昨年末、世が世ならば19代将軍の徳川様の著書をご紹介しました(下記URL)が、その徳川様、「なぜ日本経済が21世紀をリードするのか」(2012年2月NHK新書)という本を出していました。
http://d.hatena.ne.jp/snozue/20111230
「日本が21世紀をリードするって?」。 どういうことかな?と図書館の棚から借りてきました。ちょっと面白い発想だな、と思い以下に紹介します。
著者の主張の大要は「はじめに(まえがき)」にありました。
【私は断言します。今から10年と経たないうちに、日本が全世界から憧れの目でもって見られる「唯一の先進国」となり、全世界が日本モデルの模倣に躍起になるだろう、と。
ただし、そのような変化は、今からすばらしい政治家なり新政党なりが出てきて、今の日本が抱えている問題を全部解決した結果として起こるものではありません。・・・
実は、世界における日本の立場が劇的に変化するであろう、その原因は、日本ではなく、今の世界経済のあり方のほうにあります。】
【18世紀以来世界を揺るがし、そして小休止の後、1980年代ごろに復活した資本主義経済が、ついに力つきようとしているのです。政治的には、これはアメリカの超大国の座からの転落であり、経済的にはリーマン・ショックで始まった世界金融危機の、より激しくなっての再発という形をとります。
これは単に破局的な経済危機であるというのにとどまらず、私たちが資本主義と呼び習わした経済のありようを支える自由主義の経済思想が、最終的に否定されるきっかけにもなるでしょう。】
【資本主義の危機は、当然ながら、日本の危機をもたらすでしょう。日本は今後10年を経たないうちに、国家財政の破綻に見舞われることが不可避という、悲惨な財政状態にあります。・・・今後次々と登場する政権のいずれも、何一つ有効な手立てをうてないうちに退場することになるでしょう。
一見壊滅的な変化も、悪いことばかりではありません。無理をして支えていた古い仕組みが一掃される結果、社会が一挙に合理化されるからです。】
【他の先進国については、日本ほどには明るい未来が展望できないというのが現実です。金融危機の果てに金融資産が消滅した場合、日本ほどすんなりと「リセット」できそうにありません。いっぽう、今日のいわゆる新興国の急成長も、キャッチアップの完了と制度的な不備によって、それほど遠くない未来には頭打ちとなります。・・・今日、先進国の要件とされるものを、10年後にもすべて満たしている大国は、消去法で日本だけとなってしまいます。】
つまり、為替相場を見ると、ユーロもドルも低落し、消去法で日本の円だけが買われると同じように(日本人には外国の状況は分かりにくいので、ユーロやドルの深刻な状況は見えにくい。従って、何故円が買われドル・ユーロが売られるのか分かりにくい)、日本だけが生き残るという主張のようです。
何故そう考えるのか?
ソ連が崩壊した後、【1990年代の後半には、全世界が資本主義に覆われることは、不可避であるかに思われました。ですが、それは資本主義の病理の復活でもありました。旧ソ連圏や中国では、停滞していた経済が成長するようになり、消費生活を楽しむ富裕層、中間層が誕生しましたが、同時にすさまじい貧困問題も発生している。アメリカもイギリスも金融資産の時価総額ばかりが膨れ上がり、国民の大きな部分が生活水準の実質的低下を見ています。イギリス、アメリカに倣って自由主義的改革を実行した日本でも、貧困層が膨れ上がりつつ、経済成長はきわめて鈍いままです。
マルクスの指摘した生産過剰の問題、ケインズが指摘した需要不足の問題が、蘇ってきたかのようです。いえ、かつての産業革命以上に労働需要を削減するIT革命が起きていますから、古典的資本主義の時代に比べて、問題はさらに悪化しているといえるでしょう。
世界金融危機の後で各国政府、中央銀行が行った、大型の金融緩和と財政出動による金融システム救済は、問題の根本治療にならず、単に危機の本格化、全面化を遅らせるだけで終わっている。】
以下、【日本が全世界から憧れの目でもって見られる「唯一の先進国」となる】と考える徳川様の診断です。
【アメリカの覇権が終焉を迎え、しかもかなりの確率でアメリカ経済が危機的な状況に陥りますと、日本は思わぬ恩恵を受けることになります。日本人が「ドル幻想」から目を覚ますというのが、それです。ドル幻想というのは、日本人が価値の下がることが明白なドルを際限なく蓄えて、まるで不安を感じられないでいられる、その心性を指します。
ドルという通貨が近い将来、かなりの減価を起こすことは確実です。昨今の経済論壇では1ドル=50円という数字がよく登場しますが、私はそれよりもっと下がる可能性もあると考えています。・・・
日本国民全体の利益を考えれば、アメリカに対して貿易黒字が出ない水準まで円をドルに対して切り上げ、日本人の購買力を強化するべきでしょう。あるいは、輸出企業の競争力が大切だというのであれば、逆に国内で大規模な所得の再配分を実施して、低所得の購買力を増やし、輸入を増大させ、貿易黒字を減らすことで円の上昇圧力を抑えるという方法も考えられます。】
