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『インド』

『インド』

グローバル・サウスの超大国

人口大国若い人口構成、人材の宝庫

1人口増加の内幕

インドの人口増加率の推移

インドは14億1200万(国連の報告書による2022年時点の推計)の人口を抱える人口大国である。1947年の独立当時に4億5000万であった人口は99年に10億を超し、その後も増え続けて、現在は独立時の人口の3倍強になっている(図4-1)。

2023年1月には、インドの人口がすでに中国を上回って世界最多となった可能性が大きいと世界的に報道された。インドの国勢調査は1年以来行われていないため、正確な人口統計の把握は難しいが、中国政府が22年末の人口が前年末より56万人減って14億1175万人になったと発表したことから、インドの人口が推計ベースで中国を上回っていると見られたのである。

国連が2022年に発表した報告書の予測によると、2050年にはインドの人口が1億6800万、中国の人口が1億1700万と、かなり大きな差がつく。同年の世界の総人口は9億人と推測されており、世界人口の5・8人に1人がインド人、7・4人に1人が中国人ということになる。国連の予測の中位推計によると、インドの人口は50年代後半に16億人強のピークを迎え、その後減少に転じて、2100年頃に約15億人に落ち着く見通しである。

このように、現在もインドの人口は増加し続けているが、人口の増加率」はすでに減少に転じている。インド保健家族福祉省が2022年に公表した「全国家族健康調査(NFHS)」によると、インドの合計特殊出生率(1人の女性が生涯のうちに産む子供の数の平均)は2・0と、人口増減がない状態となる人口置換水準の2・16~2.0を下回った。NFHSによると、1992~98年、98~99年、2005~10年、15~16年、1~2年の合計特殊出生率は3・4、0と低下していたが、コロナ禍が一段落した20年に低下が落ち着いたと見られている。

人口動態は出生率、死亡率によって決まるが、一般に経済発展とともに死亡率の方が出生より先に低下し始めるため、人口増加率はある時期まで増加してその後減少に転じる。ンドの出生率(合計特殊出生率とは別で、その年に生まれた人数を全人口で割った1000人当たりの人数)は1960年に2・0、80年に360・2、2000年に2・4、20年に17・4と低下し続けており、1000人当たりの死亡率も1960年に2・2、80年に1・3、2000年に8・7、20年に7・3と低下している。出生率と死亡率の差が最も大きかったのは1980年代初頭で、この時期がインドの人口増加のピークであった。死亡率の低下とともに、平均寿命も60年4歳、80年34歳、2000年66歳、20年70歳と順調に伸び続けている。その結果、将来的にはインドでも高齢化の問題が生じることになると考えられるが、現状では問題視されていない。

「人口ボーナス期」と雇用問題

インドは若い国である。その人口の3人に1人は10歳から24歳の間にあり、人口ピラミッドは日本とは違う綺麗なピラミッド型である(図4-2)。現在のインドは所謂「人口ボーナス期」の真っ只中にあり、出生率の低下による生産年齢未満の若年人口比率低下とともに、従属人口(15歳未満の年少人口と65歳以上の老年人口の合計)の比率が減少して、15~64歳の生産年齢人口比率が上昇している。

国連によると、今後30年間に世界の労働市場に参加してくる年齢層の22%がインド人であると予測される。2003年の「BRICsレポート」をきっかけにインド経済が注目されるようになった理由の一つにも、この若い人口構成があった。

国連の推計によると、2021年から4年の20年間に、インドの人口の2人に1人が労働人口となり、インドの「人口ボーナス期」は2040年代前半から後半まで続くが、40年代後半には「人口オーナス期」に入る。これは、40年代後半になって、ようやく生産年齢人口の従属人口に対する比率が減少に転じることを意味する。

日本や韓国、台湾、中国といった東アジア諸国が「人口ボーナス期」に高い経済成長率を実現できたのは、生産年齢人口に対して十分な雇用創出が、製造業を中心になされたことが大きい、この「人口ボーナス期」を東アジア諸国と同じように有効に活かすことは、インドの経済発展にとってきわめて重要である。製造業はとりわけ雇用吸収力が大きいため、モディ首相が「メイクン・インディア」「自立したインド」と題して国内の製造業育成に力を入れているのも、そうした理由によるところが大きい。

人口抑制策

ンドの人口抑制政策は1950年代から導入されてきたが、その道のりは平坦でなかった。76年から77年、当時のインディラ・ガンディー首相と次男サンジャイ・ガンディーが強制的に避妊手術を推し進め、それまでの3倍に及ぶ800万人が避妊手術を受け、うち600万人の男性がバイブカット手術を受けた。数値目標達成のために当局にはノルマが課せられ、警官が貧しい人々を捕えて、強制的に避妊手術を受けさせることさえまかり通った。当然のことながら、これは国民の反感を買い、1977年の総選挙における与党の大敗にもつながった。その結果、直接的な人口抑制政策はインドの政治で触れられにくい、タブーに近い問題となった。

