古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

日本国憲法(4)

2005-03-07 | 読書
 第42条です。
 『国会は2院、即ち衆議院と参議院とで構成される。』
 単純な条項ですが、面白い裏話があるそうです。
 何故、二院制になったのか?マッカーサーは、最初一院制で良いと思ったらしい。
 彼が、一院制で良いと考えた理由は簡単です。旧憲法下では、貴族院がありまし
た。華族制は廃止するのだから、貴族院はなくなる。だから、一院制になる。という
のです。
 司令部の提示した最初の草案は一院制だった。
 英文の原案は『The Diet shall consist of one House of erected
representatives with a menbership of not less than 300 nor more than 500.』
 
 日本側の松本蒸冶国務相が反論した。そのときのやり取りを、後に松本氏は語って
います。
 「これは全然議会制を知らない人の答えである。・・そこで自分は『二院制を各国
が取っている理由は、いわゆるチェックするためで、多数党が一時の考えでやったよ
うなことを考え直すことが必要なために2院制を取っている。これらはすべて議会制
度のことを論じている学者が言っているところである。」と、そのことだけを簡単に
述べた。ところが先方の四人は、顔を合わせて、なるほどと思ったらしい。はじめて
2院制というものはどういうわけのものであるのか・・・知ったという顔をしたの
で、私もただ驚いた。

 学者先生の言われるところは分からないことはないが、実際に参議院はそうした機
能を果たしているのだろうか?
 私には、マッカーサーの原案の方が、シンプルで且つ経費の節約にもなって良いの
では?と思います。
 現制度では、今回の参院選挙のように、自民党が第二党に遅れをとっても、内閣は
そのままで代わらない。民意の反映が遅くなるという欠点がある。
 もっとも、その方が政治が簡単にぶれないから良いんだ、という考えもあるかも?

曽野綾子さんの読書&スポーツ論

2005-03-07 | 読書
 喫茶店でモーニングサービスを喫しながら、週刊誌をパラパラめくっていたら、曽
野綾子さんのエッセイを見つけました。以下、その要点を紹介します。
【私はスポーツを二つに分けて考えている。自分で「するスポーツ」と「見るスポー
ツ」である。
1.「するスポーツ」を私はかなり評価している。私が泳げば「それでも前に進んで
いるつもり?」と笑われるし、私がジョギングすれば、「あなたがトレーナーを着て
歩いているのを見たわ」という人がいた。それほど私のジョギングは遅かったのであ
る。しかし、それによって私は確実に心肺を私なりに限界まで使い、体の錆びつきを
取ったのだから。】
2.しかし、「見るスポーツは、じっとTVの前に坐っているだけだから、別に健康
に寄与しない。
 もし、週3時間テレビで野球を見ていると、年間156時間、24時間で割ると、
6.5日、しかし睡眠時間や食事時間を考えると、一日の使える時間は12時間ぐら
いだから、年間13日である。】
 野球のTV観戦をやめると【確実に年に13日分余計に本が読める。】
3.【読書は時間当りの「知識」の「収量」の効率が実に良い。場所はどこでも出来
るし、お金もあまりかからない。】
 という内容でした。

 私は、1と3には全く大賛成です。しかし、2については、一寸クビを傾げまし
た。
 その理由は、読書は(そして勉強も)、本を読む時間があれば、その内容が身につ
くのか?が疑問だからです。食事に例えると、食物をとる時間だけで、食べものが身
になるわけではない。消化する時間も、消化したものをアミノ酸に分解し更に自分の
体のたんぱく質に再構成するなど、体の臓器の活動する時間が必要です。
 脳について言っても、本で読んだ内容を消化し記憶にしまう活動を、読書が終わ
り、ボンヤリTVを見ていたりしている時間にも、脳細胞が(本人が気付かなくて
も)活動しているのでは?と思うのです。ですから、一日使用可能時間が12時間な
ら、12時間すべて読書時間に当てたら、もっとも効率的に知識を身につけられるか
と言うと、それはない。通常の生活体験を積み重ねることで、読書で学んだことはこ
ういうことだったか、と脳細胞が納得することが多いのです。
 もっとも、曽野さんは、たいへん多忙な方で、読書の時間も取りにくいでしょうか
ら、TVを見る暇があれば、読書するとおっしゃることは当然だと思います。
 しかし、毎日数時間読書している人の場合には、TVの時間を読書にあてても、脳
細胞が受け付けないかも知れない。

