古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

中野先生の仮説(2)

2012-05-31 | 経済と世相
続きです。

3. 新自由主義は、「市場による資源配分」を重視し、「政治による資源配分」を排除する。 経済における資源配分には、「市場による資源配分」と「民主政治による資源配分」

(と筆者は言うが、私は「政治による資源配分」と呼ぶべきと考える)の二つがある。

 主流派経済学は、市場の原理は、その価格メカニズムによって効率的な資源配分を実現し、

経済の均衡と安定を約束してくれると考える。

これに対し、政府が財政出動(つまり公共投資など)によって雇用を創出したり、

規制によって社会的弱者を保護するのが「民主政治による資源配分です。

(著者が「政治による資源配分」を弁護するのは、経産省の官僚であった経歴のためかも?)

「非政治化された」経済運営とは、「民主政治による資源配分」を排除する経済運営です。

 英国の政治経済学者ピーター・バーナムはブレア政権の経済運営を分析し「非政治化」と呼んだ。

国際的な非政治化の最たる例が、EU,特にユーロという通貨制度です。

4.EUの設計者はデフレを想定していなかった

 EUは、その根拠法であるマーストリヒト条約により、

欧州中央銀行が単一通貨ユーロを発行して金融政策を実施することになった。

同盟各国はその結果、金融政策や為替政策の権限を失った。

各国は財政赤字はGDPの3%まで、公的債務残高は原則としてGDPの60%までと制限しています。

 結局のところ、ユーロというシステムは、金融危機やデフレを想定せず、

インフレの防止のみを主眼にしたデフレ・レジームであった。

インフレの防止には有効だが、デフレには逆効果だった。

 EUの設計者たちは、国際条約によって「非政治化」さえ行えば、

政治の不適切な介入によるインフレは防止することが出来、後は、

市場のメカニズムが自動的に需給を調節してくれると考えていたのだろう。

5.新自由主義というデフレ・レジームが資本主義を変質させた。 デフレ・レジームは70年代の末から80年代前半にかけて成立した政策レジームだった。

それは、単にインフレを退治したにとどまらず、資本主義を変質させて、金融資本主義を生み出した。

 79年にFRB議長に就任したポール・ボルカーは、インフレ退治を掲げて、急進的な高金利政策を断行した。

企業は、高金利のため、資金調達が困難になり、技術開発投資など、リスクを伴う長期的な投資に消極的になり、

短期的な利益を追求するようになる。

この短期志向が製造業の競争力を弱め、また高金利に伴うドル高は、アメリカの輸出競争力を低下させた。

一方、効率市場仮説を支持する新自由主義に支えられ、金融市場の自由化が進められ、

様々な金融商品が開発され、金融市場が膨張し、投機的な性格が強まった。

 軍事費など財政支出が増加し、高金利下の政府債務の増加は金利を上昇させ、

海外からの資金を呼び込むことになって、マネーのグローバル化が進行した。

 企業の視野の短期化、金融市場の自由化、マネーのグローバル化があいまって、

製造業が後退し、金融のウェイトが大きくなる「金融資本主義」が形成された。(続く)

中野先生の仮説(1)

2012-05-30 | 経済と世相
『レジーム・チェンジ』(NHK新書、12.03・30刊行)という本を読みました。

筆者は、中野剛志・京都大大学院工学研究科准教授、経産省課長を経て現職です。

 この本は、デフレと新自由主義とEU問題について、面白い仮説を提起しています。

 筆者の提示する仮説の数々をご賞味ください。

1.新自由主義はデフレ対策には無効。
 新自由主義とは、「小さな政府」、「民営化」、「規制緩和」、「自由化」、

「グローバル化」といった主張を特徴とする。

 筆者はデフレを「需要不足/供給過剰」と定義する。逆にインフレは「需要過剰/供給不足」である。

いわゆる新自由主義な考えに基づく「構造改革」は供給力を増やす改革であるから、デフレには効かない。

 新自由主義は、「市場原理主義」とも呼ばれるように、自由市場の価格メカニズムが資源配分を最適化し、

経済を最も効率化すると考えている。市場原理が有効に機能するように、

規制を緩和したり撤廃したりすれば、経済が効率化し、生産性が向上する(つまり供給が効率化する)

