TPPについて先日送信しましたが、23日の新聞で、松原東大教授が、「理解できないTPP参加論」なる寄稿をしていました。
TPP参加論者は、要するに、参加しないと日本は輸出が出来なくなる、と言っているようですが、輸出は、関税(TPP)よりも為替相場がどうなるかを考えないといけない。私も松原教授に、まったく同感です。
理解できない「TPP参加論」
【筆者には(TPP)賛成論の論旨がほとんど理解できない。
例えば、「アジヤの高い成長力を取り込む」という言い方がある。だが、取り込むとは何のことか。アメリカがこの先輸出先として期待できないから、アジヤへ輸出したいということか。
けれども仮にアジヤへの輸出先が拡大したとしよう。そうすればその国の通貨が入ってくる、そして輸入はしなかったとしよう。そこで起きるのは、その通貨が中長期的に円に対して安くなること、つまり円高だ。円高になればその国には輸出できなくなる。
実際、これまで日本はアメリカに対して輸出するほど輸入せず、それゆえドルがあまることになり、円高圧力が強まった。仕方なくドルを米国債他に投資する(米国債の輸入)政策を採り、積みあがった対外債権は250兆円にも上がった。世界一の金持ち国である。
けれどもこの米国債は、果たして富といえるのか?売れば円高を誘発してしまうから、持っているだけである。しかもリーマン・ショックを経てアメリカは金利を下げたため、金利目的ではこれ以上、米国債を購入する理由も薄れてしまった。・・・
(TPPで)一部の産業は価格競争に耐えられなくなり、アメリカの安い製品を輸入することになろう。
関税で守られてきた産業の競争力が低いから仕方がないのだ、という見方もある。・・・
日本人の賃金は、昨年からの円高でドル建てでは40%とかの水準で高騰している。外国人が日本で働きたいというのはもっともであり、日本の製造業が海外に工場移転するのもまた然り。輸入を拡大しない限りその傾向には歯止めがかからない。
ある産業が輸出攻勢をかければ円高になり別の産業は競争力を削がれるというのはともに「円」という通過を用いて貿易を決済するからこそ生ずる現象なのだ。だからこそハイエクは、自由貿易というなら通貨も自由化し、複数を国内で流通させるべきだとした。過激な策だが、各産業が別の通貨を使えば上記の問題はなくなる。
もしくは、TPP加盟国で共通通貨を使うという手もある。「ユーロ」に相当する貨幣を創出する。・・・その場合、わが国は関税自主権どころか、金融政策の自主権を失うことになる。
いずれにせよ通貨にふれないでTPPを論じても的を外すことになる。】
(松原隆一郎東大教授、11月23日中日朝刊)
次に、11月25日の中日夕刊・大波小波欄に「原発推進の舞台裏」なる記事がありました。
以前送信した「原発と権力 1~3」と読み合わせていただけると、とても興味深い記事です。
【原発事故半年を機に特集した米週刊誌『ニューヨーカー』(10月17日号)の「フクシマからの手紙 放射性降下物」を読むと、(原子力関係)予算の大盤振る舞いに合点がいく。日本人の核アレルギーを取り除くため、米政府が日本に原発推進をたきつけていたというのである。
東西冷戦の激化の1955年代、アイゼンハワー大統領は核への反発から日本が米国離れするのでは と思い悩んだ。広島、長崎の悲劇に加えて、54年3月、マグロ漁船「第5福竜丸」が水爆実験による死の灰を浴び、反米世論が盛り上がった時である。
大統領は国家安全保障会議で「日本からは鼻持ちならない戦争屋と見られている」とぐちった。国務長官代理は「日本人は核兵器に病的に敏感だ。原発をつくらせて原子力時代に誘い込むのがベストの対応です」と応じたと、秘密メモを基に報じている。
これを受けて、大統領は国連総会で原子力の平和利用を宣言。日本に対し、政界は中曽根康弘、民間は読売新聞社主・正力松太郎に狙いを定め、CIAも加わって原発の技術、資金援助を進めたという。国際政治の世界は油断も隙もない。】
