20日の中日朝刊に掲載されていた名大・生命農学研究科の前多敬一郎教授の「繁殖力より食い気が強い」と題する講演。ユニークな内容でしたので、紹介します。
【地球の今の食料状況を見てみる。穀物で世界の人口を全部養うと仮定すると、成人一人当たり一日0.89kgの穀物が必要になる。現在の世界の穀物生産量は21億トン。この量で、扶養できる人口は約65億人。現在の人口も65億人。じゃぁ、足りているかと思われるかもしれないが、実は、全然そうではない。人間は肉を食べる。1kgの肉を生産するのに、3~6kgの穀物が必要になる。肉を食べているのは、ほとんどが先進国。先進国が世界の食料を食い尽くしている。故にグローバルにみれば、世界の食料は圧倒的に足りない。・・・
地球規模的にみて、耕地面積はこれ以上増えない。環境も悪化している。特に土壌が荒れている。水の問題もある。食料輸出国は、食料増産よりも、環境問題に配慮した農業政策を取り始めた。・・・】
問題は科学技術で解決すべきと、前多先生は言います。
【最先端の農業である酪農とホルスタインのことを例にとる。日本には雌200万頭いる。雄は200頭しかいない。人口受精で繁殖させている。畜産は、乳をたくさん出す牛にするための改良を長年にわたって続けてきた。人工授精が始まった当初の1950年ごろ、1頭の牛が年間に出す乳の量は4500から5000kg、搾乳日には一日で40~50Lだった。50年たった今では、ほぼ2倍。年間1万kgになった。・・・】
次に、食い気と色気はリンクするという話。
【この成果は畜産の勝利といっていいが、これに反して、繁殖率は低下。70%近かったものが40%になった。
なぜ繁殖率が下がったのかというと、乳を出しすぎるために、牛の体が飢餓状態になっているのが原因と言われている。ネズミを使ったわれわれの実験で、栄養と繁殖は、密接にリンクしていることが分った。栄養不足は、生殖機能を抑制させる。そこにホルモンが作用していることも分った。動物は飢餓状態になると、食欲が増して、性欲が落ちる
つまり、色気より食い気。体に栄養が入ってこない危機的な情況になると、色気を抑えて食い気を優先させるメカニズムがある。これが牛の繁殖率が下がる理由と考えた。】
何故リンクするか?それは脳で働くホルモンがある。
【動物の膵臓にあるβ細胞は、食後に増加する血糖値を感じて、インスリンを分泌し、糖を体に取り込む。それと同じように血糖値を感じる細胞が脳内にあることが分った。この細胞を動かしているたんぱく質が、グルコキナーゼ。摂食や生殖行動を制御する鍵となるたんぱく質で、このたんぱく質をターゲットにした薬や食品を開発できれば、人間の摂食行動の問題も解決できると思って研究を進めている。】
というのですが・・・少子化対策にこのホルモンを使おうなんて考えないでくださいね。
【地球の今の食料状況を見てみる。穀物で世界の人口を全部養うと仮定すると、成人一人当たり一日0.89kgの穀物が必要になる。現在の世界の穀物生産量は21億トン。この量で、扶養できる人口は約65億人。現在の人口も65億人。じゃぁ、足りているかと思われるかもしれないが、実は、全然そうではない。人間は肉を食べる。1kgの肉を生産するのに、3~6kgの穀物が必要になる。肉を食べているのは、ほとんどが先進国。先進国が世界の食料を食い尽くしている。故にグローバルにみれば、世界の食料は圧倒的に足りない。・・・
地球規模的にみて、耕地面積はこれ以上増えない。環境も悪化している。特に土壌が荒れている。水の問題もある。食料輸出国は、食料増産よりも、環境問題に配慮した農業政策を取り始めた。・・・】
問題は科学技術で解決すべきと、前多先生は言います。
【最先端の農業である酪農とホルスタインのことを例にとる。日本には雌200万頭いる。雄は200頭しかいない。人口受精で繁殖させている。畜産は、乳をたくさん出す牛にするための改良を長年にわたって続けてきた。人工授精が始まった当初の1950年ごろ、1頭の牛が年間に出す乳の量は4500から5000kg、搾乳日には一日で40~50Lだった。50年たった今では、ほぼ2倍。年間1万kgになった。・・・】
次に、食い気と色気はリンクするという話。
【この成果は畜産の勝利といっていいが、これに反して、繁殖率は低下。70%近かったものが40%になった。
なぜ繁殖率が下がったのかというと、乳を出しすぎるために、牛の体が飢餓状態になっているのが原因と言われている。ネズミを使ったわれわれの実験で、栄養と繁殖は、密接にリンクしていることが分った。栄養不足は、生殖機能を抑制させる。そこにホルモンが作用していることも分った。動物は飢餓状態になると、食欲が増して、性欲が落ちる
つまり、色気より食い気。体に栄養が入ってこない危機的な情況になると、色気を抑えて食い気を優先させるメカニズムがある。これが牛の繁殖率が下がる理由と考えた。】
何故リンクするか?それは脳で働くホルモンがある。
【動物の膵臓にあるβ細胞は、食後に増加する血糖値を感じて、インスリンを分泌し、糖を体に取り込む。それと同じように血糖値を感じる細胞が脳内にあることが分った。この細胞を動かしているたんぱく質が、グルコキナーゼ。摂食や生殖行動を制御する鍵となるたんぱく質で、このたんぱく質をターゲットにした薬や食品を開発できれば、人間の摂食行動の問題も解決できると思って研究を進めている。】
というのですが・・・少子化対策にこのホルモンを使おうなんて考えないでくださいね。