(※朝日新聞朝刊連載「折々のことば」風に)
「そのあとの戦さというのは、掛け声だけですね」
太平洋戦争中、アメリカ軍は戦地へ向かう輸送船に狙いを定め、次々と沈めていった。補給路を断たれた南方各地の兵士は敵と戦うのと同時に飢えとも戦わなくてはならなかった。ガダルカナル島では3万1400名のうち2万800名が戦死し、その7割が餓死であったとされる。戦闘で負けたのではなく、兵站で負けたのである。当時を振り返り陸軍の元船舶参謀はそう嘆く。支援体制を欠いたままの戦争続行は、否が応でも精神論に訴えるしかなくなる。それはやがて特攻という人間を消耗品扱いにする片道切符の戦法に行き着く。
堀川惠子著 「暁の宇品」(講談社刊)から
「そのあとの戦さというのは、掛け声だけですね」
太平洋戦争中、アメリカ軍は戦地へ向かう輸送船に狙いを定め、次
堀川惠子著 「暁の宇品」(講談社刊)から