と考える。供給の効率化は、インフレには効果がある。新自由主義はインフレ対策だった。

 また、労働市場の自由化(雇用の流動化)は、

企業がより低い賃金の労働者を容易に雇用できるので、賃金を引き下げるデフレ圧力になる。

さらに、新自由主義者は、金融市場の自由化を進めれば、

金融市場が最も生産性の高い企業を見つけ出して資金を流しこむ筈と信じて、グローバル化を大いに歓迎する。

 そして、新自由主義は、公務員の数が少ない「小さな政府」を理想とするが、

公的な雇用の機会を減らすことは、需要抑制策になる。

 実は公的な雇用は、営利を目的としない雇用機会を創出するので

最低賃金レベルの労働需要を無限に増やすことが可能である点、特に重要である。

2.レーガン・サッチャーの構造改革はインフレ対策だった。
 80年代初頭、アメリカやイギリスが直面していた経済の問題とは、デフレではなく、

悪性のインフレでした。両国は、物価の下落ではなく上昇に苦しんでいた。

レーガンやサッチャーが断行した新自由主義的な改革とは、インフレを退治するための処方箋だった。

いわば、インフレを収束させるために、あえて人為的にデフレを起こすというのが、新自由主義的な改革の要諦だった。

 ところが、90年代初頭のバブル崩壊によって日本が直面した問題は、極端な資産価格の暴落でした。

当時の日本は、レーガン政権やサッチャー政権が直面していたインフレとは全く反対の、

デフレを克服するための対策を講じなければならなかった。

にもかかわらず、日本は、レーガン政権やサッチャー政権の新自由主義を見本に、構造改革を推進した。

 デフレに転落しようというまさにそのときに、

インフレ退治のために人為的にデフレをおこそうという政策を実行。しかも、それを10年以上も続けた。

日本経済が構造改革とともに深刻なデフレに陥り、そこから抜け出せなくなったのも、当然である。(続く)

荒子散策

2012-05-28 | 旅行
25日、住宅シニアクラブのウオーキングに出かけました。総勢10名(男2、女8)で、9時半集合。生憎、今にも振り出しそうな空模様です。昨日まで連日のハイキング日和だったのに。天気予報は、午前中雨。お天気の解説者は、「名古屋地方雨雲に覆われていますが、落ちてくる雨粒が途中で蒸発して、雨になっていません」とテレビで言っていた。
「雨がひどく降り出したら、途中で中止して電車で帰ってきましょう」と、名城公園駅へ。
 栄で東山線に乗り換え。八田駅で下車。1番出口を出ると、目の前に近鉄とJR関西線の八田駅が見えた。両駅とも名古屋から最初の駅です。パラパラと雨粒が落ちてきたので、皆さん、バッグからケイタイ傘を取り出した。私は傘は持っていたが、面倒なので、ビニールの合羽をひっかけた。苦になるほどの雨ではない。
今日のルートの目玉は、荒子川沿いに整備された散策道「水辺の散歩道」、宝珠院、荒子観音寺、荒子駅前(此処は前田利家の出生の地で、「利家とまつ」の銅像がある)、それに「あおなみ線」沿いの「山塩緑道」。
 地図と見比べながら、歩きだす。最初のお寺、宝珠院は、鄙には稀な綺麗なお寺だった。

http://www.aruku88.net/tera/113nakagawaku/houshuin-chugou/index.html

 次は、荒子観音寺。市内最古の木造建築・多宝塔や円空作と伝えられる山門両脇の阿吽の木造をのぞき見る。
 「前田利家公生誕地200m」と記した標識があった。直ぐ近くに 荒子公園。時間は11字半ごろ。「お弁当にしない?」ということで、公園内の屋根つきのベンチを見つけて昼食にした。
 皆さん、コンビニのおにぎりだが、おつけものや山菜、サクランボなどご持参されて、ご馳走になる。
 小休憩後歩き始めると、荒子駅前。「利家とまつ」の銅像がある。「まつ」の方は今年の3月建てられたそうだ。

