東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

抵当権設定後の建物を賃借しているが競落人から明渡請求を受けている

2008年01月16日 | 借地借家の法律知識
(問)平成15年に2年契約で店舗を借りた。2年後の更新は法定更新となった。平成19年4月に競売になり、11月に競落した買受人から店舗の明渡請求をされている。不動産業者は契約時に抵当権が設定されていることを一切説明していない。そのことを知っていれば設備費に300万円を投入していなかった。この設備費を不動産業者に賠償請求が出来ないか。また、200万円の保証金返還請求は誰にすればいいのか。

(答)【短期賃貸借の保護】利用権が602条の短期賃貸借(建物賃貸借の場合は3年以内の契約)である場合は抵当権の登記後に設定された賃貸借でも、抵当権者や買受人に対抗出来る(民法395条)と規定されていた。だが、平成16年4月1日、民法395条「短期賃貸借保護制度」は廃止された。しかし、「短期賃貸借に関する経過措置」(附則第5条)により次の条件を満たしていると「短期賃貸借の保護」は継続される。即ち抵当権設定後の建物賃貸借であっても平成16年3月31日までに契約された対抗力のある期間3年以内の建物賃貸借契約の場合は「短期賃貸借の保護」が適用され、その後の更新も認められる。
 但し、抵当権実行による差押さえの効力が発生した時以降に期間満了した場合にはもはや更新できないものとされている(最高裁昭和38年8月27日判決)。
 なお、「期間の定めのない建物賃貸借契約」は、「正当事由」があればいつでも解約できるのであるから民法395条にいう短期賃貸借に当たるという最高裁昭和39年6月19日判決がある。
 相談者の賃貸借契約は「短期賃貸借に関する経過措置」により民法旧395条の短期賃貸借の保護がある契約であるから買受人(新所有者)に対して対抗力がある。従って、賃借人の預託した敷金(保証金)は原則として新所有者から返還される。また、賃借人の賃借権は新所有者に対抗出来るので無条件で解約されることはない。新所有者の明渡請求裁判が確定するまでは建物を明渡す必要はない。
 登記簿の調査義務に関して、熊本地裁平成8年9月4日判決では、宅建業者の重要事項説明(宅建業法35条1項1号)に差押登記の有無も含まれるとして不動産業者の差押登記の調査説明義務違反を理由にして損害賠償責任を認めている。
(東京借地借家人新聞)

借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新春業況アンケート、「景気悪化する」64% 住宅新報調査

2008年01月16日 | 政治経済
2008年は米国の景気後退などを反映した株価急落でスタートした。住宅・不動産業界の経営トップ91人を対象に住宅新報が実施したアンケートにも、日本経済を取り巻く不安や懸念が色濃く表れたが、一部では今年後半の回復を見込む声も聞かれ、期待と不安が入り混ざる結果となった。

 日本経済(景気)や住宅・不動産業の業況については悲観的な見通しが皆無だった1年前の同アンケートから、今年は状況が一変した。日本経済は、「景気回復は腰折れ期に入る」が39%、「景気悪化が企業活動に影響を与える」も25%に上り、併せて64%が景気悪化の見通しとなった。国内消費の停滞、サブプライム問題の長期化、円高、原油高などが主な理由として挙げられた。一方、成長著しいアジア経済への期待や国内における好調な企業業績、実態経済の底堅さなどを背景に「前年並みの回復基調を維持する」との回答も3分の1に上った。

 住宅・不動産市場動向については「前年並みの市場動向で推移」の44%を、「需要停滞、マーケット縮小」の49%が5ポイント上回った。

 建築確認の厳格化に伴う市場縮小、不動産価格の高騰が2大要因に挙げられ、景気鈍化によるムードの悪さを指摘する声も聞かれた。

 一方、環境対応や「200年住宅」、ファンド再編、外資の投資活動、金利アップと消費税増税論議のタイミングなどに注目するという自由回答が目立った。

 経営トップが挙げた今年の業界キーワードを見ると、業界内外を問わず偽装問題が多発したことへの警戒感から「安全・安心」が55票と2位以下を大きく引き離し関心の高さがうかがわれた。「用地難」と「団塊世代のリタイア」がほぼ同率でこれに続き、先送りされている「金利上昇」は、昨年の1位から大きく後退した。