こうしたことから、インドでは人口を抑制するために避妊を推し進めるのではなく、女性の教育や保健政策といった間接的な効果にゆだねるやり方が一般的となった。成功例としては、1970年代のケララ州で、州政府が教育と公衆衛生に力を入れたことにより、出生率転換がいち早く始まった。ケララ州でとりわけ注目されるのは、女性の教育水準の高さで、女性の識字率9割は他の州を大きく上回る。

ケララ州のこの流れは、その後他の州にも波及していった。とりわけ南インドでは北インドに比べて教育水準が高く、農村部での医療の質も高いため、出生率を下げやすかった。これに比べて、北インドでは人口抑制が遅れがちであった。とりわけインド中部から東部にかけてのウッタル・ブラデシュ州やビハール州では深刻で、多くの女性は教育らしい教育を受けないまま、法律で婚姻が認められている18歳になる前に、親の決めた男性と結婚することが多かった。しかし、今世紀に入ると北インドでも合計特殊出生率が置換水準を下回る州がいくつか出てきており、徐々にではあるが、教育の普及が人口抑制につながりつつある。

女性教育の推進は、間接的に避妊具の使用比率上昇にも結びつく。インド政府の調べでは、避妊具を使う女性の比率は66%へと増加しており、この数字はバングラデシュやネパールやインドネシアにはまだ劣るものの、上昇傾向にある。女性の教育は児童婚の比率の減少にもつながり、それは合計特殊出生率の低下にも貢献している。

南インドで低い人口増加率

インドのように巨大な国では、地域間、都市農村間、宗教間で、それぞれ人口増加率に違いがある。地域間格差を見ると、先に述べたように、北部や東部で人口増加率が高く、南部では低い。東部ビハール州では合計特殊出生率が3・2と最も高く、ウタル・プラデシュカンド州、メガラヤ州、マニプール州でも出生率が高く、マディヤ・プラデシュ州、ラジャスタン州などがそれに続いている。それに比べて南部5州では出生率が一様に低く、それ以外にもマハラシュトラ州、西ベンガル州、パンジャブ州、ヒマエル・プラデシ州、シッキム州、ナガランド州、トリプラ州など教育水準の高い州で出生率が低い。都市と農村の人口増加率格差も大きく、インドでは農村で生まれた人々が若いうちに都市に移住して、都市化の進展につながっている。最新のNFHSによると、インド都市部の合計特殊出生率の平均は1.6となっており、この数字は日本の沖縄県や宮崎県の数字を下回る。ただし、NFHSのこの調査が行われた調査の時期は、コロナ禍の不況とインドのロックダウンの措置があったため、それがどの程度影響を及ぼしているかはもう少し詳しい調査の必要があろう。

近年政治問題化しているのは、宗教間の出生率格差である。イスラム教徒の出生率はヒンドゥー教徒と比べて相対的に高く、このことがヒンドゥー教徒を支持母体とする与党BJPにとって、懸念材料となっている。2021年には、国会で人口抑制に関する4つの法案を審議することが提案された。その将来的な狙いは、一家族につき子供2人までとすることだった。表向きは人口増加の圧力を減らすことが目的だが、実際には、将来を見据えてイスラム教徒の人口比率の上昇を食い止めようという意図が感じられた。また、ウッタル・プラデシュ州やアッサム州で、「3人以上の子供がいる人には公務員の就職や昇進、州議会選挙における被選挙権を制限する」とした法制化の動きもあった。

2人材の強み

インド工科大学(IIT)は国内でトップクラスの高等教育機関である。現在では、インド全土に23のキャンパスを持っている。その中でも、デリー、ボンベイ(ムンバイ)、マドラス(チェンナイ)、カンプール、カラグプールのIIT5校は設立の時期も古く、最も入学が難しいとされる。全世界に多数のIIT卒業生がおり、米シリコンバレーで設立された企業のうち6割は、IITの卒業生が創設者やトップレベルの役職についているとも言われる。IIT以外の超一流校には、インド経営大学院(IIM)、インド科学技術大学院(IISCバンガロール)、全インド医科大学(AIIMS)がある。このうちIITは学部教育が主体であるが、IIMやIISCは大学院大学である。経営大学院のIIMの学生も、大半は学部が理工系である。これらの大学は競争率が500倍を超す超難関である。日本のある予備校は、IITと東大理系の入試問題を比べて、「IITの方が難しい」と結論づけた。こういったインドの一流大学に入学することは、欧米の一流校に入ることよりも難しいと、インドではよく冗談半分に言われている。

IITのような超一流大学のトップクラスの学生は、学部を卒業すると同時に米国企業によって本社採用されることも少なくない。米国企業はこれらの一流校に青田買いに訪れ、米国本社に直接採用される卒業生の15万ドル(1950万円)を超す初任給が、毎年話題となっている。日本の大学では考えられないことである。インド政府はこれまで海外の大学のインドにおけるキャンパス設置を認可してこなかったが、最近イェール、スタンフォード、オックスフォードといった英米の大学がキャンパス設置を計画していると報道されている。

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