古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

基地問題は外交問題

2010-08-30 | 読書
基地問題を米国側から見てみます。

97年から01年、註日米大使特別補佐官として日米安全保障問題を担当したケント・カルダーは『米軍再編の政治学』(日経08年刊)で次の記述をしている。

1. 米国の基地プレゼンスは5つに大別される。そのうち最も重要な役割を担う戦略的価値を保持している主要作戦基地では、ドイツの空軍基地と日本の嘉手納空軍基地が典型である。(これを一旦失い)再建設するとなると、法外な費用がかかる。

2. 海外の米軍基地の中で将来を考えても深い意味を持つのがドイツと日本の施設である。日本における米軍の施設の価値は米国外では最高である。

3. 日本政府は米軍駐留経費の75%程度を負担してきたが、この率は同盟国中最も高い。ドイツは20数%である。

以上の記述から見ても、沖縄の基地問題は国内問題でなく、北方領土が外交問題であると同様、(米国との)外交問題です。普天間問題を5月までに解決するなどということは、外交問題は相手の事情があるのですから、日本だけで決められないのは当然で、前首相は、基地問題が外交問題であることを、理解していなかったのでしょうか?



 そもそも、いつから日本の防衛戦略は米国の軍事戦略と一体化されてきたのか?筆者は90年代からだ、と説いています。

 その辺の事情をみてみます。1993年8月に誕生した細川内閣では、米国と距離を置く姿勢を目指した。細川総理は樋口広太郎アサヒビール会長を座長とする防衛問題懇談会を立ち上げる。そこでは、日本を(極東だけでなく)グローバルな舞台で動かしたいとする米国の流れとは逆の方向を探る「日本の安全保障と防衛力のあり方」、通称「樋口レポート」が作成される(ただし実際の発表は94年8月、村山政権下である)。米国は樋口レポートに危険な兆候を感ずる。

樋口レポートは「冷戦が終結し新しい世界が展開しているのに対応し、まず第一に世界的並びに地域的な多角的安全保障体制を促進する。第二に日米安保を充実する」と提言。

この提言は一見、問題がない。しかし、92年以降に構築されてきた米国の新戦略と矛盾する。米国の(冷戦終結後の)新戦略は、

1. 唯一の超大国としての米国の地位を、充分な軍事力で、永久化させる。

2. この目的達成のため、集団的国際主義を排除する。危機において米国が単独で行動できるようにする。

3. 日本にはこの体制に協力させる。

つまり米国にとっては、日本が勝手に地域的な安全保障体制を構築してもらってはいけないのだ。

樋口レポートに関与した人々は、米国の新しい流れを十分知らず、この流れに真っ向から挑戦する動きに出た。

 米国は、樋口レポートに危機感をもち、真剣に対日工作を検討する。経過は(元防衛庁事務次官)秋山昌広氏の回顧録『日米の戦略対話が始まった』に詳しいが、その結実が「日米同盟:未来のための変革と再編」である。

 この本には、日米安保の裏話が満載です。元イラン大使・防衛大学教授の著書であるから、信憑性は高いとみてよい、と思います。

 以上『日米同盟の正体』の内容紹介です。

日米関係と北方領土問題

2010-08-28 | 読書
「日米安保の正体」からのさわり「日米関係と北方領土問題」。(「日ソ関係と北方領土問題」のタイプミスではありません。)

 そもそもの始まりは、ヤルタ協定、「千島列島はソ連邦に引き渡されるべし」と定めた。1951年対日平和条約において、日本に千島列島を放棄させるが、この放棄される千島列島の範囲を曖昧にしておけば、この範囲を巡って日本とソ連は永遠に争うことになり・・・という趣旨の在京英国大使館初英国本国宛ての極秘意見具申電報がある(『日露外交秘話』丹波実元ロシヤ大使著)

 英国人はそういうことを考えていたのかと驚く・・・実は米国自身にも同様な考えがあった。マイケル・シャラー著『「日米関係」とは何だったかのか』の記述によると、

「千島列島に対するソ連の主張に異議を唱えることで、米国政府は日本とソ連の対立をかきたてようとした。実際、すでに1947年にケナンとそのスタッフは領土問題を呼び起こすこと利点について論議している。うまくいけば、北方領土についての争いが何年間も日ソ関係を険悪なものにするかもしれないと彼らは考えた」