 好調を続ける首都圏のオフィスビル市場は、全体的に空室率低下、賃料上昇の流れが続く見通しが多かった。なかでも一部に高値感がうかがえた好立地、高グレードのオフィスビルにこの傾向が顕著だった半面、賃料上昇は大都市にとどまり地方との二極化が進むと見ている。また、不動産投資市場については投資活動は伸び悩むものの高い水準を維持するとの見方が多かった。

 昨年中ごろから減速し始めた首都圏の不動産流通市場は、リテール、ホールセール共に取引量が「前年並み」との回答が過半数を超えた。しかし、「増加」の回答が減り「減少」が大きく増える傾向が強まって、流通市場の風向きは大きく変わった。首都圏の不動産価格は、「価格上昇」が昨年の75%から8%にまで激減し、横ばいもしくは二極化の見通しが強まった。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

賃貸アパートの更新料について

2008年01月15日 | 契約更新と更新料
(Q) アパートの更新で、入居したときに契約した不動産屋さんと違う不動産屋さんから更新の契約書が届きました。

入居時に、前の不動産屋さんから更新料は1カ月ということを聞いていました。(契約書には明記していませんが、募集のちらしには1ヶ月と書いてあります)

今回、他の不動産屋さんから送られてきた契約更新通知書には1、2カ月および書類代800円と書いてあります。これは、支払わなければならないのでしょうか。

(東京都 会社員 20歳代 女性)




(A)  すぐに確認を!
 まずは、賃貸人に連絡をして委任先の管理会社(不動産屋)を確認して下さい。
近年、更新時の詐欺事件がある為です。
更新料については、通常契約時の約定で良いはずです。
契約時の契約書及び重要事項説明書をもう一度確認して管理会社と話し合ってみて下さい。
話し合いがつかない場合は、都道府県庁の住宅局に相談してみて下さい。適切な指示をしてくれます。

(住宅ねっと相談室カウンセラー 宅地建物取引業 高木 栄一)

■法律的には

 法律的には通常の借家契約は、期限が来た場合、法定更新されます。
契約書に更新料の記載が無い場合には、更新料を支払う義務は生じません。
契約書に記載がある場合は、支払わないと契約違反と主張される場合がありますが、あくまでも記載された金額の範囲で、一方的に金額を増やして請求するようなことはできません。
尚、不動産管理会社が家主の代理人の場合、かかった費用は本来家主に請求すべきです。
ただし、契約書を作成するような場合の印紙代については、借り主が所持するものの印紙代は借り主負担が普通です。

(住宅ねっと相談室カウンセラー 弁護士 日置 雅晴)


借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

近隣と比べ高過ぎる地代減額で粘り強く交渉

2008年01月14日 | 地代家賃の増減
練馬区旭丘に借地して住む福島さんは、今年の3月末に借地期間の20年が満了した。この間、地代の値上げでいつのまにか近隣の相場と比較しても四、五倍の地代となり、知人の紹介で数年前に組合に相談した。この時は組合の相談し、地代値下げ請求の文書をだすと、相手は若干の地代の値下げに応じることになり値下げを実現させることが出来た。

しかし、組合の相談の中で、契約書には更新に際して更新料を支払う約束があることがわかり、更新の時には地主が法外なことをいってくる可能性があることを指摘した。案の定、地主は不動産屋を代理人にし、更新料の請求をしてきた。組合では、期間満了までに更新することなく、法定更新にし、じっくりと交渉することにした。

この前後をして門の修理や隣の軒先から流れる雨水で壊れた壁の修繕などを行う工事をした。すると早速に工事は改修に当たるから、するなと無法なことを主張してきた。

無視していると、代理人の不動産屋からあらためて更新の手続きを行うよう文書が送られてきた。組合と相談し、更新料の支払いには応じるがあまりにも高い地代については減額請求をすることにした。地代は近隣の相場と比較しても高いのでせめて公租公課の二倍になるように交渉をすることにした。減額請求が合意できれば、更新料についても請求の半分にし、合意するよう提案することにした。



借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合まで

一人で悩まず  042(526)1094 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

賃貸住宅の更新料、是か非か  京都地裁 08年1月末に判決

2008年01月12日 | 契約更新と更新料
賃貸マンションやアパートの住人が1、2年ごとに家主から請求される「更新料」は払う必要があるのか、それとも払わなくてもよいのか。京都や東京などで広がる更新料制度の是非について正面から争われた訴訟がこのほど京都地裁で結審し、来年1月30日に判決が言い渡される。更新料を定めている物件は100万件以上に上るともいわれ、有効か無効かの司法判断は全国的な注目を集めている。