 ここからは、「あおなみ線」沿いに南に歩く。
「山塩緑道」の標識の立つ散歩道が整備されていた。
「南荒子」、「中島」、「名古屋競馬場前」と、駅名をみながら歩く。「あおなみ線」の名の由来は、「青い電車がなごや駅とみなとの間を走る」の意味と言う。
「次が荒子川公園駅で、ゴール。15分ぐらい」と元気付ける。
 ゴールの駅前でベンチに座り、「何歩歩いた?」、「1万8千を超えたわ」。無事に全員7kmのコースを歩き通しまし
た。
荒子川公園のラベンダーは満開ではなかったが、一部は咲いていました。
 雨が上がり一部青空がのぞき始めていました。綺麗に整備された公園ですね。 


 公園を歩いた後、あおなみ線、地下鉄を乗りついて、名城公園に帰着しました。

高校の同級会の報告です

2012-05-27 | 旅行
 
 23日夜、「開春楼」なるJR弁天島(静岡県)駅前のホテルで、高校の同級会に出席しました。今年は18名の出席、昭和30年卒業したときは総勢64名だったから、こんなものかな。
 開会冒頭。前回から今日までに亡くなった2名に対しての黙祷。一人(男性)は昨年末の交通事故。もう一人(女性)は今年2月、くも膜下出血とのこと。二人とも前回(1年半前)の名古屋では、元気な顔を見せていたのに・・・
 久しぶりの顔合わせで、話がつきない。「年々来られる人が欠けていくね。今日、集まった人は皆健康に恵まれた人だ」。「本人が健康でも、連れ合いが具合悪い人は来られない」。

「われわれは、若い頃はいいことなかったが、年をとってからは、恵まれてるというべきじゃない」とM君。いろいろあっても、年金が貰えるから老後の生活が成り立っているからという意味だ。
「そうだよ。田中角栄に感謝しなくちゃ」と小生。1973年「福祉元年」を宣言した角栄は、70歳以上の高齢者の医療費を無料にしたり、年金の給付金額を引き上げたりした。
「角栄が気前良く年金をばらまくことにしたおかげで、今政府が困惑してる。支給率を下げられないから、介護保険や後期高齢者保険を引き上げて、支払った年金を回収しようとしてるんだ」
「角栄は天才だったナ」とM.君。
http://www.jicl.jp/now/jiji/backnumber/1973.html

別の友人がやってきた。「マラソンはまだやってるの?」
「ハーフで2時間半を切れないようだったら、もう引退しようと思って、3月の名古屋マラソンに出たが、2時間29分50秒だったから、もう1回は走れるな、と思ってる」
別の一人が、「空」の4合壜を2本持ち込んだ。
「空(くう)」は、愛知県では、伝説の名酒である(なかなか手に這入らなくて、プレミヤがついてウン万円の値がつくという)。名前は聞き知っていたが、口にするのは初めて。
http://www.houraisen.co.jp/ja/product/houraisen/houraisen002.html
 私は、酒には強くないのだが、これは確かに旨い!いわゆる大吟醸酒。「大吟醸酒とは精米歩合50%以下の白米、米麹および水を原料とし、吟味して製造した清酒で、吟醸酒よりさらに徹底して低温長期発酵する。」とか。要するに、徹底的に不純物を「少なくしているということか。
 2時間半で宴会を終わったが、その後、男も女も、部屋に集まって、「空」を飲みながら3時間近く話が続いた。
 翌朝、露天風呂に行く。このホテル、露天風呂は混浴になっている。ただし「露天風呂には水着着用でおいでください(水着のレンタルもあります)」。
 私は、旅行の際は、水着を携行するのを常にしている(チャンスがあれば旅行先で泳ごうと)ので、水着着用で、露天風呂に行ってみた。海岸脇に木の大風呂が設えられて、眺めは良かった。でも、客室から丸見え。朝が早いせいか誰も来なかった。
 7時にビール付で朝食。帰りの支度をして、またロビーに集まり、9時までおしゃべりを楽しむ。清算をすませ、次回を約して、流れ解散。
 帰りは、名古屋経由近鉄で奈良に帰るというM君と一緒だった。

