基地問題を米国側から見てみます。
97年から01年、註日米大使特別補佐官として日米安全保障問題を担当したケント・カルダーは『米軍再編の政治学』(日経08年刊)で次の記述をしている。
1. 米国の基地プレゼンスは5つに大別される。そのうち最も重要な役割を担う戦略的価値を保持している主要作戦基地では、ドイツの空軍基地と日本の嘉手納空軍基地が典型である。(これを一旦失い)再建設するとなると、法外な費用がかかる。
2. 海外の米軍基地の中で将来を考えても深い意味を持つのがドイツと日本の施設である。日本における米軍の施設の価値は米国外では最高である。
3. 日本政府は米軍駐留経費の75%程度を負担してきたが、この率は同盟国中最も高い。ドイツは20数%である。
以上の記述から見ても、沖縄の基地問題は国内問題でなく、北方領土が外交問題であると同様、(米国との)外交問題です。普天間問題を5月までに解決するなどということは、外交問題は相手の事情があるのですから、日本だけで決められないのは当然で、前首相は、基地問題が外交問題であることを、理解していなかったのでしょうか?
そもそも、いつから日本の防衛戦略は米国の軍事戦略と一体化されてきたのか?筆者は90年代からだ、と説いています。
その辺の事情をみてみます。1993年8月に誕生した細川内閣では、米国と距離を置く姿勢を目指した。細川総理は樋口広太郎アサヒビール会長を座長とする防衛問題懇談会を立ち上げる。そこでは、日本を(極東だけでなく)グローバルな舞台で動かしたいとする米国の流れとは逆の方向を探る「日本の安全保障と防衛力のあり方」、通称「樋口レポート」が作成される(ただし実際の発表は94年8月、村山政権下である)。米国は樋口レポートに危険な兆候を感ずる。
樋口レポートは「冷戦が終結し新しい世界が展開しているのに対応し、まず第一に世界的並びに地域的な多角的安全保障体制を促進する。第二に日米安保を充実する」と提言。
この提言は一見、問題がない。しかし、92年以降に構築されてきた米国の新戦略と矛盾する。米国の(冷戦終結後の)新戦略は、
1. 唯一の超大国としての米国の地位を、充分な軍事力で、永久化させる。
2. この目的達成のため、集団的国際主義を排除する。危機において米国が単独で行動できるようにする。
3. 日本にはこの体制に協力させる。
つまり米国にとっては、日本が勝手に地域的な安全保障体制を構築してもらってはいけないのだ。
樋口レポートに関与した人々は、米国の新しい流れを十分知らず、この流れに真っ向から挑戦する動きに出た。
米国は、樋口レポートに危機感をもち、真剣に対日工作を検討する。経過は(元防衛庁事務次官)秋山昌広氏の回顧録『日米の戦略対話が始まった』に詳しいが、その結実が「日米同盟:未来のための変革と再編」である。
この本には、日米安保の裏話が満載です。元イラン大使・防衛大学教授の著書であるから、信憑性は高いとみてよい、と思います。
以上『日米同盟の正体』の内容紹介です。
97年から01年、註日米大使特別補佐官として日米安全保障問題を担当したケント・カルダーは『米軍再編の政治学』(日経08年刊)で次の記述をしている。
1. 米国の基地プレゼンスは5つに大別される。そのうち最も重要な役割を担う戦略的価値を保持している主要作戦基地では、ドイツの空軍基地と日本の嘉手納空軍基地が典型である。(これを一旦失い)再建設するとなると、法外な費用がかかる。
2. 海外の米軍基地の中で将来を考えても深い意味を持つのがドイツと日本の施設である。日本における米軍の施設の価値は米国外では最高である。
3. 日本政府は米軍駐留経費の75%程度を負担してきたが、この率は同盟国中最も高い。ドイツは20数%である。
以上の記述から見ても、沖縄の基地問題は国内問題でなく、北方領土が外交問題であると同様、(米国との)外交問題です。普天間問題を5月までに解決するなどということは、外交問題は相手の事情があるのですから、日本だけで決められないのは当然で、前首相は、基地問題が外交問題であることを、理解していなかったのでしょうか?
そもそも、いつから日本の防衛戦略は米国の軍事戦略と一体化されてきたのか?筆者は90年代からだ、と説いています。
その辺の事情をみてみます。1993年8月に誕生した細川内閣では、米国と距離を置く姿勢を目指した。細川総理は樋口広太郎アサヒビール会長を座長とする防衛問題懇談会を立ち上げる。そこでは、日本を(極東だけでなく)グローバルな舞台で動かしたいとする米国の流れとは逆の方向を探る「日本の安全保障と防衛力のあり方」、通称「樋口レポート」が作成される(ただし実際の発表は94年8月、村山政権下である)。米国は樋口レポートに危険な兆候を感ずる。
樋口レポートは「冷戦が終結し新しい世界が展開しているのに対応し、まず第一に世界的並びに地域的な多角的安全保障体制を促進する。第二に日米安保を充実する」と提言。
この提言は一見、問題がない。しかし、92年以降に構築されてきた米国の新戦略と矛盾する。米国の(冷戦終結後の)新戦略は、
1. 唯一の超大国としての米国の地位を、充分な軍事力で、永久化させる。
2. この目的達成のため、集団的国際主義を排除する。危機において米国が単独で行動できるようにする。
3. 日本にはこの体制に協力させる。
つまり米国にとっては、日本が勝手に地域的な安全保障体制を構築してもらってはいけないのだ。
樋口レポートに関与した人々は、米国の新しい流れを十分知らず、この流れに真っ向から挑戦する動きに出た。
米国は、樋口レポートに危機感をもち、真剣に対日工作を検討する。経過は(元防衛庁事務次官)秋山昌広氏の回顧録『日米の戦略対話が始まった』に詳しいが、その結実が「日米同盟:未来のための変革と再編」である。
この本には、日米安保の裏話が満載です。元イラン大使・防衛大学教授の著書であるから、信憑性は高いとみてよい、と思います。
以上『日米同盟の正体』の内容紹介です。