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更新料等を支払う旨の約定は、合意更新を前提としたもので、法定更新には適用されないとした事例

2011年04月19日 | 最高裁と判例集
京都地裁判決 平成16年5月18日
(ホームページ下級裁主要判決情報)

《要旨》
 建物の賃貸借契約における更新料等を支払う旨の約定は、合意更新を前提としたもので、法定更新には適用されないとした事例


(1) 事案の概要
 賃貸人Xは、平成14年2月24日、賃借人Yとの間で、建物を賃貸する旨の契約を締結した。条件は、①期間:同年3月1日から1年間、②賃料:6万2,000円、③管理費:8,510円、④更新料:新賃料の2か月分、⑤更新手続料:1万500円であった。
 Xの代理人(管理会社)Aは、平成15年2月ごろ、契約期間を平成15年3月1日から1年間などの記載のある「建物賃貸借契約継続及び改訂事項に関する覚書」という書面を送って、Yに署名・押印を求め、後に、更新料と更新手続料の支払を求めた。
 これに対しYは、本件約定は、新たに合意された賃料の存在を前提にし、その2か月分を更新料として支払うことを内容とするものであるから、法定更新の場合には適用されない、本件賃貸借契約は法定更新されているなどとして、支払を拒絶した。XはYに対して更新料等の支払を求めて提訴した。

(2) 判決の要旨
 ①借地借家法の趣旨に照らすと、法定更新の場合にも更新料を支払う旨を明確に約定している場合等合理的な理由がある場合を除いては、これを認めることは慎重であるべきである。
 ②本件約定は、文言上は、合意更新と法定更新を区別していない。しかし、法定更新の場合には更新手続に費用がかかるとは通常考えられず、手数料に関するものは、合意更新が前提と認めるのが相当である。
 ③合意更新の場合は、期間が定められ更新されるから、期間満了までは明渡しを求められることがなく、次回更新拒絶の場合でも、更新料の支払が、正当事由の存在を否定する考慮要素となる。一方、法定更新の場合は、期間の定めがなく、常に解約申入れの恐れがあり、その立場は不安定になるので、賃借人にとって、更新料を支払って合意更新する一定の利益は存することになる。
 ④この点を考慮すると、合意更新と法定更新とで、更新料の支払の要否について差が生じても、賃借人間で不公平が生じるとは言い難く、むしろ、法定更新についても更新料の支払を要するとすることの方が、合理性は少ないというべきである。本件更新約定は、合意更新を前提としたものであり、法定更新には適用されないとするのが契約当事者の合理的な意思に合致すると認められる。


(3) まとめ
 本件は、建物の賃貸借契約において、約定で更新時に更新料の支払をするとしたものの、それが合意更新のみならず、法定更新も含むものなのかがはっきりせず、争いになったのもであり、法定更新についても更新料の支払を要することは、借地借家法に照らしても合理性が少ないとした事例である。

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耐震検査で取り壊し勧告受けたと嘘の理由で明渡合意書に署名させる

2011年04月19日 | 明渡しと地上げ問題
 神戸市東灘区で文化住宅を借りているA子さんは、非正規の美容師さん。定職できず家賃も2カ月滞納し、生活不安の状態です。

 家主の代理人と称するTコンサルタントから、敷金全額返還を条件に6月末までに明け渡せと5月上旬に通知されました。震災後の神戸市の耐震検査で取壊し勧告を受けたというのが明け渡しの口実です。

 途方に暮れたAさんは、Tコンサルタントの強引な退去交渉に「明渡合意書」に署名捺印してしまいました。Aさんは、引っ越し先を探しに仲介業者を訪ねって、移転先を確保するために手付金を納めました。ところが、Tコンサルタントは、頼みもしないのに仲介業者へ同行し、引っ越し先まで確認する始末。

 この時点までは、何の疑いもなくTコンサルタントと接触していましたが、知人に相談し、急に不安を覚え、大借連を訪問。

 Aさんの話によるとTコンサルタントは、初めは宅建業の免許を持っているとの話でありました。しかし、免許番号を確認したいので教えて欲しいというと「免許は持っていない」という返事があり、無免許業者であることが判明しました。

 Aさんは、免許の無い業者では信頼できないと立ち退き交渉を中断し、家主へ連絡。家主は、文化住宅に隣接した民家の解体をしていたTコンサルタントから「ついでに文化住宅の立ち退き交渉を行い、成立したら解体して更地にする」と云われたので依頼したという。そして、家主は「条件が合わなければ従来通り住んでいてもよい。しかし、家が崩壊した場合の責任は応じない」と立ち退き条件などの話合いを拒否され、せっかく決めていた移転先も手付流れ(*)となりました。

 Aさんはもっと早く大借連を知ればこんな不安な思いをしなくてもよかったのにと悔やんでいます。



      大借連新聞より



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