アメリカでは共和党と民主党の大統領候補がそれぞれ決まりました。党同士の対立が激しいのはここのところずっとでしたが、今回は党内にも対立軸が出来、何だか国内を四等分したうちの四分の一同士が戦うような構図にも見えます。政治には権力闘争の面がありますが、それも行き過ぎると後への影響が心配になってきます。安定した統治がなされるには、統治する側の正当性が統治される側に認められることが必要であるにも関わらず、どちらが大統領になっても正当性を認めない人たちが相当数出そうです。クリントン民主党候補が党大会で「女性の社会進出を阻むガラスの天井に大きなヒビを入れることができた」とスピーチしたそうですが、これなども見方によれば宥和よりも対決を前面に押し出しているようで、対立的な姿勢を印象づけないでもありません。
ところで、最近復刊された政治学者・高坂正尭さんの「世界地図の中で考える」(新潮選書)に次のようなくだりがあります。多数派による一糸乱れぬ行動をとる国家よりも、多様性を内包する国家の優位性を述べた文脈におけるものです。曰く、「完全な計画などというものは、よほど目的を限定しないとできるものではない。計画は人間が作るものであり、その人間の頭というのはきわめて限られたものだからである。いかに秀れた頭脳でも、どこか抜けているところがある。それに、世の中には一見悪いことがよいことに役立ったり、失敗が成功を生んだりすることが少なくないからである。だからAという計画にしたがって国民全体が動くよりも、Aに反対の運動がなされ、Bという妥協提案をおこなうグループがある程度の強さを持って存在する方が、全体として巧く行くのである。」
政治に絶対解を求めず、暫定解の不断の積み重ねが政治であると見る高坂さんの立場に賛成です。政治においては、正義よりもバランスがより大切だろうと思います。この本はかれこれ50年近く前に初版が出ていますが、新聞で報じられるアメリカの現状、そして議会上の大多数を拠り所として対話を軽んじているかに見える日本の政治状況、これらを鑑みた時、今なお含蓄が深いように思えます。
ところで、最近復刊された政治学者・高坂正尭さんの「世界地図の中で考える」(新潮選書)に次のようなくだりがあります。多数派による一糸乱れぬ行動をとる国家よりも、多様性を内包する国家の優位性を述べた文脈におけるものです。曰く、「完全な計画などというものは、よほど目的を限定しないとできるものではない。計画は人間が作るものであり、その人間の頭というのはきわめて限られたものだからである。いかに秀れた頭脳でも、どこか抜けているところがある。それに、世の中には一見悪いことがよいことに役立ったり、失敗が成功を生んだりすることが少なくないからである。だからAという計画にしたがって国民全体が動くよりも、Aに反対の運動がなされ、Bという妥協提案をおこなうグループがある程度の強さを持って存在する方が、全体として巧く行くのである。」
政治に絶対解を求めず、暫定解の不断の積み重ねが政治であると見る高坂さんの立場に賛成です。政治においては、正義よりもバランスがより大切だろうと思います。この本はかれこれ50年近く前に初版が出ていますが、新聞で報じられるアメリカの現状、そして議会上の大多数を拠り所として対話を軽んじているかに見える日本の政治状況、これらを鑑みた時、今なお含蓄が深いように思えます。