 訴訟はまず、京都敷金・保証金弁護団(団長・野々山宏弁護士)の全面支援を受けた京都市内の男性が今年4月、過去5年間に支払った更新料は無効として、家主に返還を求める訴えを起こしたことに始まる。これに対し、「業界全体にかかわる問題」と危機感を抱いた賃貸物件の管理業者らが「貸主更新料弁護団」(代表・田中伸弁護士)を立ち上げ、家主側の全面支援を決めた。

 訴訟の最大の争点は、「消費者の利益を一方的に害する条項は無効」と定めた消費者契約法10条の解釈だ。貸主弁護団は▽更新料は賃料の補充で、月額の賃料はその分安く設定されている▽更新により、家主からの解約申し入れを拒否できる-などの借り主側の利点を挙げて「制度には一定の合理性があり、10条違反ではない」と主張する。

 一方、借り主側の弁護団は▽賃料補充説は、右肩上がりに賃料が上昇していることが前提で、現状と異なる▽賃貸物件で立ち退きを求められるケースは基本的にない-などとして「更新料を支払う合理性はなく、消費者にとって一方的に不利益な条項。10条により無効とすべき」と反論する。

 双方の弁護団には、京都弁護士会の弁護士がそれぞれ10人以上が加わり、会を二分して全面対決する「異例の事態」になっている。主張をまとめた書面にも「消費者運動の政治的スローガン」(貸主弁護団)、「欺まん的、詐欺的。時代の流れに逆行」(敷金弁護団)と過激な言葉が並んだ。

 更新料制度は1950年代ごろに定着したとされるが、成立の経緯などははっきりしない。貸主弁護団は、国の統計などから全国に約900万件あるとされる賃貸物件のうち「少なくとも1、2割は更新料がある」と推計し、「もし制度が無効なら影響は計り知れない」とみている。

 貸主弁護団の田中代表は「これだけ社会に定着した制度をひっくり返せるはずがない。非常識な訴えに対して、常識的な判決が下る」とし、敷金弁護団事務局長の長野浩三弁護士は「不合理な制度を業界の都合で維持しようという時代遅れの態度。大学の学納金不返還も社会に定着していたが無効だった」と、双方とも勝訴を確信している。


更新料等のご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

景気ウオッチャー調査:街角の景況感、9カ月連続で低下

2008年01月11日 | 政治経済
内閣府が11日発表した12月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景況感を示す現状判断指数は前月比2.2ポイント低下の36.6と、9カ月連続で低下した。原油高や食料品価格の上昇に加え、百貨店を中心に歳暮、クリスマス商戦が全国的に不振だったことが響いた。消費マインドの冷え込みは深刻で、内閣府は基調判断を2カ月連続で「景気回復の実感は極めて弱くなっている」とした。

 現状判断指数は35.5だった03年1月以来約5年ぶりの低水準で、指数を構成する家計、企業、雇用の3指標とも前月比で悪化した。良しあしの判断の分かれ目となる50も、9カ月連続で割り込んだ。

 悪化が目立ったのは消費で、特に百貨店で時計や宝飾品など高額商品やギフトの売れ行き不振が各地で報告された。飲食店での忘年会やクリスマス需要の落ち込みも目立った。内閣府は「冬のボーナスが悪かったことや、大幅な株価下落が影響したのではないか」と指摘している。【三島健二】

毎日新聞 2008年1月11日 18時44分

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

不動産業者の重要事項説明書の記載内容が実際と違うが

2008年01月11日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
(Q) 重要事項説明書の記載内容が実際とは異なっていたので、業者に「契約を解除したい」と言ったが、「申し訳ない」というだけで埒があかない。


(A) 重要事項説明書の記載内容は、契約するかどうかを判断する上で重要となる内容を説明したものですから、記載内容自体が間違っているという場合は、業者として、何らかの責任を負わなければなりません。

 「記載自体が間違っている」場合の原因としては、家主が業者に提供した情報自体が間違っていたケース、業者が過失で記入間違いしたケース、業者が故意に記載内容を変更したケースなどが考えられますが、はっきりさせなければならないのは、もし、「記載内容が間違っていなければ契約したかどうか?」です。