新聞を読んで思ったこと

2012-05-25 | 経済と世相
 作家の高村薫氏が17日の中日夕刊に寄稿していた。
『この一月も、日々新聞を開いて初めて、注視すべき内外の出来事を個人的にいくつも等閑にしていたことに気付かされ、ぞっとすることの連続だった。たとえば連休前に日米両政府が発表した在日米軍再編見直しの中間報告である。沖縄の米海兵隊をグアムに移転させるための費用を日本が負担する内容だった2006年の日米合意が、いつの間にか北マリアナ諸島に日米の共同訓練場をつくる費用まで負担することになったというのだから驚く。
 要は「動的防衛協力」の名の下、米軍施設への日本の財政負担の範囲をグアムから太平洋地域へ広げた上で、海外で自衛隊が米軍と一緒に訓練活動をするということのようだが、ひとたび有事となれば集団的自衛権の行使になるのだろう。こんな重大な見直しについて、いったい国会でどんな議論があったのだろう。
 中間報告はさらに、辺野古移設のメドのたたない米軍普天間飛行場問題を実質的に棚上げしているほか、昨年の武器輸出3原則緩和の成果として、巡視艇をアジヤ太平洋地域の沿岸国に提供するのだという。・・・こんなことを私たちはいつ許したのだ?
 国のあり方の根幹を変え、日本人お生活感覚を変える日米防衛協力の拡大である。社会保障と税の一体改革で手いっぱいのはずの首相がこんな国家的課題にひょいと手を出し、中国をにらんだアメリカのアジヤ戦略にひょいと追随する。国民的議論を経ないまま、政府がかくも無節操な外交に走るのは、ひとえに私たち国民が政治を日々注視していなかっただろう。なぜなら、それなりに注視していた大飯原発3,4号機の再稼動は、いまのところ何とか阻止できているからである。』
もう一つ、23日の中日朝刊に、池内了さん(総合研究大学院教授)が「JAXA法・平和規定改定の動き」という寄稿をされていた。
『独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が発足したのは2003年であった。それを統括するJAXA法には宇宙開発を「平和の目的に限り」という平和規定が盛り込まれている。1969年の国会決議に基づき、日本の宇宙開発を「非軍事」とする精神が貫徹されてきたのである。
 ところが、08年に成立した宇宙基本法において、「宇宙の開発は平和目的に限る」という決議を抹消し、「わが国の安全保障に資する宇宙開発利用を推進」という条項が書き込まれた。宇宙の軍事利用への道を拓くことになったのである。その先駆けとして情報収集衛星5基が打ち上げられた(2基は打ち上げ失敗)。情報収集衛星の名目として「大規模災害時での上空からの撮影」が挙げられているのだが、実際はスパイ衛星である。というのは、この衛星によって得られた東日本大震災の惨状についての撮影データがある筈だが、一切公開されていないのだ。これに対し、地球観測衛星「だいち」のデータは公開されている。宇宙の平和利用と軍事利用との大きな差異が分かる。
 わざわざ「大規模災害時の・・・」という名目を付さず、宇宙の軍事利用を堂々と押し進めるためにはJAXA法にある平和規定が邪魔になる。そこで今、上位の法律である宇宙基本法と抵触するという理由をつけて、JAXA法から平和規定を外すという法案が可決されようとしている。これで大手を振って宇宙の軍事利用にまい進できるというわけだ。平和憲法の下で戦争に巻き込まれずに来たことを忘れ、安全保障という名目で自衛官の海外派遣など軍事化の道を歩んでいる日本と二重写しになる。・・・
 ・・日本の防衛のためと称して弾道ミサイルにまで手を出しかねないだろう。軍事化路線が進み始めると止まらないからだ。』

 日本政府が米軍の軍事費を負担することも、軍事技術を日本が開発して米軍に協力することも、政府が国民に説明して、国民の多数の了解を得て行うのなら、私は、かまわないと思う。
 しかし、国民に何の説明もなく、「国民が知らないうちにそうなっていた」となると、大変な問題です。上記の事柄は、後世になって振り返ってみると、「あの時、日本国民の運命が変わった」という出来事になるかもしれないと思うと、ぞっとするからです。

