古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

浜矩子さんの新刊

2014-05-30 | 経済と世相
浜矩子さんの新刊「地球経済のまわり方」(ちくま新書、2014年4月刊)を、本屋の立ち読みで見つけGETしました。
帯の「風が吹けば桶屋が儲かる」に経済分析の醍醐味がある。超入門・グローバル経済というひき句に魅かれたのです。
『経済の世界はともかく面白い。・・・筆者は中学2年生の時にエコノミストになることを決意した。(中学2年生の)ある日、先生が「イギリスが自国通貨のポンドを切り下げた。その理由と結果はこうこうだ。」と説明してくれた。中学1年の夏までイギリスに住んでいた筆者にとっては、大いに関心のあるテーマだったから一生懸命聞き入った。するとこれが何とも面白い。ポンドを切り下げるとなぜイギリスが得をするのか、逆にポンドを切り上げると何が起こるのか。まるでよく出来た推理小説の謎解きのくだりを読んでいるようだった。
ポンドとイギリス経済の浮沈の関係にこんな謎解きがあるならば、経済の世界にはほかにも面白い謎解きがもっと色々あるはずだ。それを全部知り尽くしたい。ゆくゆくは、人がまだ解いてない謎を自分で解き明かして見せたいものだ。その思いに駆り立てられて筆者は経済の道を進む。
念願かなって、大学で経済を勉強することになった。すると、子どもの頃から聞き知っていたある言い方が頭に浮かんで仕方がない。それは、「風が吹けば桶屋が儲かる」という日本のことわざである。
つまり、本書は「グローバル経済を風が吹けば桶屋が儲かる理論で説明した本です。
風と桶屋の因果関係を理路整然と間違えることがある。それを避けるためにエコノミストは、基本に忠実であるべきだ。基本なくして推理はできない。基本を知ることは、良きエコノミストの十分条件です。だが、基本があっても推理が間違うことがある。それは他人がやること、言うこと、信じていることに追随してしまうことによる。大勢(他人)の赴くところに引きずられるのだ。この傾向に対する特効薬は三つある。これが良きエコノミストに備わっているべき必要条件だ。第一に独善的であること(いつも自分は正しいと信じている)。。第二に懐疑的であること。第三に執念深いこと。
「あなたたちのうち、子供が魚を求めているのに、魚の代わりにヘビを与える父親がいるだろうか。また卵を求めているのにサソリを与えるものがいるだろうか。あなたたちは悪い者であても、自分の子供に良いものを与えることを知っている。まして、天の父が自分に求める者に聖霊をくださらないことがあるだろうか」(ルカ伝11章11節~13節)
 新約聖書のキリストの言葉だが、経済と経済政策との関係についても同じことが言える。
卵とさそりの見誤りを、日本の政策立案者たちは何とたくさん犯し続けたことか。「アベノミクス」なる安倍政権の政策運営こそ、その最たるものである。
 安倍政権は、発足とともに盛んに株高と円安を煽った。これは実におかしい。株は、経済自体に勢いがあるから上がる。株が高いから経済が元気になるわけではない。円は経済実態がそれを必然化するから上がったり、下がったりする。その逆ではない。根拠なき熱狂は必ず破綻に至る。それは特に貧者を惑わす。
 円安についても然りだ。円安と言う卵を割れば、そこから輸出立国に向かう神風が吹く、彼らはそう考えたらしい。だが、日本にとって円安は三つの意味でやっぱりサソリだ。第一に、今や日本はすっかり輸入依存度の高い経済になっている。原油等々の原材料はもとより部品・資材や食品をはじめとする消費財、それらの多くを輸入する。円安が進行すれば、企業の生産コストが上がる。家計にとっても物価上昇で生活が圧迫される。
 第二に、自国通貨安競争の泥沼を招く。第三に、円安を実現できたつもりでいるうちに、円安に歯止めがかからなくなる。
政策の誤謬はまだある。「バブルでデフレを退治しよう」、このところ、そのような感覚が政策を支配している感が濃厚だ。どうかすると、このバブルをもってデフレを退治しようというやり方を「リフレ政策」だとはやす傾向さえ出てきた。大いなる誤謬の極みである。
 リフレと、経済のバブル化を煽ることとはまるで違う。デフレの最中でもバブルは起こる。失業率が高くて、人々の賃金は上がらず、生産も盛り上がらない。そのような時でも。カネが余っていれば投機は起こる。不動産や金の値段が急騰する場面はある。むしろ生産的な投資のタネが見当たらないときこそ、バブリーな方面にカネが流れるということがある。
 「風が吹けば・・・」理論で、現下の経済政策を。徹底的に批判する浜ちゃんの新刊でした。

23日はウオーキング

2014-05-24 | 旅行
初夏を思わせる23日、住宅のシニアクラブでウオーキングに出掛けました。男4.女8の12名が、9時半うち揃て出発しました。地下鉄で栄乗り換え、中村公園駅の③出口を出ると、直ぐ左に参道入り口を示す「中村の大鳥居」

と呼ばれる真紅の大鳥居。参道を歩いて豊国神社です。同名の神社は全国にあるが、ここは、秀吉生誕の地に創建。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E6%9D%91%E5%85%AC%E5%9C%92