 たとえば、遮音構造を物件選びの際に重視していた人が、鉄筋コンクリート造だと説明されていたものが、実際には鉄骨造だった場合などは、業者は、単に「すみません」では責任をおったことにはならず、契約解除する場合の損害をすべて負うべきでしょう。

 しかし、建築年が1・2年事実と異なっていたというようなケースや全体の部屋数が少し食い違っていたというようなケースでは、契約するかしないかにほとんど影響はなかったはずですので、損害賠償まで求めるのは無理でしょう。

 従って、ご質問のケースでは、業者に対して物件探しの際に重視するポイントとして説明していた事項が間違っていたのかどうかがポイントとなり、業者に対する責任追及の内容もおのずと異なってくるものと思います。



借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

家を買ったので定期借家契約を解除したい

2008年01月10日 | 定期借家制度
(Q) 現在、個人所有のマンションを、定期借家契約で借りています。この度、思い切って自分のマンションを持つことにしました。

 そこでご質問なのですが、定期借家契約を借主都合で解除する場合の「やむを得ない事情」に、持家の購入はあてはまりますでしょうか。ちなみに3年契約の3年目になったところです。

 いろいろネット等でも調べてみたのですが、今ひとつあてはまる情報がありません。何卒、ご教授お願いします。

(東京都 30歳代 公務員 男性)




(A) 残念ながら、やむを得ない事情にあたりません
 定期借家契約は、家主と借主がお互いに、「契約期間は一切契約解除しない」ことを条件とした契約です。その代わり、普通借りられない物件が借りられたり、相場より安い賃料で借りられたり出来るのが通常です。

 借地借家法第38条第5項では、居住用建物で床面積が200平方メートル未満のものは、転勤、療養、親族の介護などの「やむを得ない事情」により、生活の本拠として使用することが困難になったときは、契約を中途で解除の申入れをすることができるとされています。

 「やむをえない事情」として列挙されているのは、「転勤、療養、親族の介護など」ですが、これらに共通するものは、「借主の意思に関係がない」ということです。

 つまり、他者(企業、病気、親族)の都合により、借主が、もはや生活の本拠として使用できなくなったような場合には、契約解除もやむをえないとしているのです。

 その観点から言えば、「持ち家の購入」は、借主の意思そのものですから、定期借家契約でいうところの「やむをえない事情」としては認められませんので、契約終了まで家賃を支払うのが筋です。

 以上が法的な考え方ですが、家主との合意ができれば、もちろん、合意解除することはできます。駄目もとで交渉してみましょう。

(住宅ねっと相談室カウンセラー 大学生協職員 朝永 彰)


[2004.12.15 掲載]




借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1月の定例法律相談会

2008年01月09日 | 借地借家問題セミナーと相談会
◎日時 1月12日(土)午後1時30分から
午後4時まで(先約順)
◎会場 組合事務所
◎担当 組合顧問 土橋実弁護士
相談は無料。電話で予約の上お越し下さい。


組合に加入していただければ無料相談が受けられます。

お問合せ 東京多摩借地借家人組合

  042(526)1094
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アパートの貸主の妨害で借主が使用できなくなったことに貸主の損害賠償が認めれた事例

2008年01月09日 | 借地借家の法律知識
アパートの貸主の妨害によって借主が部屋を使用することができなくなったことにつき、貸主に損害賠償責任が認められた事例 (東京地裁平成3年6月24日判決。判例時報1412号121頁)

 (事案)
 Xはアパートの一室を賃借していたが、このアパートを取得して貸主となったYは、アパートの改修工事を行う必要があるとして、電気・水道の供給を停止し、共用のトイレを破壊する等の行為をした。その結果、Xは貸室に居住し続けることができず、荷物を貸室に置いたまま、友人宅などに宿泊せざるをえなくなった。

 またXは、Yに対し電気、水道の供給の停止その他のXの貸室使用を妨害する一切の行為を禁止し電気等の供給を命ずる仮処分の申請を裁判所に行い、その決定が出されたがYはこれに一切従わなかった。そこで、XはYに対して、貸室の賃借権の確認と損害の賠償を求めて、裁判を提起した。

