花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

年頭書感

2013-01-05 11:05:00 | Book
 三箇日、司馬遼太郎さんの「街道をゆく」シリーズの「モンゴル紀行」(朝日新聞社刊)を読みました。新年早々の清々しい気分の中、すっきりと清朗な物言いに耳を傾けてみたいと思ったからです。案に違わず、司馬さんの文章は明快で、該博な知識に裏打ちされた細かな観察が綴られていました。また、読んでいて何より心地よいのは、古今の人間の営みに対する親愛の情が伝わってくるところです。「少年のころ、夢想の霧の中でくるまっているほど楽しいことはない」とは、本書の書き出しですが、この「夢想の霧」とは濃密な好奇心を含んだものに外ならず、そして豊かな想像力を携えた好奇心が、人の営みを見る眼に優しさを与えているのだろうと思いました。