花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

言われてみれば

2013-04-05 00:24:44 | Book
 以下はジョナサン・ハリス著「ビザンツ帝国の最期」(白水社刊)からの抜き書きです。「トルコ人がコンスタンティノープルの城門を攻撃している時、帝国が破滅の淵に立っている時でさえ、ビザンツ人は、内輪もめを繰り返し、煩瑣な宗教論争を果てしなく続けていた。何が大事なのかについての彼らの見るからに歪んだ判断は、後世の人々を当惑させたり憤慨させて、ビザンツへの同情を妨げるものとなった。」
 確かに、「危急存亡の時くらい一致団結したらどうだ」とは、誰しも思いそうです。しかしながら、一致団結する前にどう事に当たるかの合意が必要で、それなくしては団結のしようがありません。そのあたりの事情を著者はこう述べています。「理想社会においてはすべてのものが合意し、合意された目的に向かって一致して行動するであろうが、現実の社会はどこでも意見や利害の違いがあり、対立はさまざまの方法で表明され、解決されなければならないのである。中世世界においては対立の表明・解決は、政党やテレビ討論、選挙ではなく、国家の最高の地位、通常は国王の地位をめぐる王朝の争いを通じてなされた。」
 また、後生の人間が簡単に過去の出来事や人々に対して云々することについては、「自分たちの社会の富や権力が崩壊してほとんど無に帰し、軍事的にオスマンに立ち向かうことができなくなった時代に生きたことは、まさに彼らの不幸であった。そのような時代を経験したことのない者は、彼らをあまりにも厳しく裁くべきではないだろう。」と、釘を刺しています。私たちが歴史と向かい合った時、当事者ではないので、上から目線で好きなことを言いがちですが、当事者からすれば「我が身が大事」で必死な訳です。歴史に教訓を学ぶと言えば格好良いものの、実際には岡目八目でものを言っているだけなので、生身の人間によって織りなされる営為に対して、幾ばくかのリスペクトを持つことを忘れずにいたいと思います。