「アメリカ離れ」、「ドル離れ」が、日本にとって望ましい結果をもたらすそうです。
http://d.hatena.ne.jp/snozue/20111230
「日本が21世紀をリードするって?」。 どういうことかな?と図書館の棚から借りてきました。ちょっと面白い発想だな、と思い以下に紹介します。
著者の主張の大要は「はじめに(まえがき)」にありました。
【私は断言します。今から10年と経たないうちに、日本が全世界から憧れの目でもって見られる「唯一の先進国」となり、全世界が日本モデルの模倣に躍起になるだろう、と。
ただし、そのような変化は、今からすばらしい政治家なり新政党なりが出てきて、今の日本が抱えている問題を全部解決した結果として起こるものではありません。・・・
実は、世界における日本の立場が劇的に変化するであろう、その原因は、日本ではなく、今の世界経済のあり方のほうにあります。】
【18世紀以来世界を揺るがし、そして小休止の後、1980年代ごろに復活した資本主義経済が、ついに力つきようとしているのです。政治的には、これはアメリカの超大国の座からの転落であり、経済的にはリーマン・ショックで始まった世界金融危機の、より激しくなっての再発という形をとります。
これは単に破局的な経済危機であるというのにとどまらず、私たちが資本主義と呼び習わした経済のありようを支える自由主義の経済思想が、最終的に否定されるきっかけにもなるでしょう。】
【資本主義の危機は、当然ながら、日本の危機をもたらすでしょう。日本は今後10年を経たないうちに、国家財政の破綻に見舞われることが不可避という、悲惨な財政状態にあります。・・・今後次々と登場する政権のいずれも、何一つ有効な手立てをうてないうちに退場することになるでしょう。
一見壊滅的な変化も、悪いことばかりではありません。無理をして支えていた古い仕組みが一掃される結果、社会が一挙に合理化されるからです。】
【他の先進国については、日本ほどには明るい未来が展望できないというのが現実です。金融危機の果てに金融資産が消滅した場合、日本ほどすんなりと「リセット」できそうにありません。いっぽう、今日のいわゆる新興国の急成長も、キャッチアップの完了と制度的な不備によって、それほど遠くない未来には頭打ちとなります。・・・今日、先進国の要件とされるものを、10年後にもすべて満たしている大国は、消去法で日本だけとなってしまいます。】
つまり、為替相場を見ると、ユーロもドルも低落し、消去法で日本の円だけが買われると同じように(日本人には外国の状況は分かりにくいので、ユーロやドルの深刻な状況は見えにくい。従って、何故円が買われドル・ユーロが売られるのか分かりにくい)、日本だけが生き残るという主張のようです。
何故そう考えるのか?
ソ連が崩壊した後、【1990年代の後半には、全世界が資本主義に覆われることは、不可避であるかに思われました。ですが、それは資本主義の病理の復活でもありました。旧ソ連圏や中国では、停滞していた経済が成長するようになり、消費生活を楽しむ富裕層、中間層が誕生しましたが、同時にすさまじい貧困問題も発生している。アメリカもイギリスも金融資産の時価総額ばかりが膨れ上がり、国民の大きな部分が生活水準の実質的低下を見ています。イギリス、アメリカに倣って自由主義的改革を実行した日本でも、貧困層が膨れ上がりつつ、経済成長はきわめて鈍いままです。
マルクスの指摘した生産過剰の問題、ケインズが指摘した需要不足の問題が、蘇ってきたかのようです。いえ、かつての産業革命以上に労働需要を削減するIT革命が起きていますから、古典的資本主義の時代に比べて、問題はさらに悪化しているといえるでしょう。
世界金融危機の後で各国政府、中央銀行が行った、大型の金融緩和と財政出動による金融システム救済は、問題の根本治療にならず、単に危機の本格化、全面化を遅らせるだけで終わっている。】
以下、【日本が全世界から憧れの目でもって見られる「唯一の先進国」となる】と考える徳川様の診断です。
【アメリカの覇権が終焉を迎え、しかもかなりの確率でアメリカ経済が危機的な状況に陥りますと、日本は思わぬ恩恵を受けることになります。日本人が「ドル幻想」から目を覚ますというのが、それです。ドル幻想というのは、日本人が価値の下がることが明白なドルを際限なく蓄えて、まるで不安を感じられないでいられる、その心性を指します。
ドルという通貨が近い将来、かなりの減価を起こすことは確実です。昨今の経済論壇では1ドル=50円という数字がよく登場しますが、私はそれよりもっと下がる可能性もあると考えています。・・・
日本国民全体の利益を考えれば、アメリカに対して貿易黒字が出ない水準まで円をドルに対して切り上げ、日本人の購買力を強化するべきでしょう。あるいは、輸出企業の競争力が大切だというのであれば、逆に国内で大規模な所得の再配分を実施して、低所得の購買力を増やし、輸入を増大させ、貿易黒字を減らすことで円の上昇圧力を抑えるという方法も考えられます。】
「アメリカ離れ」、「ドル離れ」が、日本にとって望ましい結果をもたらすそうです。