古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

BSEの謎 3

2005-03-05 | 読書
BSE牛の潜伏期間は平均5年だそうです。平均ですから,もっと若くて発病した
例もあり、日本で発見されたのは2歳の牛でした。
 潜伏期間とは何を意味するのか?通常の病気では、病原菌やウィルスが体内に入っ
ても、その数があるレベルまで増えないと発病しない。この数の増加期間が潜伏期間
です。
 病原菌はDNAを持っていて、このDNAが自らのコピーを繰り返して増殖する。
BSEの場合、DNAのないたんぱく質がどうして増えるのか?
 プリオン蛋白は、もともと身体の中にあるのです。病気を起こすのは特殊なプリオ
ン(異常プリオンと名付ける)で、この異常プリオンが正常プリオンに接触すると,
正常プリオンが異常プリオンに変化する。これによって異常プリオンが増えるのだそ
うです。
 実際、マウスを使った実験で、遺伝子がプリオンを作る機能を欠くノックアウトマ
ウス(ある機能を欠損した遺伝子を持つマウス)に、異常プリオンを摂取させても発
病しないことが確認されている。
 で、脳の中の異常プリオンがある濃度に達すると,脳海綿症状になる。いわゆる狂
牛病です。

 といっても、このプリオン犯人説に疑問を呈する学者がいないわけではない。病原
菌が病原菌であると確認されるためには、コッホの3条件と言われるものがありま
す。
1.病気にかかった個体からその病原体が必ず発見される。
2.その病原体が分離精製される。
3.それを他の個体に接種した時、同じ病気が起こる。
 プリオン説について1は証明されました。2が問題。どんどん精製していくと、最
後の生成物は感染性を失う(3がなくなる)というのです。精製する前なら、3が成
立する。
 BSEの謎は完全に解けたわけではないのだ!
 この意味で、プルシナー(1982年狂牛病のプリオン原因説を発表)の1997
年ノーベル賞受賞は、時期尚早でなかったか?という学者もいるそうです。1996
年は英国が肉骨粉の海外輸出を禁止した年で、欧州は狂牛病で大騒ぎ!ノーベル賞も
時の話題に影響されるのかも?
 ところで,牛肉輸入の日米間協議。牛の月齢(20月?)によって全頭検査しない、という協議
が進んでいるようですが、若い牛は潜伏期間が進行中、つまり、プリオンの濃度が低
いため検査に引っかからないというだけで、決して若ければ安全というわけではな
い。検査技術が上がれば、検査で見つけられるようになるのかもしれない。勿論プリ
オンがあっても濃度が低ければ安全ということがあるかも知れないが、それは実証さ
れていない。
 政府は、全頭検査を撤回するのなら、その理由を科学的に説明する責任があるで
しょう。
 米国牛の牛丼はまだ当分食べられません。

これで終わり。長々ややこしい話を続けて、失礼しました。

景気とは何だろうか?

2005-03-05 | 経済と世相


 岩波新書で『景気とは何だろうか』(山谷悠紀夫神戸大学教授著)という本が出た
ので、早速買ってきた。日頃,政治家や学者の論を聞いたり読んだりしていて、いつ
もこの方は「景気」をどう定義しているのだろうと、疑問に感じているので、エコノ
ミストの正式な「景気の定義」を知りたかったのです。
 定義については、内閣府の作成する「景気動向指数」、日銀の実施する全国企業短
期経済観測調査(短観)、それに内閣府作成の「国民経済計算」(いわゆるGDP統
計)の三つで定めている「景気」の説明が詳細に述べられていた。
 それはそれとして,最近の日本経済に関する著者の観方が面白かった。

【日本経済は全体として見ると、2002年を底として、2003年から2004年
と景気は回復に向かってきた。そのことは統計で充分確認できる。ただし、その中身
を見ると、大企業、とりわけ製造業はたしかに相当程度良くなっている。しかし、中
小企業にはその良さがほとんど波及していない。とりわけ非製造業にあってはそうで
ある。そして、家計部門にはまったくといっていいほど景気の回復は生じていない。
むしろ状況はなお悪化を続けている。―――2005年初の日本の景気についていえ
ば、こういうふうにまとめられる。
 こうした部門間の大きなバラツキは、過去の景気回復期にもあったことなのか。答
は否、である。景気回復初期にはままそうした景気回復のまだら現象も生じていた。
経済の各部門がいっせいに回復に向けて動き出す、ということは通常は起りえない。
どこかの部門が先行して良くなる、残りの部門は取り残される、景気回復初期にそう
した現象が起ることはむしろ当然である。
 しかし、今回の景気回復は2002年に始まった、とされている。既に3年近くが
経とうとしている。にもかかわらず、中小企業、家計という、数の上では圧倒的多数
を占める部分が回復から取り残されている――こうしたことは戦後初めての経験、と
いっていい。】
  日本経済の構造変化が起っているのだ。
 ここのところが面白いのだが、著者の指摘を要約すると、一国経済を考える時、大
事なことは、国内各部門,各階層に(平たく言えば)お金がまわってゆくシステムが機
能すること。そのシステムを小泉改革は壊してしまった。だから、お金が回るところ
は回るが、回らないところはまったく回らない(この意味で日本の経済構造が変わっ
た)。そのため、統計で「景気」の指数を算出しても、実体は、凄くいいところは極
端に良く、悪いところはまったく悪いので、平均値が示す実体は存在しない。もはや
「景気」の数字で政策の運営を考えるのでなく,別の数字,例えば失業率・雇用者所得
・年間總労働時間などを政策運営の指針とした方が良い。
 「不良債権処理」は、景気の回復には逆効果であった。03,04年に景気がやや
好転したのは、海外景気の影響で、「不良債権処理」など小泉内閣の政策がなければ
もっと好景気になったと、著者はデータを示して説明し、小泉さんは意図したのかど
うか分からないが、既に、経済構造は変革されてしまった、と述べている。

【景気の構造変化が起っているとして、それはいつ頃からか、という問題である。・
・・
構造変化は1997,1998年頃から、というのが用意している答である。】とい
うのだが・・・


------------------------------------------------------------------------
         「将棋2」 ニクい機能が 増えました
         http://ap.infoseek.co.jp/game3.html