経営者と倫理

2005-03-07 | 経済と世相
 今日は数学の話を一つ。
 数学の分野に「ゲーム理論」という分野があります。例えば「じゃんけん」という
ゲームがあります。この「じゃんけん」に必勝法があるかを考える。この場合の必勝
法とは、文字通り必ず相手に勝つという意味でなく(そういう方法があるなら双方そ
の方法を用いると双方が勝っちゃうことになります)、勝った回数から負けた回数を
引いた数字を最大にする方法如何?という意味です。
 答を言うと、「グー、チョキ、パーをランダム(無作為)に3分の1の確率で出
す。」
 要するに、こういうことを数学的に研究する分野なのです。
 このゲーム理論の分野において、フォン・ノイマンが証明したミニマックス定理が
あります。
 ゲームの参加者が、それぞれ最良の方法を追求する時、それぞれ、これが最良とい
う方法に到達する。これを、そのゲームの均衡点といいます。先ほどの「じゃんけ
ん」の例で言うと、それぞれが3分の1の確率でグー、チョキ、パーを出すところが
均衡点です。
 ミニマックス定理とは、かなり幅広いゲーム種において、「この均衡点がゲームに
存在する」という定理です。
 数学者、ジョン・ナッシュは「もっと広い範囲のゲームに対して均衡点が存在す
る」(経済用語ではナッシュ均衡点)ことを証明し、この定理が、経済学に広く導入
され、ナッシュは1994年、ノーベル経済学賞を受賞しました。
 同じ1994年、ナッシュと同時にノーベル経済学賞を受賞したジョン・ハル
シャーニ(ハンガリー人)という数学者がいます。
 ハルシャーニのゲーム理論とはどういうものか?ノイマンやナッシュが考えたの
は、「完全情報型ゲーム理論」、つまり、ゲームの参加者が、ゲームのルールも条件
も相手のねらいもすべて知っているゲームです。ハルシャーニが考えたのは「不完全
情報型ゲーム理論」。参加者は、すべてゲームのルールを理解していると限らない、
相手の狙いも分かっているとは限らない。
 このような場合にもナッシュ均衡が成立することを、彼は証明したのです。
 晩年の彼は、意思決定理論とのかかわりで人間の倫理的行動について研究をしまし
た。最終的に、彼は一つの倫理感に行き着きます。
 1995年、ハルシャーニはハンガリーで講演し、「結局、経済的な見地から見て
も『正直であることが最善の行動になる』」と語ったそうです。
 さて、企業の経営者は会社の中で各種の意思決定をしますが、その場合、問題の内
容についても、ライバルの状況についても、いわば不完全情報型ゲームを余儀なくさ
れています。こうした時、どういう考えで問題に対処すべきか?
 『正直であること』、つまり、『倫理的』であることが、最良の選択になるのでは
?このことを数学的に証明できたら、貴方は「ノーベル賞」を受賞できるかも?
 経営者の選抜には、何よりも『倫理』を重視すべきと思うのですが・・
 

粉飾国家

2005-03-07 | 読書

 慶大教授の金子勝さんの新著「粉飾国家」(講談社新書)という面白い題名の本を
読みました。
 金子さんは、日本は「粉飾国家」であると規定します。以下そのその意味を述べる
・・・