 (判決)
 判決は、「本件建物の改修工事を行う場合、それが、貸主としての修理義務の履行としての工事の範囲である場合は格別、本件工事のごとく、賃貸借の対象物件の現状を大きく変更し、また、工事期間中貸室の使用が事実上不可能になるようなときは、借主の意向を無視して一方的に行うことが許されるものではない。

このような工事を行うことは、本件賃貸借契約の内容の変更を生じさせ、契約上の目的物を使用させるという貸主の債務の不履行を含むことになるため、賃借人の同意・承諾が不可欠である。‥‥‥(本件建物の改修工事をおこなう)必要性がある場合、借家法の適用のある本件賃貸借契約について、解約申入れを行う等の手順が必要とさせるところである」として、事実経過やYの妨害行為を認定した上で、

 「Yの本件妨害行為により、Xは本件貸室を退去するの止むなきに至ったのであり、しかもこの行為は、法により保護されているXの賃借権を違法に侵害するものである」と判示し、Xに貸室の賃借権が存在することを認め、Yに対してXがこうむった損害を支払うよう命じた。

 なお、損害として判決は、和解による訴訟の早期決着の見込みがなくなった時点後は別の賃貸物件を物色してそこへ移るべきだとして、①右時点後1か月間(別の賃借物件を物色する期間)のホテル等の宿泊等の実費②その後の家賃相当金及び別の賃貸物件の敷金・権利金・仲介手数料(いずれも裁判所が独自に認定)を認定し、これに③慰謝料20万円を加えた金額を支払うようYに命じている。

 (寸評)
 家主が土地建物の有効利用を図ろうとして借家法や賃貸借契約を無視して、強硬に実力行使をしあるいは嫌がらせをして借家の使用を妨害する事例が増えている。本判決は、その違法性を正面から認め家主に損害賠償を命じたもので、同じ境遇におかれている借家人にとって1つの大きな支えとなる者である。また、損害の算定方法についても参考になると思われる。     1992.08.


(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

賃貸人が代わり家賃の値上げを要求されています

2008年01月08日 | 地代家賃の増減
(Q)1年前から賃貸マンションに住んでおります。契約期間は2年間です。今月になって、不動産売買によって賃貸人が変わったという書類が届きました。そして、新しい管理業者から、「地価等の相場も考慮して家賃を1万円ほど上げる。急な話なので、今月は以前の家賃でよいが、10月からは新賃料での振り込みをお願いしたい。」と連絡がありました。

 契約から、まだ1年しか経過していないのですが、このような要求にどのように対処すればよいのか困っています。もちろん、不満だからといって退去という選択はとりたくありません。

 自分でも調べたのですが、契約期間が2年程度であれば、一方的に家賃の値上げをする合理的根拠は存在しづらい、と記載されてあったのを見ました。不当請求として、拒否または交渉することができるのでしょうか? ちなみに、地価が劇的に上がるような交通・建物等の工事は現状では見て取れません。よろしくお願い致します。

(東京都 20歳代 会社員 男性)




(A) 前の家主の地位を引き継ぐ

 家主が変わったからといって、以前の家主との契約をいきなり白紙にするのは、法的にも根拠がありません。なぜなら、新しい賃貸人は、前の賃貸人の地位をそのまま引き継ぐのが原則だからです。したがって、少なくとも次の更新時までは、従前の家賃を踏襲すべきだと思います。まずは、そのように主張してみましょう。

 それでも、値上げを要求してくるのなら、賃借人が相当と考える家賃を供託する制度もあります。賃借人は、現在の家賃を納めて賃貸人に受領拒絶された場合は、従前の家賃を供託することができるのです。この供託により家賃不払いという債務不履行が回避できますし、家賃を増額するには、賃借人が和解を含めた訴えを提起しなければなりません。その場合、おそらく裁判所は次回更新時までの家賃増額は認めないと思われます。

 供託に関しての詳しいことは、地元の消費生活センターや司法書士会主催の相談会などで相談してみてください。

(住宅ねっと相談室カウンセラー NPO理事 石田 光曠)



借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094




[2007.12.20 掲載]

