古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

続・12年前の警告

2005-03-02 | 経済と世相
 「金融のビッグバン」の目的は何であったか?どうも、欧米の投資家が、日本の株や会社を買い易くするための会計制度の変更であった!と思えてならない。
 何故時価会計が必要か?含み益や含み損が有ったのでは、海外の投資家は、その会
社の財務諸表を見ても,いくらの投資価値があるか分からない。だから、会社の所有
する株や土地は時価で財務諸表に出して貰わないと、彼らの投資に不都合である。
 連結決算も同様である。会社の利益あるいは損失が子会社に移されていて、それら
の子会社の株が未上場で、財務諸表が読めないとなると、海外の投資家は、こわくて
日本株は買えないのだ。
 キャッシュフロー計算書の公表もそうである。キャッシュフロー計算書は、企業の
倒産の危険を判断するに最適のリストです。
 実際、金融ビッグバン以降、恩恵に浴しているのは一貫して外資企業である。破綻
会社の買い手は概ね外資系投資ファンド。破綻処理の仲介役のファイナンシャルアド
バイザーは、おおむね欧米の銀行。民営化株の売り出しも外国証券が幹事役など。
 だから、小泉さんが民営化というと、特殊法人や郵便局を株式会社にして、その株
を外国人に持たせることのように思えてならない。株だけでなく,我々が郵便局に預
けた金も、小泉さんは「民間に資金を供給する」といっているが、民間は民間でも、
日本の民間ではないように思える。
 そもそも、「金融のグローバル化」をアメリカが強硬に要求した背景は、「ものづ
くり」で、米国の会社が日本に太刀打ち出来なくなったので,日本の製造会社が儲け
た分は、金融で取り返そうという狙いであったと、私には思える。アメリカとして
も、世界一の覇権国であり続けるには、それなりの資金が必要であり、製造業で稼げ
なければ他で稼ぐことを考えざるを得ない。
 でも、会社は投資家だけのものではないのだ。会社に関係する従業員,経営者,株
主、取引業者、消費者すべてにとっての会社でなければならない。だから、会社の会
計は、投資家だけに都合の良い会計制度では困る。草柳さんの述べたように、社会の
あり方にまで影響するのだ。
 にも拘わらず,この国際会計基準への変更が、国会の議決を全く経ずになされてい
るのだ。
 スクーリングの中で,私は教授に質問した。「この会計制度の変更は、国会の議決
も経ずに、誰が決定したのですか?」
 先生は答えました。「まったく深刻な問題です。」
 会計制度を審議し決めているのは、ASBJという民間組織だそうである。
 本来、ビッグバンは1300兆円の資金を有する日本国民に、多様な投資手段を提
供し、日本国民が豊かになることだったと思います。
 一体日本の国のリーダーは、「国益」を理解しているのでしょうか?


12年前の警告

2005-03-02 | 経済と世相
 12月4日,5日は放送大学の面接授業に出席しました。『現代会計のフレームワーク』
という講義で,講師は名大大学院の佐藤教授です。
 冒頭「1992年、評論家の故草柳大蔵氏が、山陽新聞の山陽時評に寄稿をしてい
る」と教授は新聞スクラップのコピーを配布しました。要点を写しますと,
【・・・1995年からの実施が予想されているIAS(国際会計基準)である。こ
の会計基準の特徴は、連結で時価主義の色彩が濃いということである。これまで日本
の企業が採用してきた会計法は簿価(原価)主義である。株式でも土地でも取得時の
価格で帳簿に記載されるが、年月が経ってそれらの資産が値上がりしても、資産の時
価と簿価との差額(含み益)は会計上も税務上も存在しないことになっている。
 この「含み益」はすばらしい知恵の所産であって、不景気になると、企業は含み益
を吐き出して系列企業や従業員とその家族を守り、景気が良くなると、含み益を担保
にして資金調達を行い、設備投資、技術革新、市場開拓をを可能にした。つまり、含
み益は攻撃にも防御にも利用できたわけで,『これぞ日本的経営の秘密兵器』(立花
証券社長福園氏)とはいみじくも言ったものである。
 ところが、IASに移行すると、株や土地のような資産は時価で計算され、利益に
組み込まれて、課税対象になる。その結果,経常利益は膨張し、株式配当も大きくふ
くらみ、労働分配率は増大し、最終的には税額がハネ上がる。言うなれば、4半期あ
るいは半期ごとに上げた利益をみんなで使い果たすような格好になる。その結果、内
部留保は急減し、設備投資には慎重になり従業員の教育にもカネをかけていられなく
なる。
 ・・・・
 もちろん鉄鋼業、紙パルプ、重化学工業などの装置産業は反対である。『毎日の株
式相場を気にして、モノづくりができるものか』とか、『売る意志の無い株や土地を
価格的に表示するというのはいかがなものか』とか、正論が反射(ママ)されつつあ
るし、大蔵省も徹底抗戦の構えに出ている。が、IASに反対しているのはG7のう
ち日本だけ・・・
 私はIASは、”第三の開国”だと思う。第一は明治維新、第二は太平洋戦争の敗
戦時である。明治維新の時は英国が、敗戦時には米国が覇権国だった。つまり、日本
は2回続けて”勝ち馬”に乗ったのである。しかし、95年のIASはどうヒイキ目
に見ても”勝ち馬”ではない。しかし、乗らなければレースからハズされるおそれが
ある。
 もっと厄介なのは、不景気になった場合、従来のように『含み資産』で従業員を抱
えておくことができないから、レイ・オフが慣行化することだ。そうなれば企業内組
合の存在価値が問われる。・・・企業間の”株の持ち合い”も崩れて証券市場は”株
の海”にならないか。・・・】(’92/11/1)
 文中1995年とあるのは、実際には1998年でした。また、【大蔵省が徹底抗
戦】したかは疑わしいのですが、大局観はまったく正しい。今から12年前に、世に
これだけの警告をした草柳氏の先見性に、敬意を表さざるを得ない。(続) 