 株式会社制度は、「責任会計」という概念を基礎とする。
 株主は資金を会社に出資するとともに、会社の経営を経営者に委託する。経営者は
取締役会で経営の意思決定を行う。つまり、企業活動の舵取りを行って従業員ととも
に会社を運営し、利潤を追求する。日常業務においては、株主に代わって監査役が取
締役の職務執行を監督する。
 取締役の経営の成果としての会社の財政状態は、営業報告書や財務諸表で、株主に
開示される。
 株主総会で、経営者は株主に対し、業務の状況を説明し、その上で財務諸表・利益
処分案を示し、決算の承認を得る。承認されれば、経営者は「受託者責任」から解除
される。承認が得られない時、経営者は解任されるなどの処置がとられる。
 そのため、経営者が嘘の情報を作って、株主に虚偽の報告を行う危険性が生ずる。
それを防ぐために、株主総会に提出される財務諸表に対しては、外部監査として公認
会計士監査を受けることが法で定められている。つまり、株式会社では、財務諸表な
ど会計情報の承認を通じて、委託・受託の責任関係が解除される。企業会計におけ
る、こうした仕組みを、「責任会計」と呼ぶことにする。

 この「責任会計」の考え方を、年金問題に当てはめて考えてみよう。

 国民は所得の中から、年金保険料として一定の金額を国に支払っている。これは、
「国民」が国に対して年金保険料の運用管理を委託していることを示す。国は「国
民」から公的年金の運用管理を受託している。そこで、国は「国民」に対して、受託
責任を遂行したことを認めてもらうために、責任を以ってその運用管理にあたったと
いう報告を行わなければならない。そしてその報告内容は、客観的検証可能性が備
わっていなければならない。
 ところが、現実は委託者である「国民」に対して積極的に開示されるべき情報が、
受託者であるべき政府官庁の手の中だけに隠蔽されている。例えば年金を支払った
人々が、実際に個人としての年金受給予定額を知るのは58歳になってからであり、
それまでは一切知らされない。
 そういう実態を見る限り、そもそも年金システムの運用管理する官僚には、責任会
計という観念が完全に欠如している。まさに、粉飾決算がまかり通っている。

 嘗て、司馬遼太郎さんがこういう意味の言葉を言われた。
・・・日本の官僚というものは、明治以来、太政官であり続けている・・・

 年金制度をどうすれば良いのか?端よって言うと、著者は、過去債務(今までの積
立金、未積立金など)を切り離し、完全賦課方式の新年金制度を実施すべきと説く。
そして、「責任会計」に基づき運用できる年金制度とするためには、「社会保障基金
政府」を独立させるという荒療治を提案する。受託責任を果たさないなら、責任者を
解任できる政府にするという。
 正論ではあるが、世の中正論では動かない。権力者の利害得失で動く。行くところ
まで行かざるを得ない?と思いました。

日本国憲法(番外編)

2005-03-06 | 経済と世相
尾張名古屋のNOZUEです。
 10日の党首討論で、「イラク特措法における非戦闘地域の定義如何?」という岡
田さんの問いに、小泉さんは「自衛隊の活動する地域が、非戦闘地域だ。」と答えま
した。
 TVを見ていた私は唖然としました。負け惜しみの強い首相が、咄嗟に条文が思い
出せなくての発言だったのだろうと思います。しかしこれが総理の発言でしょうか!
この一言で、国会を解散してしかるべき(昔、総理の「バカヤロー」で、解散になっ
たこともあります)、何もいえない野党が情けない!
 首相は、イラク特措法など碌に読んでない?
 法律は、大臣や国会議員は自分達が守るものと考えていない。自分達の利益を守る
ために、国民に守らせるものと思っているのではないか?そうまで思ってしまいま
す。