消費税論議に思うこと2便

2012-05-22 | 経済と世相
先日の国会中継で、野田首相が「消費税より景気対策が重要ではないか」の質問に、「景気が良くなると、金利が上昇し国債の利払い費が増えるから、景気回復だけで財政は好転しない。だから増税が必要だ」という趣旨の答弁をしていました。
 でも、これっておかしいと思います。
 景気がよくなれば金利が上昇します。しかし、国債の金利は、新規に発行する国債は従来より高い金利にしなければなりませんが、既発債の金利に変更はありません。ですから、政府の利払い費は、既発債については増えるわけではない。もちろん、新発債は金利を高くしなければならないから発行しにくくなります。でも、それは望ましいこと。そもそも国債の発行は景気対策の意味で行われてきたのだから、景気が回復すれば国債発行は控えるべきだし、財政規律の面から、国債は出しにくいほうが良いのです。
 では、金利の上昇で、国債に何の問題もないかというと、実は大有りです。金利が上がると、既発債の評価額が暴落しかねない。その結果、銀行の保有する国債価格が暴落して、銀行は大損をする。ゆうちょ銀行など国債所有比率が高いから特に危ない。
 自己資本が減耗した銀行は貸しはがしに狂奔し金融は大混乱する。
 景気は回復させたいけれど、金利の上昇は困るという政策の袋小路に入り込んでいる。

 話は別ですが、東電はどうなるか。原発事故の補償額をまともに計上したら、既に債務超過になっている。この意味で、東電の決算は、政府公認の粉飾決算です。補償も、東電の力だけでは不可能ですから、電気料金の値上げで賄うことになる。
東電はこの際、倒産させて資産をすべて売却し補償に充てる、それで補償できない額は国が面倒を見ることにすべきです。そうでないと、東電の経営者の責任は明確にならないし、東電の従業員は、今後、稼いでも稼いでも、その稼ぎは賠償に充てることになる。だから、倒産させて、いったん清算し、東電の支払う補償額を明確にし、それ以上は政府が支払うことにする。東電は新会社として発足する。その際、発電送電の分離などの新システムを導入する。このほうが国民にも従業員にも望ましいと思う。
 それが出来ない理由があります。倒産させると、東電に貸付している銀行(大銀行)に貸し倒れが発生するのです。
 その結果、自己資本が減耗した銀行は貸しはがしに狂奔し金融は大混乱する。

 つまり、政府も日銀も「銀行に損失を発生させない」ということが、政策のキーワードになっている(われわれが預金の低金利に我慢させられているのもこのため)。施策の制約条件になり、政策の隘路になっている。
 この隘路を切り抜ける知恵が、政治家にないようです。

消費税論議に思うこと

2012-05-21 | 経済と世相
 以下は週刊文春の5/24号に載った宮崎哲弥氏の文章です。
【国際的に消費税の現況を比較してみて意外に思われるのが、税率と税収の乖離である。
「日本の消費税率は先進諸国に比べて著しく低い」とよく指摘される。
確かに日本の税率は5%で表面上は低い。然るに消費課税の総税収額に対する割合をみれば
08年実績で29.3%だ。全体の約3割を占める。もしこのままで、消費税率が倍の10%になれば、
この値は50%にも達する可能性がある。
 では他の国の状況はどうか、
消費税の標準税率25%を誇るスウェーデンの場合、消費課税による税収の占める割合は37.4%。
フランスも約20%の標準税率だが、税収割合は39.3%だ。およそ30%の日本と比べて税率ほどの差はないことが分かる。
 標準税率が概ね20%近いヨーロッパでも、食料品に対する適用税率は概ね10%を下回っている。
欧州諸国が税収を減らしても食料品をはじめ必需性の高い品目の税率を軽減しているのは、
消費税の持つ逆進性を緩和するのが目的だ。
消費税を一律に課した場合、所得の低い層の負担が相対的に重くなる。
一般に低所得層のほうが、収入のうちの多くの部分を消費に振り向けるからだ。】
 そこで、小生の思うことですが、「税と社会保障の一体改革」は避けることの出来ない課題で、
「消費税の引き上げに政治生命をかける」と首相は言い、消費税の議論を国会に要請しているのだが、
議論をするためには、前提になるデータの公表が不可欠だ。「日本は消費税率が他の先進国に比し低い」
ことのみ言って「消費税収は低くない」ことを言わないのでは、議論しても正しい判断が出てこない。
 私見だが、100歩を譲って、増税が必要であるとしても、それが何故消費税でなければならないか。法人税だって、所得税だってあるのではないか。この疑問に対する説明を首相から聞いたことがない。