TPP参加論者は、要するに、参加しないと日本は輸出が出来なくなる、と言っているようですが、輸出は、関税(TPP)よりも為替相場がどうなるかを考えないといけない。私も松原教授に、まったく同感です。
理解できない「TPP参加論」
【筆者には(TPP)賛成論の論旨がほとんど理解できない。
例えば、「アジヤの高い成長力を取り込む」という言い方がある。だが、取り込むとは何のことか。アメリカがこの先輸出先として期待できないから、アジヤへ輸出したいということか。
けれども仮にアジヤへの輸出先が拡大したとしよう。そうすればその国の通貨が入ってくる、そして輸入はしなかったとしよう。そこで起きるのは、その通貨が中長期的に円に対して安くなること、つまり円高だ。円高になればその国には輸出できなくなる。
実際、これまで日本はアメリカに対して輸出するほど輸入せず、それゆえドルがあまることになり、円高圧力が強まった。仕方なくドルを米国債他に投資する(米国債の輸入)政策を採り、積みあがった対外債権は250兆円にも上がった。世界一の金持ち国である。
けれどもこの米国債は、果たして富といえるのか?売れば円高を誘発してしまうから、持っているだけである。しかもリーマン・ショックを経てアメリカは金利を下げたため、金利目的ではこれ以上、米国債を購入する理由も薄れてしまった。・・・
(TPPで)一部の産業は価格競争に耐えられなくなり、アメリカの安い製品を輸入することになろう。
関税で守られてきた産業の競争力が低いから仕方がないのだ、という見方もある。・・・
日本人の賃金は、昨年からの円高でドル建てでは40%とかの水準で高騰している。外国人が日本で働きたいというのはもっともであり、日本の製造業が海外に工場移転するのもまた然り。輸入を拡大しない限りその傾向には歯止めがかからない。
ある産業が輸出攻勢をかければ円高になり別の産業は競争力を削がれるというのはともに「円」という通過を用いて貿易を決済するからこそ生ずる現象なのだ。だからこそハイエクは、自由貿易というなら通貨も自由化し、複数を国内で流通させるべきだとした。過激な策だが、各産業が別の通貨を使えば上記の問題はなくなる。
もしくは、TPP加盟国で共通通貨を使うという手もある。「ユーロ」に相当する貨幣を創出する。・・・その場合、わが国は関税自主権どころか、金融政策の自主権を失うことになる。
いずれにせよ通貨にふれないでTPPを論じても的を外すことになる。】
(松原隆一郎東大教授、11月23日中日朝刊)
次に、11月25日の中日夕刊・大波小波欄に「原発推進の舞台裏」なる記事がありました。
以前送信した「原発と権力 1~3」と読み合わせていただけると、とても興味深い記事です。
【原発事故半年を機に特集した米週刊誌『ニューヨーカー』(10月17日号)の「フクシマからの手紙 放射性降下物」を読むと、(原子力関係)予算の大盤振る舞いに合点がいく。日本人の核アレルギーを取り除くため、米政府が日本に原発推進をたきつけていたというのである。
東西冷戦の激化の1955年代、アイゼンハワー大統領は核への反発から日本が米国離れするのでは と思い悩んだ。広島、長崎の悲劇に加えて、54年3月、マグロ漁船「第5福竜丸」が水爆実験による死の灰を浴び、反米世論が盛り上がった時である。
大統領は国家安全保障会議で「日本からは鼻持ちならない戦争屋と見られている」とぐちった。国務長官代理は「日本人は核兵器に病的に敏感だ。原発をつくらせて原子力時代に誘い込むのがベストの対応です」と応じたと、秘密メモを基に報じている。
これを受けて、大統領は国連総会で原子力の平和利用を宣言。日本に対し、政界は中曽根康弘、民間は読売新聞社主・正力松太郎に狙いを定め、CIAも加わって原発の技術、資金援助を進めたという。国際政治の世界は油断も隙もない。】