 日本国憲法についても全く同じで、憲法は国民に守らせるものと考えて、改憲を論
じている政治家が多いのでは?
 私は、国民と国の統治者との間の”契約書”だと、思うのです。この契約内容を統
治者が守るならば、彼らの統治権を認めて、国民はその統治に服する。と言うのが憲
法だと思うのです。
 憲法は、決して、国民の生き方や生活を規律するルールではないのです。
【憲法とは国民を縛るものではなく、国家を縛る基本法である。憲法は統治権力を制
限する規範】というのが憲法学の通理と聞いています。 
 現憲法の成立の経緯をあげつらい、米国に押し付けられた憲法でなく、日本人の作
成した憲法にすべきだと言う政治家がいます。
 日本の国会で成立したのですから、今ごろになって、米国に押し付けられたと言う
のは卑怯です。それに、所詮、契約書です。法的に整った契約書を素人が作るのは難
しいので、代書屋に頼むことは良くあること。その代書屋がアメリカ人だったという
だけです。22歳の女性の代書屋もいたそうですが・・・
 改憲論を論議する前に、憲法とはどういうものか。憲法のコンセプト、定義を論じ
なくてはいけない。 「憲法の定義?国民の守る法律だ!」小泉さんはそう言うで
しょうか。

 ものごとを論理的に考えるためには、そこで使われる言葉の定義が大事です。定義
は、コンセプトの共有を可能にするからです。
 ですから、言葉の定義をイイカゲンにする政治家を信頼することは出来ない。
 今回は番外編ですが、少し乱暴な議論になったでしょうか!

BSEの謎 3

2005-03-05 | 読書
BSE牛の潜伏期間は平均5年だそうです。平均ですから,もっと若くて発病した
例もあり、日本で発見されたのは2歳の牛でした。
 潜伏期間とは何を意味するのか?通常の病気では、病原菌やウィルスが体内に入っ
ても、その数があるレベルまで増えないと発病しない。この数の増加期間が潜伏期間
です。
 病原菌はDNAを持っていて、このDNAが自らのコピーを繰り返して増殖する。
BSEの場合、DNAのないたんぱく質がどうして増えるのか?
 プリオン蛋白は、もともと身体の中にあるのです。病気を起こすのは特殊なプリオ
ン(異常プリオンと名付ける)で、この異常プリオンが正常プリオンに接触すると,
正常プリオンが異常プリオンに変化する。これによって異常プリオンが増えるのだそ
うです。
 実際、マウスを使った実験で、遺伝子がプリオンを作る機能を欠くノックアウトマ
ウス(ある機能を欠損した遺伝子を持つマウス)に、異常プリオンを摂取させても発
病しないことが確認されている。
 で、脳の中の異常プリオンがある濃度に達すると,脳海綿症状になる。いわゆる狂
牛病です。

 といっても、このプリオン犯人説に疑問を呈する学者がいないわけではない。病原
菌が病原菌であると確認されるためには、コッホの3条件と言われるものがありま
す。
1.病気にかかった個体からその病原体が必ず発見される。
2.その病原体が分離精製される。
3.それを他の個体に接種した時、同じ病気が起こる。
 プリオン説について1は証明されました。2が問題。どんどん精製していくと、最
後の生成物は感染性を失う(3がなくなる)というのです。精製する前なら、3が成
立する。
 BSEの謎は完全に解けたわけではないのだ!
 この意味で、プルシナー(1982年狂牛病のプリオン原因説を発表)の1997
年ノーベル賞受賞は、時期尚早でなかったか?という学者もいるそうです。1996
年は英国が肉骨粉の海外輸出を禁止した年で、欧州は狂牛病で大騒ぎ!ノーベル賞も
時の話題に影響されるのかも?
 ところで,牛肉輸入の日米間協議。牛の月齢(20月?)によって全頭検査しない、という協議
が進んでいるようですが、若い牛は潜伏期間が進行中、つまり、プリオンの濃度が低
いため検査に引っかからないというだけで、決して若ければ安全というわけではな
い。検査技術が上がれば、検査で見つけられるようになるのかもしれない。勿論プリ
オンがあっても濃度が低ければ安全ということがあるかも知れないが、それは実証さ
れていない。
 政府は、全頭検査を撤回するのなら、その理由を科学的に説明する責任があるで
しょう。
 米国牛の牛丼はまだ当分食べられません。

これで終わり。長々ややこしい話を続けて、失礼しました。

景気とは何だろうか?

