一昨日からの通勤本は「ロシア革命」(池田嘉郎著・岩波新書)です。冒頭の「はじめに」で著者は、「本書ではロシア革命を、何かが生まれる過程であるだけでなく、何かが崩壊していく過程としてもとらえてみたいのである」と述べています。随分昔になりますが高校の世界史では、第一次世界大戦の長期化で疲弊した民衆が立ち上がり王政が倒れた後、共産主義を掲げたボルシェビキが権力を握ることで革命は終わったと習ったような気がします。細かな革命の推移は覚えていませんが、ボルシェビキが権力奪取に向かって一直線の道筋をたどったのではなく、革命に関わった諸勢力の思惑がさまざまに絡まりあい、せめぎ合った末での結果だったと思います。単に王政を倒すと言っても、完全に倒すのか、あるいは要求を呑ませてツァーの力をある程度そげば良いのか、そしてその両者の間にも帝政をどの程度叩くのかについて一枚岩の合意があったとは思えません。また、エリート層が引っ張り英仏のような国を目指すのか、民衆を担い手に国家を根底から作り変えるのか、来たるべき社会の姿をそれぞれに思い描いたいくつものグループがあったことでしょう。諸派錯綜した混沌たる中で協力もあれば、せめぎ合いもあり、虚虚実実の駆け引きが繰り広げられたことは想像に難くありません。ボルシェビキ独裁に至る過程で、ロマノフ王朝以外だけでなく、ほかに何が崩壊していったかが明らかにされることを、はたまた人々の意思とその結果はぴったり重なったのか、それとも乖離を生んだのか、そういったことを期待して頁を繰りたいと思います。