古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

日本社会は階層化するか?

2005-03-28 | 経済と世相
 榊原英資さん(慶応大学教授・元大蔵省財務官)の『デフレ生活革命』なる本を通
読したら、こんな個所がありました。
 【森永は、日本経済の「非社会主義化」、あるいは、彼の言うアメリカ型階層社会
の実現とともに、一般的日本人の年収が今の700万円強から300~400万円に
下がることを前提に、ヨーロッパ型のゆとりある生活をエンジョイする方向にものの
考え方を変えていくべきだと主張します。(森永卓郎著「年収300万円時代を生き
抜く経済学」)】
 森永さんは、この階層社会化は小泉内閣の構造改革によるものだ、と主張するので
すが、榊原さんはこんな説明をしています。(要旨のみ)
【現在は、構造的インフレの時代から構造的デフレの時代へ,何百年に一回の歴史の
大転換期である。これからは、個人にとっては、借金をして住宅を購入することは、
経済的には得策でない。企業も同様に、資金を設備に固定することは得策でなくな
る。人間にも資金を固定したくないから、終身雇用とか年功賃金制とかは、維持でき
ない。】
 要するに,構造改革政策のためでなく、歴史の避けられない流れだと説くのです。
しかし、森永の説く「米国型階層社会」になるかどうかには懐疑的で、
【日本では、おそらく、欧米型階層社会は生まれないだろうと述べました。そしてそ
の大きな理由の一つが、日本文明が歴史的に持ってきた富と権力の分離にあるのだろ
うとも示唆しました。そしてこのことは、多くの日本人による企業の認識とも関係し
ています。 ・・・
 たしかに、私達は生活するために、つまり、そのためのお金を儲けるために会社に
勤めています。しかし、それだけでなく、会社の仕事に何らかの「公的」な部分を感
じているようなのです。】
【今までのいわゆるサラリーマンは、日本型経営の型が崩れてくるのにともなって、
そうした「公的」な役割、あるいは「公的」な役割をになっているという意識を失っ
ていく可能性があります。これが、森永がいう「階層化」の一現象なのでしょう。し
かし、これは必ずしも欧米的収入格差ということではなく、むしろ「公的」な目的の
喪失ということなのでしょう。】
 この問題の解決という視点で、榊原さんはこう言う。
【こういうなかで大きな機能をにないうるのがNPO型の組織なのではないでしょう
か。】
さらに、インターネットの発展が、NPO組織の発展を支えると説く。グローバル化
の時代に、
【情報化社会では逆にローカルな情報をグローバルに発信できます。特定の技術,特
定の知識に興味のある人達は一地域ではそれほど多くないかもしれませんが、グロー
バルに仲間を募ればかなり大きなグループになりえます。NPO,NGO等を通じて
世界中にネットワークを持ち始めてきています。・・】

 もう一つ、デフレとバブルの関係で、面白い指摘がありました。
 デフレを避けようとして、金融を緩和する。すると、通貨量が増えるが、物価は賃金の低い国から、ものが入ってくるので上がらない。そこで、有り余った通貨が、特殊な資産に集中する。これがバブルだというのです。

 以上,興味深い論議でした。