2005-03-05 | 経済と世相


 岩波新書で『景気とは何だろうか』(山谷悠紀夫神戸大学教授著)という本が出た
ので、早速買ってきた。日頃,政治家や学者の論を聞いたり読んだりしていて、いつ
もこの方は「景気」をどう定義しているのだろうと、疑問に感じているので、エコノ
ミストの正式な「景気の定義」を知りたかったのです。
 定義については、内閣府の作成する「景気動向指数」、日銀の実施する全国企業短
期経済観測調査(短観)、それに内閣府作成の「国民経済計算」(いわゆるGDP統
計)の三つで定めている「景気」の説明が詳細に述べられていた。
 それはそれとして,最近の日本経済に関する著者の観方が面白かった。

【日本経済は全体として見ると、2002年を底として、2003年から2004年
と景気は回復に向かってきた。そのことは統計で充分確認できる。ただし、その中身
を見ると、大企業、とりわけ製造業はたしかに相当程度良くなっている。しかし、中
小企業にはその良さがほとんど波及していない。とりわけ非製造業にあってはそうで
ある。そして、家計部門にはまったくといっていいほど景気の回復は生じていない。
むしろ状況はなお悪化を続けている。―――2005年初の日本の景気についていえ
ば、こういうふうにまとめられる。
 こうした部門間の大きなバラツキは、過去の景気回復期にもあったことなのか。答
は否、である。景気回復初期にはままそうした景気回復のまだら現象も生じていた。
経済の各部門がいっせいに回復に向けて動き出す、ということは通常は起りえない。
どこかの部門が先行して良くなる、残りの部門は取り残される、景気回復初期にそう
した現象が起ることはむしろ当然である。
 しかし、今回の景気回復は2002年に始まった、とされている。既に3年近くが
経とうとしている。にもかかわらず、中小企業、家計という、数の上では圧倒的多数
を占める部分が回復から取り残されている――こうしたことは戦後初めての経験、と
いっていい。】
  日本経済の構造変化が起っているのだ。
 ここのところが面白いのだが、著者の指摘を要約すると、一国経済を考える時、大
事なことは、国内各部門,各階層に(平たく言えば)お金がまわってゆくシステムが機
能すること。そのシステムを小泉改革は壊してしまった。だから、お金が回るところ
は回るが、回らないところはまったく回らない(この意味で日本の経済構造が変わっ
た)。そのため、統計で「景気」の指数を算出しても、実体は、凄くいいところは極
端に良く、悪いところはまったく悪いので、平均値が示す実体は存在しない。もはや
「景気」の数字で政策の運営を考えるのでなく,別の数字,例えば失業率・雇用者所得
・年間總労働時間などを政策運営の指針とした方が良い。
 「不良債権処理」は、景気の回復には逆効果であった。03,04年に景気がやや
好転したのは、海外景気の影響で、「不良債権処理」など小泉内閣の政策がなければ
もっと好景気になったと、著者はデータを示して説明し、小泉さんは意図したのかど
うか分からないが、既に、経済構造は変革されてしまった、と述べている。

【景気の構造変化が起っているとして、それはいつ頃からか、という問題である。・
・・
構造変化は1997,1998年頃から、というのが用意している答である。】とい
うのだが・・・


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BSEの謎 2

2005-03-04 | 読書
以上の復習から、動物の身体の中のたんぱく質は、自ら
のDNAの設計によるたんぱく質だけが存在し,そうでないたんぱく質が存在したら
異常であることが分かる。
 そうした異常を生じないため、身体はいくつかの防壁を設けている。まず、胃や腸
の壁は目の細かいフィルタになっていて、分子量の小さいアミノ酸は通過できるが、
分子量の大きいたんぱく質は通過できない。次に,もし体内に入っても、血液中に入
ると、免疫細胞が発見して処理してしまう(拒絶反応)。特に、脳に入る血管には、
特別なフィルターがあって、危険な異物が入らないようにしている。
 BSEというのは、プリオンなるたんぱく質が脳に入りこんで脳細胞を破壊する。
脳がすかすかになって、空隙ができる病気(海綿状脳症)で、最初は羊に見られるスクレーピーとい
う病気でしたが、この病気にかかった羊から作った肉骨粉を牛に食べさせたことから
広がった。
 ヤコブ病という病気があります。これも脳がすかすかになる病気ですが、脳の外科
手術で、ヒト乾燥硬膜「ライオヂュラ」(ドイツの医薬品メーカー、B.ブラウン社
の製品)を使ったことで感染が起こりました。この場合,最初から防壁をパスして、
脳に病原体が入ったと思われます。