 1956年、時の鳩山内閣が、歯舞・色丹を手に入れることで領土問題を解決しようとした。米国国務省は日本に「日ソ交渉に対する米国覚書」を出している。

 それによると、日本はサンフランシスコ条約で放棄した領土に対する主権を他に引き渡す権利を持っておらず、このような性質のいかなる行為がなされたとしても、それは同条約署名国を拘束しうるものではなく、かかる行為に対してはおそらく同条約によって与えられた一切の権利を留保するものと推測される。

 日本に千島列島に関する領土問題を交渉する能力はないとし、仮に合意すれば米国はサンフランシスコ平和条約による一切の権利を留保する(平和条約はチャラになると恫喝したわけ)。

 それは冷戦時代のことでしょう、といわれるでしょう。そこで、冷戦後の話。

 89年5月から93年7月まで駐日大使を勤めたアマコストは、『友か敵か』(96年、読売新聞社)で「ゴルバチョフ時代からソ連崩壊にかけ米国は対ソ(ロ)支援の方針を固める。その際、日本の資金が重要である。しかし、日ロ間には北方領土問題がある。米国は仲介に出ることを考え、自分(アマコスト)が外務省の何人かに国際司法裁判所への提訴を助言した。」と述べる。

 アマコストだけではない。ワインバーガー元国防長官も自著『ワインバーガーの世界情勢の読み方』(ぎょうせい、1992年)の中で「ここ数ヶ月米国が率先して北方領土問題の早期解決を口にしているため、日本政府も大喜びしているが、勿論ブッシュ(父)政権としては、この問題が結果的にどうなるかは、それほど大きな問題ではない。要するにお金のない米国に代わって日本が率先してサイフの紐をゆるめてくれればよい」と述べている。

 プーチン政権下で力のロシヤが復活した(原油価格の上昇が大きい)。もう米国に追随するロシヤではない。当然、北方領土問題を解決させたいという考え方は、国務省から消滅した。

 北方領土問題の歴史を見れば、日本は見事に米国の構想の下に踊らされている。(つづく)

9.11は21世紀の真珠湾攻撃

2010-08-27 | 読書
前便の続きです。『9.11は21世紀の真珠湾攻撃』という話。
英国首相チャーチルは、真珠湾攻撃の報を聞いて「真珠湾攻撃によってわれわれは戦争に勝ったのだ・・・満身これ感激と興奮という状態で私は床につき、救われて感謝に満ちた」(第二次世界大戦史)
日本国民が「勝った!勝った!」と喜んでいたとき、チャーチルも「これで勝った!」と喜んだ。米国が日・独に開戦してくれるかどうかが勝敗の帰趨を決めると思っていたのだ。米国では、ルーズベルトがそう思っていた。米国民に開戦を納得させるには、どうしても日本に開戦させなくては!彼は暗号解読で、日本の宣戦布告を知りながら、軍の前線には知らせなかった。
同様なことが、9.11であった。
【CNCは04年4月10日、下記報道を行った。「以下は『オサマ・ビン・ラデインは米国を攻撃する』と題する大統領へのブリーフィング、2001年8月3日分の写しである。・・・」】
ブッシュ大統領とその側近は、要するに戦争をやりたかった。そのため、ビン・ラデインのテロの情報を事前に入手しながら、それを握り潰した。
戦争をやりたかった理由は二つ。一つは、軍事費の予算を取りたかった。
1961年1月17日、アイゼンハワー大統領は離任を3日後に控え、国民に演説した。
『われわれは産軍共同体が不当な影響力をもつことに警戒しなければならない。・・・産軍共同体が自由と民主的動向を危険にさらすようにさせてはならない。』
アイゼンハワーは、巨大な力を持った産軍共同体が米国全体の利益に反して戦争に突入する危険を警告した(私見だが、この演説によりアイゼンハワーは歴史に名を残す大統領になった)。
湾岸戦争で、日本は130億ドルの資金協力をしたが、いま、イラク戦争の出費は毎月120億ドル。タイムズ紙は08年2月23日、戦死者への補償などの間接費を加えると3兆ドルに達すると報じた。産軍共同体によって、米国全体の利益に反する戦争に米国民は引き込まれたのです。
もう一つは、テロとの戦争、実はビン・ラデインとの戦争が、米国の意味するテロとの戦争でなかった。米国の狙いは、ハマス・ヒズボラ(パレスチナ)である。ビン・ラデインの狙いは分かっている。サウジアラビヤからの米兵撤退です。そのため米国は9.11以後サウジから米軍を撤退させた。だから、ビン・ラデインに関する限り、テロとの戦いの必要はなくなったのだが、米国の政治や軍事に大きく左右しているのは、イスラエル・ロビーです。だから、ハマスを潰すため、「テロとの戦い」を止めるわけに行かない。
(もう一つ、原油とからんで、フセインを叩くという狙いがあったと思うが・・・)
長々と述べてきたのは、米国の軍事戦略をきめているのは、産軍共同体やイスラエルロビーであるから、米国に無条件でついていくと、とんでもない戦争に巻き込まれる可能性がある、極東条項は外すべきでなかった、と言いたいからです。(つづく)