 話は別だが、先日、NHKのニュースが、「瓦礫処理を地方で引き受けるか否か」を
小学校の生徒に議論させている(文科省の指導によるらしい)ニュースを伝えた。
 議論の結果、正しい判断に達するためには、正確なデータに基づいての議論でなければならない。
 「瓦礫問題」を討議させるとき、どのようなデータを、子供に伝えたのであろうか。
「低線量被爆による発病は数十年後になるといわれるが、正確なデータは、まだ把握されていない」
ということまで教えた上で、討議させているのだろうか。
 原発の被害については、まだ不確実なことが多すぎて、とても小・中学生の討議の対象にするテーマではない。
と、私は思う。何の批判もなく、報道したNHKもNHKだ。


金儲けの神様死す

2012-05-20 | 経済と世相
 「邱永漢氏が死去」と19日の朝刊が伝えていた。16日、88歳で亡くなったとのこと。「金儲けの神様」という異名があった人だ。
「ここ数年、消息を聞かなかった」と、書棚の本を点検したら、一番新しい著書は、『お金だけが知っている』(03年12月、PHP刊)が見つかった。
 パラパラめくってみる。
『国内における貧富の差は社会制度の改善によって調整することが可能だが、国と国との間の貧富の差は能力と意志の差であって、単なる地政学的な差ではないから、最も解決の困難な問題として最後まで残る。そういった意味では、国内の貧富の差より国と国との間の貧富の差のほうが今世紀最大の問題として浮上するだろう・・』
(EUの騒動もEU内の豊かな国と豊かでない国との葛藤かも?)
『国際的な動きを察知するのはお金ではないかと私は思っている。お金は人間より一歩先にお金の儲かる方向に動こうとする。・・・きびしい為替制限のある国でも、お金は自由自在に国境を通過している。国力の脆弱な国ほど為替の管理は厳しいが、そういう国でも経済の発展によって国力がついてくれば為替の制限は少しずつ緩み、ついには・・自由化に踏み切らざるを得なくなる。
 為替はその国の実力を示すものというよりは国力の未来を予言するものといって良い。
世界の未来は人間の一人一人よりもお金のほうが先に知っている。』

『(為替相場は)これまで続いてきた為替レートを決定する要因の中で、昨日に続く今日の売りと買いのバランスによって決定されるもの・・・為替レートは多国間の物価水準を反映するものであるともいえない。為替の売買が自由になったおかげで、売買の利ざやを稼ぐ目的で為替市場の周辺をうろうろしている資金が、商品売買の決済に使われる資金の何百倍もあって、その勢いたるや、どこの国の中央銀行総裁の手にも負えない存在になってしまっている(為替相場は現実に存在するけれども、これが正当な値段であると人々を納得させる根拠はどこにもない)。』

『個人的なことになるが、1924年生まれの私は20世紀の終りには76歳に達した。あと1年生き残れば、21世紀が一目見られるのではないかと考えて「私は77歳で死にたい」(知恵の森文庫)という本を書いた。1年や2年生き延びたところで大した違いはないだろうと内心高をくくっていたが、実際には2001年になったとたんに「9.11」のテロ事件が勃発した。』
『これは回教徒とキリスト教徒の宗教的な衝突というよりは、地球が一つになっていくプロセスでその前に立ちはだかった貧富の差からくる一大戦争ではないかと思ったのである。』
 こうしてみてみると晩年の邱さんは、「お金儲けの神様」から「お金をとおして文明を分析した」文明史家の域に達していたのかも?