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

連帯保証人の代行会社の保証委託契約書は要注意

2008年01月07日 | 賃貸借契約
連帯保証人を立てられない人へのサービスとして不動産仲介会社から保証人代行会社を紹介されるケースが増えている。中には保証人がいても、家主が保証会社を入れないと貸さないう物件もある。賃借人は保証会社への保証料として家賃の半月分を支払い、2年目ごとに保証料を支払って保証契約を更新するが、契約書の内容が問題だ。例えば、賃借人が賃料を1ヶ月分でも滞納すると保証会社は「架電、訪問、張り紙等相当の手段をもって支払の督促をすることができる」、「賃料滞納を行い、1週間以上連絡なき場合(管理会社は)本物件の一時使用停止の為ドア施錠ロックを行なうものとし、(借主は)それを了承した」等々、法律で禁止されている自力救済(実力行使)がずらりと並んでいる。契約には十分に注意が必要だ。



借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マンション契約の際と環境が変わった場合、家賃の値下げなどできますか

2008年01月05日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
(Q) 8月に賃貸マンションを契約して入居しました。契約の1週間後、目の前に、住んでいるマンションより高層のマンションが10月から建設されるということを第三者から聞き、初めて知りました。契約の際、不動産業者からそのことに関し何の説明もありませんでした。クレームを言ったところ、「本当に知らなかった」と言うのです。自宅で仕事をしていることもあり、日当たりの良さと外の景色が気に入って契約を結んだだけに困っています。賃料の値下げをしてもらったり、引っ越しをする場合の必要な経費などを出してもらったりなど、できるのでしょうか。

仙台市 KC(フリーランス)


(A) 宅建業者は、物件に関する調査義務、誠実義務があり、重要事項については説明義務があります。また、マンション建設を知らなかったとしても、日照など条件が著しく悪くなるとすれば、賃料の値下げなど請求できるでしょう 賃貸マンションを借りる場合、賃貸借契約を締結するまでに、宅地建物取引業者は重要事項を説明することが義務づけられています(宅建業法35条)。さらに同法47条(1項1号)では、「重要な事項について、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為」を禁止しています。

 ご質問の場合、目の前に高層マンションが建つことが周辺の人たちには一般に知れ渡っている事実であれば、地元の宅建業者として「知っていること」は当然のことと考えられます。それを知っていて告知しなければ、宅建業法47条に違反していると思われます。

 さらに、物件説明の際に「日照も良く、眺望も良い物件だ」と説明しているとか、借りる予定者が日照を阻害する高層マンションなどの建設予定などないかを聞いて、「それはありません」といった応答があった場合は、業者の調査義務・誠実義務の怠慢と言えるでしょう。そのことによって、契約時の目的が達せられない場合は、賃貸借契約の解約と引っ越し費用、再契約金の一部を損害賠償として請求することはできると思います。

 業者が、目の前のマンション建設を「本当に知らなかった」場合でも、日照が著しく阻害されるようであれば、当初の条件と著しく居住条件が悪くなるわけで、賃料の値下げ請求はできると思います。

財団法人 日本賃貸住宅管理協会

http://www.jpm.jp/

(2007年10月5日 読売新聞)



借地借家の賃貸トラブルのご相談は

安心して相談できる 借主団体の東京多摩借地借家人組合まで

一人で悩まず  042(526)1094 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

借地内の車庫利用で借地契約解除と地主が調停申立

2008年01月04日 | 裁判と調停
 三鷹市新川で約33坪を借地している吉田さんは、地主の春清寺から戦後間もなく裏の親戚と共同で借地をした。地代は一緒に集めて地主に支払っていた。ところが平成16年の12月に裏の親戚が突然地主に借地権を売却したことをきっかけに地主の嫌がらせが始まった。

 「お前には貸していない」と言って地代の受領を拒否し、元々口約束なので契約書がないことにかこつけて、改めて契約する場合は定期借地権にすると言い出す始末。吉田さんは組合と相談しながら頑張っている。

 昨年、裏の家を取壊す工事をするので工事車両の出入りのため通路を2mにするといってきたので吉田さんは垣根を切ることに同意した。裏の家を取壊すと今度は、地主の代理人の弁護士から「地主の許可なく借地内に車を駐車させているので契約を解除する」と脅しの通知を昨年9月に送ってきた。

 どうやら地主は通路を4mまで拡幅するため吉田さんの車を撤去させようとしている。そこまで広げると吉田さんの玄関の出入りも不自由になる。まして、写真のように垣根を境にして吉田さんの借地内であり、車の駐車も地主から文句をつけられる理由はない。