大増税の背景

2005-03-02 | 経済と世相
 大増税始まると、最近の新聞は賑やかです。
 確かに,日本の国家財政は破局状態です。国と地方合わせて700兆円強の借金があるらしい。700兆円と言うことは、仮に年6%の金利(金利が正常化されたとして)を払うなら、年42兆円の利払いになり、これは国の税収の略100%になる。
つまり、収入の全部が利払いで消えることになる。だから、大増税が必要なことは明らかだが(このことについては以前のメールで度々論じている)、問題に思うのは、何故そういう事態になったのか、分析している新聞が見当たらないことです。
 例えば年収700万円の場合,来年,再来年どれだけ負担が増えるのか、というような記事だけ取り上げて、何故そんなに借金が増えたのか?一体そんなに膨大な借金をして、その金をどこに使ったのか?新聞はほとんど報道していない!
 借金が増えても、その金で有益な資産を購入しているなら、さしあたっては良い。
その資産を売れば借金は返せるのだから。ところが財務省は、借金がこんなにあるという話はしても、どれだけ資産が有るのか全く報告しない!若し、資産が増えず借金だけ増やしたのなら,日本国には財務管理がない!と言わねばならぬ。某紙が「日本の財務大臣は,スイスの海軍大臣か?」と皮肉っていた。
 公共投資(景気対策)にいくら使ったのか?某人気TV番組で,エコノミストの紺谷典子さんが「公共投資の分は60兆円に過ぎない」と言っていた。真偽の程は定かでないが、財務省は真実を国民に報告する義務があるのではないか!
 昨年の秋から今年の3月にかけて、財務省と日銀がドルを買いまくった。32兆円も買ったそうである。つまり年収の80%相当を半年で相場につぎ込んだのである。
元手は勿論国債発行である。当時より円高になっているから含み損は相当出ていると思うが、売却はしていないから、それも国債残高に含まれている。つまり、財務省の言う国の借金になっている。
 イラク出兵に使った金も700兆円の内だろう。
 更に,金融に使った巨額の資金もあやしい。長銀につぎ込んで外資に売り渡したのも、国の損失額は巨額,それも国債で賄っているから国の借金だ。
 (年金は借金の原因でないだろう。積立不足はあるにしても現時点では、集める金の法が支払う金より多いと思う。)
 これだけ国の借金を増やしても、なんとかやっていられるのは、金利が安いから
で、金利を正常化したら、政府が一番先に破綻する。だから、金利を上げないよう
に、政府はメガバンクを実質国有化して、金利を国定金利にして低金利を維持しようとしている・・・と、私には思える。
 今,私が心配しているのは、こんなメチャクチャな財務運営の実体を、海外の投機家が見抜いて、円を売り浴びせないかだ。資源を海外から輸入している日本は、円安は絶対のピンチになるが、幸運にも今は円高である。誠に幸運と言うべきだと思います。
 いずれにしても、真実を明らかにしようとしない新聞に憤りさえ感じます。