日米同盟の正体

2010-08-25 | 読書
『日米同盟の正体』(講談社現代新書、09年3月刊行)という本を読みました。鳩山前首相が普天間問題で辞任してから、日米安保がどうなっているかが気になって参考書を探したら、この本が見つかったのです。

著者の孫崎 享(まごさき うける、1943~)は、『日本外交 現場からの証言』で山本七平賞受賞。元外務官僚(ウズベキスタン大使、イラン大使)、元防衛大学校教授(02~09年)。

以下、さわりの要約を紹介します。

80年代からシーレーン防衛構想というのがあります。自衛隊にP―3C対潜水艦哨戒機を大量に保有させ石油の補給海路を確保させる。日本から1000海里(パラオ付近まで)を自衛隊が守り、それ以西の防衛を米軍が担当するというものです。日本人はそう理解し、実際に自衛隊はP―3Cを保有しました。しかし、米国の狙いは別にあった。オホーツク海のソ連の潜水艦に対抗するため日本の海上自衛隊を活用しようというものでした。ソ連艦からの米国本土への核ミサイル攻撃を防止するために必要な計画だったが、財政赤字に悩む米国政府は、シーレーン防衛を口実にして日本に費用負担させたというわけ。

 「日米安保のおかげで、日本の防衛費はGNPの1%ですんでいる」と米国の防衛長官が公言したそうだが、その1%しかない国防費が日本ではなく米国の防衛のために使われている。

別の観点から言うと、日米安保により、日本の防衛は米国の防衛と一体化している。これは、ある意味で当然で、米国国防省としては、両国の防衛の責任を負わされれば、二つの任務を別々に考えることはない。

日米の防衛の一体化は、何をもたらすか?日本と関係のない国の紛争に日本が巻き込まれる危険が出てくる。それを防ぐのが極東条項でした。ところが・・・

【2005年10月29日、日本の外務大臣、防衛庁長官と米国の国務長官、国防長官は「日米同盟:未来のための変革と再編」という文書に署名した。日本ではこの文書はさほど注目されてこなかったが、これは日米安保条約にとって代わったものと言っていい。(第3次小泉内閣;町村外相、大野防衛庁長官)】

 何が変わったか。まずは対象の範囲である。

 【日米安保条約は第6条で、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全に寄与するため」とする極東条項を盛っている。・・・それが「未来のための変革と再編」では、同盟関係は、「世界における課題に効果的に対処する上で重要な役割を果たしている」とした。日米の安全保障協力の対象が極東から世界に拡大された。】(つづく)


もう一度消費税

2010-08-06 | 経済と世相
 1998年、自殺者が年間3万人を超えました。以来昨年まで(多分今年も?)12年間3万人以上の人が自殺しています。1998年という年は、橋本内閣が消費税率を3%から5%に引き上げた97年の翌年です。消費税と自殺はあまり関係がない、と思われる方は、以下の記述をお読みください。