イチローの言葉

2012-05-19 | Weblog・人生・その他
 マラソンや水泳だけでなく、何事も「継続が肝腎だ」と思っていますが、イチローも同じことを考えているのですね。

 『イチローに学ぶ』、17日の中日夕刊「紙つぶて」欄に、篠原久典名大教授が寄稿していました。
【「科学者、研究者になるために一番大切なことは何ですか?」。即座に私は「健康です」と答える。・・・
 科学研究には継続性が不可欠である。一つのテーマに10年、20年かかることはざらだ。忍耐強く研究を積み重ねていく。これを日常的に支えるのは、まず、健康で丈夫な体である。科学研究には先人争いのプレッシャーもある。これに耐えるのも健康な身体である。
 研究者として(スポーツ好きとしても)私は常々、身体操作に興味をもってきた。いかに、自身の体の変調をすばやく察知して病に侵されないようにするか?長い研究生活で得た私の結論は、頑固なまでに生活のパターンとリズムを変えない、ことである。毎日毎日同じことを繰り返すことにより、身体の変調を素早く感知できるようになる。
 先日、セーフコ・フィールドでイチローを間近に観察する機会があった。他のメジャーリーガーと比べても彼の身体操作術は群を抜いている。ネクスト・バッターボックスではもちろん、ライトの守備位置でも「常に全く同じタイミングで」股関節と肩甲骨のストレッチを欠かさない。毎インニング頑固なまでに、同じタイミングと動作でストレッチを繰り返し、準備する。
 彼の「小さなことを積み重ねるのがとんでもないところへ行くただ一つの道だと思っています」のコトバが好きだ。】
 

南方にも領土問題

2012-05-11 | 経済と世相
10日の中日夕刊に「尖閣諸島購入問題の本質」と題する豊下楢彦学習院大学教授の寄稿が載っていた。
【石原都知事が、尖閣諸島のうち個人所有の3島を都として購入する方針を明らかにしたことで、議論百出である。
 石原氏は購入の対象として魚釣島、北小島、南小島の3島を挙げている。しかし、同じく個人所有の久場島については全く触れていない。なぜ久場島を購入対象から外すのであろうか。その答えは同島が、国有地の大正島と同じく米軍の管理下にあるからである。海上保安本部の公式文書によれば、これら二島は「射撃場」として米軍に提供され「米軍の許可」なしには日本人が立ち入れない区域になっているのである。
 それでは、これら二島で米軍の訓練は実施されているのであろうか。実は1979年以来30年以上にわたり全く使用されていないのである。にも関らず歴代政権は、久場島の返還を要求するどころか、高い賃料で借り上げて米軍に提供するという「無駄な行為」を繰り返してきたのである。ちなみに、一昨年9月に中国漁船が「領海侵犯」したのが、この久場島であった。それでは事件当時、同島を管轄する米軍はいかに対応したのであろうか。果たして、米軍の「抑止力」は機能していたのであろうか。
 より本質的な問題は、ほかならぬ米軍が尖閣諸島の帰属のありかについて「中立の立場」をとていることである。久場島と大正島の二島を訓練場として日本から提供されていながら、これほど無責任な話があるであろうか。なぜ日本政府は、かくも理不尽な米国の態度を黙認してきたのであろうか。日本政府は一貫して「尖閣諸島は日本固有の領土であり、領土問題は存在しない」と主張してきた。ところが、米国は、1971年に中国が公式に領有権を主張して以来、尖閣諸島について事実上「領土問題は存在する」との立場をとり続けてきたのである。
 日本がなすべき喫緊の課題は明白であろう。尖閣五島のうち二島を提供している米国に、帰属のありかについて明確な立場をとらせ、尖閣諸島が「日本固有の領土である」と内外に公言させること。これこそが、中国の攻勢に対処する場合の最重要課題である。】
 プーチン大統領の発言から、北方領土問題解決を期待する向きがあるようだが、南方にも領土問題があるようだ。