9月末に北海道へ行ってきました。ある火山に登るためです。その火山は登山の対象とはなっていませんが、今年の夏前に、火山を研究されている方に同行して一緒に登りませんかと誘われました。一生に一度あるかないかの機会なので、二つ返事で同行させて頂くことにしました。鍵の掛かったゲートから山に入り、しばらくは木や草の中の道を歩きます。今から30年ほど前、修学旅行でこの山の麓を訪れた人がいて、「その時は木など生えておらず、麓まで裸の赤茶けた山だった」と言っていました。もうさらに30年もすると、全体が緑の山となり、パッと見には火山だとは分からなくなるかもしれません。林を抜けると、山肌から白く蒸気が立ち上っているのが目に入りました。だんだん火山らしい雰囲気が身近に感じられるようになってきて、硫黄のにおいもしてきました。所々で立ち止まり、説明を受けました。山が煉瓦色となっているのは、溶岩の隆起で持ち上げられた地面の土が熱で焼けたためだそうです。溶岩の色かと思っていたのが、土が焼けた色であることを知りました。途中、丸い石が転がっている箇所がありましたが、これは元々川だった場所が隆起したところで、河床の石がそのまま残っているとのことでした。刺々しい感じの火山岩の中で、つるつした丸い石があるのはちょっと不思議な感じがします。崩落した大きな岩の塊を避けながら、山腹をぐるっと回り込んで登り口のちょうど反対側に来ると、水蒸気が盛んに立ち上る場所に出ました。地面に触れると手のひらにしっかりと伝わる熱に、「山が生きている」ことが実感出来ました。冬には暖を求めて野生動物が集まる場所でもあるそうです。このあたりからは頂上への道が見えてきます。頂上に近づくにつれ、海蘭(ウンラン)の可憐な花が目につき始めます。海岸の砂地に生える植物ですが、栄養の少ない砂地で鍛えられた生命力が火山地でも発揮され、新たに分布域を広げてきたのでしょう。この日、天気予報は思わしくなかったものの、何とか雨に降られずに天気が保ったといったところでした。そのため「展望抜群、眺望絶佳」とは言えませんでしたが、北海道の雄大な景色が360度に広がってました。登山隊一同で記念写真を撮って、地球の息遣いが未だ生々しい山の頂を後にしました。