東京多摩借地借家人組合

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20年の借地契約の途中で堅固建物へ建替えたが契約期間は30年に自動的に延長されるのか

2008年05月02日 | 契約更新と更新料
(問) 昭和63年に父名義で借地の更新をした。その3年後に父が亡くなり、私が借地権を相続した。建物が老朽化していたので、平成5年に立替承諾料290万円を支払って木造2階建てから鉄骨4階建てへ立替えた。だが、借地契約書は父名義・存続期間20年のままで、存続期間30年の契約へ書換えずにいた。 地主は20年経ったので借地の更新だと言って坪5万円の更新料を請求してきた。堅固建物を建てたのだから契約書を取交わさなくても、存続期間30年の契約に自動的に延長されるのではないか。

 (答) 借地借家法は平成4年8月1日から施行されている。それ以前に設定された借地権については「建物の滅失後の建物築造による借地権の期間の延長に関してはなお、従前の例による。」(借地借家法附則7条)とされている。この場合には借地法が適用される。

 借地法7条は借主が残存期間を超える耐用年数のある建物を再築することに対して貸主が遅滞ない異議を述べなかった場合、借地権は建物滅失の日から、堅固な建物については30年間、その他の建物については20年間存続する。但し、残存期間がこれよりも長い時はその期間による。このように建物再築による期間延長を規定する。即ち再築による法定更新を定めている。

 ここでの「滅失」は「建物滅失の原因が自然的であると人工的であると、借地権者の任意の取壊しであると否とを問わず、建物が滅失した一切の場合を含む」(最高裁昭和38年5月21日判決)。即ち、火事による建物の焼失や地震・台風による建物の倒潰の他に借主が再築のために建物を取壊す場合も含まれる。

 借地法7条にある貸主の異議申立てには存続期間の延長を妨げるだけのものであるから、貸主に正当事由は必要がない。貸主が異議を述べても借主は建物を取り壊す必要はない。従来の存続期間が満了した時は、借地法6条による更新の規定が適用される(最高裁昭和47年2月22日判決)とされているので、借主は法定更新を主張できる。勿論、借地法4条の更新請求による法定更新も主張できる。

 なお、借地法4条、6条による法定更新の場合は朽廃による借地権の消滅が問題になるが、7条による法定更新の場合は期間の途中で朽廃があっても借地権は消滅しない点に違いがある。

結論、相談者の場合は、平成5年に貸主が堅固建物への建替えを承諾しているから、貸主の異議申立は問題にならない。従って、借地法7条の規定から建物取壊しの日から存続期間30年の借地契約が法定される。

 参考として、借地法7条の条文上は存続期間の起算点は「建物滅失の日」となっている。しかし、20年以上も時間が経過すると滅失日が確定できない場合もある。そこで「建物保存登記日」を存続期間の起算点とした例もある(東京地裁昭和48年7月25日判決)。

 また、立替承諾の許可の裁判確定の時を存続期間の起算点とした例もある(千葉地裁昭和43年7月11日判決)。

 借地借家法では「借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続する。」となっている。


参考法令 (借地法)
第7条 借地権ノ消滅前建物カ滅失シタル場合ニ於テ残存期間ヲ超エテ存続スヘキ建物ノ築造ニ対シ土地所有者カ遅滞ナク異議ヲ述ヘサリシトキハ借地権ハ建物滅失ノ日ヨリ起算シ堅固ノ建物ニ付テハ30年間、其ノ他ノ建物ニ付テハ20年間存続ス
但シ残存期間之ヨリ長キトキハ其ノ期間ニ依ル




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「定額補修分担金は無効」  京都地裁 元貸主に返還命じる

2008年05月01日 | 最高裁と判例集
 賃貸住宅の借り主に退居時の修繕費用の一部を事前に負担させる「定額補修分担金」は消費者契約法により無効として、京都市伏見区の賃貸マンションの元住人が家主に16万円の返還を求めた訴訟の判決が30日、京都地裁であった。中村哲裁判長(代読・辻本利雄裁判長)は「借り主の義務を加重し、一方的に不利益を負わせる契約で無効」とし、全額の返還を命じた。

 京都から全国に広まるつつある定額補修分担金制度についての司法判断は初めて。この制度をめぐっては、被害者個人に代わって事業者に差し止め請求できる団体訴訟制度に基づき、京都市の消費者団体が今年3月、京都市の不動産会社に定額補修分担金制度の廃止を求める訴えを京都地裁に起こしている。

 両訴訟に取り組む京都敷金・保証金弁護団は「定額補修分担金を無効とする流れを基礎付ける判決」と評価する。家主側の弁護士は「消費者契約法を拡大適用した不当判決」として控訴する方針。

 判決によると、住人は2005年に家賃6万3000円のマンションに入居した際に定額補修分担金16万円を支払い、07年の退居時に返還を受けられなかった。

 家主側は「軽い過失による物件の汚損の損害賠償を事前に定額化させる制度で、借り主にもメリットがある」と主張した。これに対し、中村裁判長は「本来、負担義務のない通常汚損の回復費用を強いる契約。軽い過失の発生は少なく、その回復費用が家賃の2・5倍であるとも考えられない」と述べ、「借り主の利益を一方的に害して無効だ」とした。(京都新聞 5月1日)
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3月新設住宅着工、9カ月連続減少・07年度は41年ぶり低水準

2008年05月01日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
国土交通省が30日発表した3月の新設住宅着工戸数は前年同月比15.6%減の8万3991戸と9カ月連続で減少した。下げ幅は2月(5.0%減)から拡大した。建築確認を厳しくした改正建築基準法施行の影響はほぼ一巡したが、景気低迷による分譲マンション販売減少などが着工戸数を押し下げた。年度ベースでも2007年度は前年度比19.4%減の103万5598戸となり、1966年度以来、41年ぶりの低水準になった。

 3月の利用目的別では分譲マンションが前年同月比22.2%減と大きく落ち込んだ。首都圏などでの販売低迷でマンション会社が新規着工を見送っているのが主因。分譲の戸建住宅も9.3%減。賃貸住宅の「貸家」も22.0%減と大幅に減少した。

 地域別では、首都圏が11.7%減、中部圏が11.6%減、近畿圏が24.5%減、その他の地域も16.3%減と軒並み減少した。(日経4月30日)
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