 プリオンはどうやって牛の身体の防壁を乗り越え牛の脳にまで入ったか?
 動物の身体には,免疫という機能があり、免疫には病気に対する抗体が必要です。
抗体は体内で作られますが,生まれたばかりの時には授乳などによって母親から貰
う。乳を飲んでも、前述したように、胃や腸の壁は抗体(たんぱく質)を通さない、
分解されてしまうと、母親からの抗体は子供の体内に入らないことになります。とこ
ろが、うまく出来ていて、誕生後しばらくの期間、胃や腸の壁のフィルターの目が粗
い期間があって、抗体蛋白が体内に入ることが出来るというのです。うまく出来てる
んですが,この期間は、抗体蛋白以外の、入っては困るものが入りうる危険な期間な
のです。
 で、三番目の謎ですが、英国では、生まれたばかりの牛に乳を飲ませず、水に溶か
した肉骨粉を飲ませていたのです。他の国では、肉骨粉は飼料として与えたが、乳
の代わりに肉骨粉を与えることはしなかった。英国の牛の新生牛は母乳を取り上げら
れ、代わりに奇妙な餌を与えられ、BSEが発生したら,集団殺害された。牛にとっ
ては、ナチス以上の蛮行だった。
 次に二番目の謎。前述したように、動物の体内には、異常なたんぱく質が入らない
ように、いくつもの防壁があるのですが、この防壁での検査の眼を潜り抜けやすいの
は,同じ動物のたんぱく質なのです。別の動物の蛋白はすぐ判断できるが、同種の動
物のたんぱく質は、自分のたんぱく質との違いが微妙ですから、見逃す危険性があり
ます。これが、共食いのケースで、この病気の発生率が高い理由です。
 4番目の謎です。実はBSEは潜伏期間の長い病気なのです。だから、新生児の
時、感染したとしても、発病するのは成牛になってから。若い牛を検査しても、今の検査制度ではBS
Eは発見できない。だから、現状では検査をしても意味がない。とは言えるが、それは若い牛
は安全だと言うことではない?と危惧するのです。(続く)

BSEの謎 1

2005-03-03 | 読書
「もう牛を食べても安全か」(福岡伸一著、文春新書)
を読みました。新書ですから、目方は軽書ですが、内容はずいぶん重い本でした。
 是非内容を紹介したいと思いましたが、そのままの内容紹介ではメール数十通になって
しまいますので、ポイントのみの要約、題して「BSEの謎」。勿論、誤りがあれば
著者でなく、私の責任です。

 以下、狂牛病に関する謎です。
1.狂牛病の病原体は、プリオンと称するたんぱく質だと言われます。細菌やウィル
スが身体に入って発病と言うなら分かりますが、たんぱく質が何故病気を引き起こす
か?
2.共食いは、狂牛病とどう関係するのか?
 ニュウギニヤ高地民であるフォア族の間にクールーという謎の病気があったが、狂
牛病は、このクールーという病気と同じ病気であった。この民族の間にはカンニバリ
ズム(食人儀式)があった。一方、牛はもともと草食動物で、牛を食べることはあり
えなかったが,肉骨粉を餌に与えるようになって、狂牛病が発生した。肉骨粉は牛の
死体から作る。つまり牛に共食いを強いた。人も牛も共食いが、この病気に関係した
らしい。
3.最初に狂牛病が発生したのは英国であった。何故,英国で狂牛病は発生したか?
4.日米間で牛肉輸入問題の協議が続いているが、「全頭検査」を主張する日本に対
して、米国が「若い牛には狂牛病は発生していない。検査で発見できない。だから生
後何ヶ月の牛は全数検査の必要がない!」と主張しているらしい。
 若い牛は本当にBSEにならないのか?

