古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

竹中教授に反論

2008-04-16 | 経済と世相
 雑誌VOICE3月号の巻頭で、竹中平蔵さんが『法人減税を「スーパー特区」で』という論文を寄せている。

 要旨は、「日本の株式市場が冴えないのは、”改革”のメッセージが発信されないから」、「経済は何故悪化したのか?総括がない」と述べ、具体的に三つの政策(以下の『 』内)を提言している。

 一読、「間違ってる」と、腹が立って(年をとると怒りっぽくなります)、身の程わきまえず、大教授に反論してしまいました。

 『第一に、05年度末に日銀が量的緩和の解除を行ったことが景気悪化の原因、デフレに対応する金融の量的緩和へ政策転換を求める。』
 「金融の量的緩和が、国内の景気を刺激する」というのは、金融が自由化される前の国民国家経済の時代で、今日のように金融がグローバル化されていると、緩和した円がすべて国内で使われる保証はない。日本の金利が低ければ、いわゆる円キャリートレードで、外資が日本で調達した円をドルに代えて、海外で運用する。この際、円を売ってドルを買うから、円安にする効果はある。だから、輸出企業の景気は刺激できたが、それが人件費に波及しなくなっているので、輸出企業以外の景気はさっぱりだ。
 「金融の量的緩和が、国内の景気を刺激する」という実証は得られていない。

 『第二に、世界が採用しているのに日本が採用していない政策がある。
 それは、「法人税の引き下げ」。これが海外企業の対日進出を低下させ、日本企業の海外進出を加速している。企業は良いが、生活者が苦しいといった情緒的議論を繰り返していると、結局は企業も生活者も沈んでいくことになる。と、法人税引き下げを含む思い切った特区制度を提案している。』
 日本の場合、「法人税の引き下げ」が、企業の海外進出に直接の影響を及ぼすとは思えない。海外進出の最大の要因は、人件費の安さと関税、市場への距離だ。日本の法人税が安くなったからといって、海外生産を止めるという企業はない。また、海外の企業は、日本が法人税を安くすれば、日本に進出してくるだろうか?海外企業の日本進出には、もっと別の要因があると思う。



 『第三に考えられる政策は、国際化に対応して小学校から英語教育を行うこと。日本では、まず日本語教育という主張が強いが、日本語教育と英語教育が矛盾するわけではない。
 英語力と経済力が強く結びついているという現実と、われわれは素直に向き合う必要がある。』
「英語を小学校で教えよ」という意見については異論があるが、それについては一先ず置くとして、エコノミストの論文であるから、「英語力と経済力が強く結びついている現実」につてのコメントが欲しい。
 実際、近年、一人当たりGDPが成長している国の多くは英語圏に属する国々である。何故、英語圏の国が国民所得を増やしているのか?それは「オフショアリング」が可能になったからである。
 欧米の多くの企業が、データ入力やデータ処理、或は給与計算などのルーチン的バックオフィス業務をアイルランド、インド、シンガポール、オーストラリヤなどに移している。更に、ソフトウェア開発や税務、会計、法律関係などの専門サービスを、オフショアリングする動きが広まっている。
 こうした業務のオフショアリングを受けるには、英語を話し理解できることが必要条件になる。しかし、明らかなことは、英語を話せさえすれば、オフショアリングができるわけでない。小学校で、ごく初歩的な英語を教わって、そうした人材が育つわけではない。

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1 コメント

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Unknown (よしのや)
2008-05-10 11:19:11
名古屋に住む30歳の男です。経済には疎いですが、竹中さんについては胡散くさく感じています。ただそれに反論するだけ知識がないので、とても勉強になります。
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