まず、中小企業と消費税の関係です。「益税」という言葉があります。商店で買い物をすれば、消費税を払いますが、この消費税を、商店ではまとめて税務署に払います。納税まで、いわば商店の預り金になります。ところが、年間売上が一定金額(以前は3千万円、今は1千万円)以下だと、消費税を納めなくて良いという制度になっている。商店主は、消費者の払った消費税をポケットに入れて良い。これが「益税」といわれます。誤解のないようにいうと、売上の5%をポケットに入れるわけではありません。商品の仕入れに際しては5%払っているわけですから。いわば、その商店の付加価値の5%がポケットに入る。消費税の導入に際し、中小企業の反対をなだめるため設けられた制度です。

中小企業主は「益税があるから、まぁいいか!」と思ったのかもしれませんが、実際に制度が始まると、とんでもないことになりました。消費税は売上税になる。法人税は利益がなければ、税金はかかりませんが、売上税は利益が出ようが出まいが、売上があれば税金がかかります(しかも限度額が3000万円から1000万円になった)。

不景気とデフレが続くと、商店の付加価値はゼロどころか、時にはマイナスにさえなる。そこに税金がかかるのです。税金は預かり金といっても、消費税分を乗せた値段では売れなくなる。

ここで、税金の種類によって、滞納される税金はどれくらいか?見てみます。

法人税、相続税、消費税、源泉所得税などがありますが、国税庁発表の「平成20年度租税滞納状況」によると、滞納額は全税目で1兆5538億円。消費税はこの29.2%にあたる4537億円(ただし国税分、消費税は国税4%、地方税1%)。消費税が1998年から急増し最悪です。

本来なら、消費税は顧客からの預り金ですから、滞納はないはずです。ところが、実際は、預り金ではなく、商店主が自腹で払う売上税になっている。だから、財務省は消費税にこだわるのです。法人税は、不景気で利益が出ないと取れないが、売上税は利益に関係なく、とれるからです。納税者側から言うと、不景気で資金繰りに困っている時に税金を払わねばならない!

職業別の自殺者数(09年)を見ると、無職者(18722名、57%)、勤め人(9159名、27.9%)、自営業・家族従事者(3202名、9.7%)となっています。

自殺者の自営業・家族従事者対勤め人の比は、1:3ですが、

就業者の数でいうと、自営業・家族従事者(796万人)、勤め人(6282万人)で比率は1:7ですから、自営業の自殺率は勤め人の倍以上です。

私は、自殺者の増加は非正規雇用の増加と関係があると思っていましたが、これにも、消費税が関係しているらしい。

理論的には、消費税は付加価値に税率を乗じたものになる。正社員に仕事をさせれば、その賃金は企業の付加価値になるが、派遣に切り替えれば、その賃金はその企業の付加価値にはならない。節税ができるのだ。

以上のようなことを考えると、簡単に「10%でどう」などと発言する首相は、軽率のそしりを免れないのは当然です。これが本日一番に言いたかったことです。
 本稿は「消費税のカラクリ」(講談社現代新書)を参考にしました。

消費税が輸出補助金として機能している

2010-08-04 | 経済と世相
『消費税が輸出補助金として機能している』ってご存知ですか。

 外国に輸出される物品などは、通常輸出先の国で間接税(消費税)が課されます。わが国で輸出される物品に消費税を課すと、二重に課税されることになります。そこで、輸出の際、国内で課された消費税は還付する仕組みになっています(輸出戻し税)。この金額が半端でない。07年度のデータで、トヨタは3219億円、以下(単位億円)ソニー(1587)、本田(1200)、日産(1035)、キャノン(990)、マツダ(803)、松下(735)、東芝(703)、三菱自(657)、スズキ(518)と続いている。



 理屈の上では、輸出企業は仕入れの際に支払った消費税分を取り戻しただけだ。

 しかし、実際の取引においては、消費税を上乗せした金額を納入業者にそのまま払っているわけではない。必ず単価の切り下げを要求するし、またいうまでもないが、輸出企業がその都度その金額を税務署に払っているわけでもない。結局、輸出戻し税制度は、税制を通じて、輸出補助金になる。通常の補助金は議会の承認が必要だが、これは議会の預かり知らない補助金なのである。