 これらの謎に迫るには、以下に述べる生物学の基礎事項を復習しておく必要があり
ます。
1.たんぱく質は、アミノ酸が連結して出来ています。そして、地球上の全生物のた
んぱく質は、20種類のアミノ酸から出来ていることが分かっています。このたんぱ
く質の中のアミノ酸の並び方を指示しているのが、遺伝子DNAです。
2.食べ物の中のたんぱく質は、胃や腸でアミノ酸に分解されてから体内に吸収
され,遺伝子の指示に従い、その生きもの固有のたんぱく質につくり上げられます。
 牛肉を食べた場合、牛肉のたんぱく質が、そのまま人間のたんぱく質になること
は、通常ありえません。そのまま人間の体内に入ると,免疫細胞は異物と判断してこ
れを攻撃してしまいます。

 ついでながら、食べ物のたんぱく質が、人間のそれと同様、同じ20種類のアミノ
酸から構成されるから,食べ物を食べると、それが我々の血となり肉となることが可
能になります。(続く) 

続・12年前の警告

2005-03-02 | 経済と世相
 「金融のビッグバン」の目的は何であったか?どうも、欧米の投資家が、日本の株や会社を買い易くするための会計制度の変更であった!と思えてならない。
 何故時価会計が必要か?含み益や含み損が有ったのでは、海外の投資家は、その会
社の財務諸表を見ても,いくらの投資価値があるか分からない。だから、会社の所有
する株や土地は時価で財務諸表に出して貰わないと、彼らの投資に不都合である。
 連結決算も同様である。会社の利益あるいは損失が子会社に移されていて、それら
の子会社の株が未上場で、財務諸表が読めないとなると、海外の投資家は、こわくて
日本株は買えないのだ。
 キャッシュフロー計算書の公表もそうである。キャッシュフロー計算書は、企業の
倒産の危険を判断するに最適のリストです。
 実際、金融ビッグバン以降、恩恵に浴しているのは一貫して外資企業である。破綻
会社の買い手は概ね外資系投資ファンド。破綻処理の仲介役のファイナンシャルアド
バイザーは、おおむね欧米の銀行。民営化株の売り出しも外国証券が幹事役など。
 だから、小泉さんが民営化というと、特殊法人や郵便局を株式会社にして、その株
を外国人に持たせることのように思えてならない。株だけでなく,我々が郵便局に預
けた金も、小泉さんは「民間に資金を供給する」といっているが、民間は民間でも、
日本の民間ではないように思える。
 そもそも、「金融のグローバル化」をアメリカが強硬に要求した背景は、「ものづ
くり」で、米国の会社が日本に太刀打ち出来なくなったので,日本の製造会社が儲け
た分は、金融で取り返そうという狙いであったと、私には思える。アメリカとして
も、世界一の覇権国であり続けるには、それなりの資金が必要であり、製造業で稼げ
なければ他で稼ぐことを考えざるを得ない。
 でも、会社は投資家だけのものではないのだ。会社に関係する従業員,経営者,株
主、取引業者、消費者すべてにとっての会社でなければならない。だから、会社の会
計は、投資家だけに都合の良い会計制度では困る。草柳さんの述べたように、社会の
あり方にまで影響するのだ。
 にも拘わらず,この国際会計基準への変更が、国会の議決を全く経ずになされてい
るのだ。
 スクーリングの中で,私は教授に質問した。「この会計制度の変更は、国会の議決
も経ずに、誰が決定したのですか?」
 先生は答えました。「まったく深刻な問題です。」
 会計制度を審議し決めているのは、ASBJという民間組織だそうである。
 本来、ビッグバンは1300兆円の資金を有する日本国民に、多様な投資手段を提
供し、日本国民が豊かになることだったと思います。
 一体日本の国のリーダーは、「国益」を理解しているのでしょうか?