使いこなすかという楽しみ方やそれにどう応えるかという発想が不十分なような気がしてなりません。
これからは車を使っての旅くらしを大いに楽しむ時代だと思います。日本流のモーターホームとそれを受け入れ活用するツールや設備がより以上に整備されることを願って止みませんが、それは、旅車を使おうとする一人ひとりの思いによって決まってゆくものだと考えます。私は「くるま旅くらし」という新しい旅のあり方を提唱したいと思っていますが、そのためにも旅車に対する見方を確立してゆく必要を感じています。