花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

「羊の歌」より

2009-05-05 16:11:46 | Book
 今年に入ってずっと加藤周一さんの本を読んでいます。先ず最初に読んだのが岩波新書の「羊の歌」です。これは、羊年に生まれた加藤さんが生まれてから終戦を迎えるまでを振り返ったものです。その「羊の歌」の中に、加藤さんの精神の根っこにあるものがよく現れている箇所がありますので引用してみたいと思います。「私は小学生のときから、制服を好まず、七五調の唱歌に閉口していた。中学生の頃から、英雄崇拝ではなくて、偶像破壊を、豪傑笑いではなくて、諷刺家の諧謔を、好んでいた。朝から晩まで『日本人』を意識することはなかったし、またそうする必要を感じたこともなかった。制服を着て隊伍を組んで歩きながら、漠然とした雰囲気に陶酔するという考えは、私にはき気を催させたし、酒を飲んであぐらをかき、意味もないのに太い声で高笑いをしながら、『男でござる』だの『腹芸』だのということは、ばかばかしくて堪え難かった。」
 集団への組み込まれを嫌う加藤さんの精神、組み込まれを嫌うが故に集団との間に緊張関係が生まれ、それが加藤さんの批評精神を研ぎ澄ますことにつながったのだと思います。