 昨年12月に地主は土地明渡しの調停申立をしてきたが、組合では「土地明渡しの理由などない」と吉田さんに頑張るようアドバイスした。
第1回目の調停では、吉田さんは地主の言い分の間違いを具体的指摘し、調停を不調にしてもかまわないと主張した。次回調停委員より地主に譲歩案を示すので、次回も参加するよう求められた。吉田さんは、調停が不調になっても裁判を受けて立つ覚悟を固めている。


借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合まで

一人で悩まず  042(526)1094 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平成15年契約の借店舗が競売された短期賃貸借の保護は

2008年01月03日 | 借地借家の法律知識
(問) 平成15年に2年契約で店舗を借りた。2年後の更新は家賃値上げで揉め、期間満了後の継続使用による法定更新となった。平成19年4月に競売になり、11月に競落した買受人から店舗の明渡請求をされている。貸主と不動産業者は契約時に抵当権が設定されていることを一切説明していない。そのことを知っていれば設備費に300万円を投入していなかった。この300万円の損害を貸主と不動産業者に損害賠償請求が出来ないか。また、200万円の保証金返還請求は誰にすればいいのか。


 (答) 「短期賃貸借の保護」抵当権の登記後に抵当不動産上に設定された利用権は、抵当権が実行されると覆滅するのが原則である(民法177条)。しかし、利用関係が抵当権者に損害を及ぼすものでない限り、これを覆滅させないことが望ましい。

 そこで利用権が602条の短期賃貸借(建物賃貸借の場合は3年以内の契約)である場合は抵当権の登記後に設定された賃貸借でも、抵当権者や買受人に対抗出来る(民法395条)として、抵当権と利用権の調和を図った。だが、平成16年4月1日、民法395条「短期賃貸借保護制度」は廃止された。

 しかし、「短期賃貸借に関する経過措置」により次の条件を満たしていると「短期賃貸借の保護」が継続される。
 即ち、「この法律の施行の際現に存する抵当不動産の賃貸借(この法律の施工後に更新されたものを含む。)のうち民法602条に定める期間を超えないものであって当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものに対する抵当権の効力については、なお従前の例による。」(「短期賃貸借に関する経過措置」附則第5条)。

 この附則第5条により抵当権設定後の建物賃貸借であっても平成16年3月31日までに契約された対抗力のある期間3年以内の建物賃貸借契約の場合は「短期賃貸借の保護」が適用され、その後の更新も認められる。

 但し、抵当権実行による差押さえの効力が発生した時以降に期間満了した場合にはもはや更新できないものとされている(最高裁昭和38年8月27日判決)。

 なお、「期間の定めのない建物賃貸借契約」は、「正当事由」があればいつでも解約できるのであるから民法395条にいう短期賃貸借に当たるという最高裁昭和39年6月19日判決がある。

 相談者の賃貸借契約は「短期賃貸借に関する経過措置」より民法旧395条の短期賃貸借の保護がある契約であるから買受人(新所有者)に対して対抗力がある。

 従って、賃借人の預託した敷金(保証金)200万円は原則として新所有者から返還される。また、賃借人の賃借権は新所有者に対抗出来るので無条件で解約されることはない。新所有者の明渡請求裁判が確定するまでは建物を明渡す必要はない。

 登記簿の調査義務に関して、裁判所は「宅建業者は賃貸人に確認するのはもとより、疑問のある場合は登記簿を閲覧するなどして差押登記等の有無を確認し、賃借人に不測の損害を被らせないように配慮すべき義務がある」(東京地裁平成4年4月16日判決)として損害賠償請求を認めている。

 また、熊本地裁平成8年9月4日判決では、宅建業者の重要事項説明(宅建業法35条1項1号)に差押登記の有無も含まれるとして不動産業者の差押登記の調査説明義務違反を理由損害賠償責任を認めている。貸主に対しては、建物が差押えられている事実を借主に伝える告知義務違反があったとして不動産業者と連帯して損害賠償の支払を命じている。

 結論、損害賠償責任は貸主と不動産業者にある。また保証金は新所有者から返還される。(台東借地借家人組合ブログ)



借地借家の賃貸トラブルのご相談は

今年も東京多摩借地借家人組合まで

一人で悩まず  042(526)1094

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする