花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

丸山眞男の現実主義

2006-08-30 23:29:17 | Weblog
 8/29付け朝日新聞・夕刊の論壇時評は「丸山眞男の現実主義」と題するものだった。その中である論文を引きながら、丸山眞男に見られる「現実主義者」としての面と、「理想主義者」としての面に言及している。そして、この両者を結ぶものとして「理想と現実、主体と環境、目的と手段の往復という高度なプラグマティズム」の契機があり、「現実主義」と「理想主義」との間で生産的な対話が行われていた、とする見方を紹介している。この記事を読んで思い出したのは、丸山眞男が法制史学者の世良晃志郎との対談、「歴史のディレンマ」(岩波書店刊「丸山眞男座談8」所収)で、カール・ポパーの‘Piecemeal’の思想について語った言葉だ。‘Piecemeal’とは言うなれば、「グランドセオリーを唱えるのではなく、小改善を積み重ねて世の中を良くしていきましょう」という立場である。その‘Piecemeal’について、丸山眞男はこう述べている。「なんらかの『全体』を想定して、それとの関係ではじめてピースミールの『ピース』(部分)の意味や価値が位置づけられるのであって、その逆じゃない。・・・大事な点は、社会工学でも『全体』が『部分』に先行するのだ、という点です。」 この発言からうかがわれるのは、丸山眞男の現実主義の根底にあるものが、理想に向けて現実を変えていこうとする改革の意識であり、その意味で理想主義と現実主義の複眼思考の持ち主であったということだ。そういった丸山眞男の現実社会へのスタンスの取り方が、没後10年経った今なお、著作が読み続けられている理由ではないかと思う。

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