 輸出大企業は、消費税の引き上げでまったく被害なく、場合によっては、引き上げ幅が大きいほど利益を生むのである。

 中国やインドなど、アジヤの新興国でも、この輸出戻し税方式がとられている。WTOは、公平貿易の観点から輸出への補助金を禁止している。だから、消費税の戻し制度という名目で、実質的な輸出補助金を出しているのだ(GATTの時代から先進国で既に行われていた)。



 日本経団連は幾度となく、消費税の引き上げを求める提言をしてきた。2003年の奥田ヴィジョンで、「04年から毎年1%ずつ消費税率を上げて14年度から先は16%に据え置く」と説き、07年には「経済財政諮問会議」が「消費税率を2025年までに最低でも17%程度まで引き上げる必要がある」旨の試算を基に議論を進める方針を決定した。



 財政再建のための正論である。しかし、正論にも色々あって、人は、自分に有利な正論は声を大にして唱えるが、不利になる正論には、口を閉ざしているものらしい。



 もう一つ、先日IMFが日本に関する審査で、来年から消費税の引き上げが必要だ、と声明したそうである。

 注意しなければいけないのは、IMFの日本に関する勧告や声明は、当然IMFの日本人スタッフが担当する。彼らの多くは、財務省からの出向である。財務省に気に入られる勧告を出せば、彼らにとって出世のステップになるのだ。



議論、消費税にとどめるな

2010-08-03 | 経済と世相
。「議論、消費税にとどめるな」と題する記事が3日の朝日朝刊に載っていました。安井編集委員の寄稿ですが、面白い指摘を紹介します。

『21年前消費税の導入にあたり、政府が繰り返し訴えたのは、「直間比率の是正」。所得税や法人税など直接税中心の税制から主要国並みに間接税に頼る税制に変えてゆくという考えだった。税収の中の間接税比率(国税分)をみると、消費税が導入された89年度は25.8%。イギリスは43.4%、ドイツは46.8%、フランスは60.9%だったから、日本の比率は確かに低かった。

それが今では46.5%(10年度予算)だ。主要国(08年度)をみると、英38.8%、独55.1%、仏57.6%。国税に限れば、国際水準に近づいた。ただ、日本が何かと手本にする米国は6%と、直接税に頼る。(中略)

景気の低迷で主要な直接税である所得税、法人税がピークに比べ半分以下に減ってしまったことが大きな理由だ。そうした要因に加えて、消費税が導入され、3%から5%に引き上げられる過程で実施された、さまざまな税制改革の影響もある。

例えば、所得税では中低所得者も04年までは軽減されたが、高所得者も最高税率が引き下げられるなど累進構造は見直され、負担が軽減された。法人税も減税された・・・・

税制改革の論議を消費税をどうデザインするかにとどめてはならない。所得の再配分機能を回復するため、所得税や相続税なども議論すべきである。』



私が疑問に思うのは、増税が必要であるとしても(その点問題があると考えるが)、その増税すべき税が何故消費税でないといけないのか?消費税アップを止めて、法人税や所得税の累進税率アップでは何故いけないのか?



今、『消費税のカラクリ』(斎藤貴男著、講談社現代新書)を読んでいるが、同書では、

『所得税の累進税率を20年前のレベルに戻すだけで、所得税収はたちまち倍増する。

(かつて19区分最高税率75%であったが、1980年代半ばから緩和されつづけ、99年からはわずか4区分、最高税37%。年間所得100億円の人と1800万1円の人は税率が同じになった。)

法人税が聖域のように扱われるのもおかしい。財界や政府が強調するほどには日本の法人税率は高くないし、社会保険料を含めれば、企業の負担は諸外国の法人よりずっと軽くなっている。



法人税への依存を軽減しなければ、大企業の工場だけでなく、本社機能や有能な人材まで海外に流出してしまうぞといった恫喝など受け流そう。

企業の立地要因はその地域の市場規模や労働力の質・量とコスト、補助金をはじめとする優遇制度、インフラの程度、安全性や環境対策等々での各種規制など多様かつ複雑であり、税率だけで決定されることなどありえない。』と述べている。