中村公園内に入るとすぐ左には、昭和42年(1967年)に名古屋市秀吉清正記念館が設置されています。
http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/19-15-2-5-0-0-0-0-0-0.html
特別展で秀吉の木造が展示されていた。記念館を出て公園内を歩く・Iさんが「子供のころはこの辺りに住んでいた」と言う。「じゃぁ、道案内をお願いするとよいね。」、「いや、すっかり変わってしまってわからない」
言われてみるとそうだ。Iさんの小学生の頃は70年も前になる。70年経って景色の変わっていない所は名古屋にはない!常泉寺という秀吉誕生の地に建てられた日蓮宗の寺がある。

http://www.jousenji.or.jp/
隣には妙行寺という清正誕生の地に建てられたお寺(妙行寺)もあるのだが、時間がないので割愛。「中村公園だけでも一日かけて見るところが多いね」皆さんの言葉だ。
http://www.myougyouji.jp/
公園北口を出ると、名古屋競輪場があった。本陣通りに出て、バス停公園北口から本陣3丁目西まで歩き、ななめ左へ、信号3つで新幹線のガード下。くぐると名鉄栄生駅。駅前の信号を右に、トヨタ産業技術記念館、http://www.tcmit.org/
65歳以上無料だが、入館して細かく見ると、それだけで一日かかってしまう。割愛して東隣の「ノリタケの森に行。http://www.noritake.co.jp/mori/お腹が空いたので。弁当を広げる。

1時間ほど自由時間にした。クラフトセンターで製造工程を見学した。
1:42のバス「めーぐる」で名古屋城に行く。バスは満員で外人さんも多かった。
ここまでくれば、住宅は見えるところにあるから、迷子になる心配はないので、自由に見学して解散とする。

我々は、名古屋市が150億円をかけて復元中の本丸御殿を見学した。昨年5月に玄関と広書院が出来て公開中です。ヒノキの香が匂い日本建築のすばらしさを感じます。
キャッスルホテル前の道を歩き3時過ぎ帰宅しました。歩きながら、「今日は、みなさんを歩かせすぎたみたいですね」と小生。「NOZUEさんにウオーキングに誘われるのでずいぶん歩けるようになりました」。そういわれればうれしい限りです。

驚くべき遺伝子解析技術の進歩

2014-05-17 | サイエンス
 もう一つ,週刊誌からの話題です。驚くべき遺伝子解析技術の進歩について、週刊朝日の5月23日号に池谷裕二さんが寄稿していました。
『今年2月にオックスフォード大学のマイヤーズ博士らが「サイエンス」誌に発表した記事が画期的です。論文題名はずばり「人類交配史の遺伝子地図帳」です。博士らは、世界中の多くの民族から遺伝子を採取し、どのように民族がまじりあってきたを、遺伝子の類似度から解析しました。その結果、過去4000年に及ぶ100以上の歴史イベントが明らかになりました。
 たとえば、中米のマヤ民族にはスペイン人の遺伝子交雑が確認されましたが、これが生じた時期は遺伝子の残存状態から1670年頃と算出されました。これはスペイン人によるマヤ侵略という歴史上の事実と一致します。こんな具合に、アレクサンドロス帝国やクメール王朝の興隆から、アラブ民族やバントゥー族の移動、はたまた奴隷貿易など、教科書上の出来事が、遺伝子の痕跡からも浮き彫りになりました。
 こうした中で特筆すべき事実は、モンゴル民族の遺伝子が(アフリカの一部の地域を除く)世界中のほぼすべての民族に残っていたことです。計算によれば混血が生じたのは13世紀。つまちチンギス・ハーンが率いたモンゴル帝国の時代です。世界人口の半分以上を統治し、人類史上最大規模とも謳われたモンゴル帝国の絶大な影響力が、遺伝子の分布からも証明された形です。
 さて、私たちが気になるのは、日本人のルーツでしょう。意外に思われるかもしれませんが、マイヤーズ博士らの解析の結果、日本人には明確な混血の影響はありませんでした。たしかに日本は、大戦後にGHQに占領された一時期を除けば、外部に侵略された過去を持ちません。2度にわたった元寇でも、モンゴル帝国を撃退しています。侵略や占奪が一般的だった世界の統治の動きに対して、日本における動乱は、戦国時代にせよ明治維新にせよ、内乱にすぎません。日本人は、遺伝子の交雑なく何千年も存続している、世界でも例外的な民族なのです。
 ところで、今回のマイヤーズ博士らの解析から、史実として明確に残されていない交雑の痕跡も見つかりました。これは貴重な発見です。・・・』
 筆者は、『今に生きる人々の体の細胞一つひとつに人類の冒険や戦争の歴史がしっかりと刻まれ続けていることに、不思議な安堵を覚えたのでした。』と述べています。

週刊誌も馬鹿にしたものでない(3)

2014-05-14 | 経済と世相
 「ジャーナリストの目」というコラムに、「罰金50万円&保釈で落着」。青木理氏の寄稿になる猪瀬問題の内幕です。
『発端は昨年9月。特捜部が徳洲会グループへの強制捜査に乗り出したことだった。容疑は公選法違反。・・・徳田氏の家族らが相次いで逮捕された。
 背後にあったのは徳洲会の内紛だ。徳田氏の側近としてグループの実務をとりしきってきた能宗克行氏と徳田氏の家族が対立し、能宗氏がグループを追われたのである。
 グループの表も裏も知り尽くした能宗氏は、それが義憤なのか私憤なのかはともかく、内部資料を抱えて特捜部に駆け込んだ。
 ここから飛び火したのが猪瀬氏の借り入れ問題だった。能宗氏が特捜部に情報を提供し、強制捜査でも関連の証拠を入手。都知事選前に猪瀬氏が徳洲会から5000万円を受け取ったという噂は徐々に広まり、朝日新聞が昨年11月22日にスクープ。
 メデイヤ報道が盛り上がる中で市民団体も猪瀬氏を告発し、捜査の焦点は徳洲会本体から猪瀬氏問題にシフトした。
 特捜部の現場はやる気満々だったらしい。
 だが、贈収賄の証拠は得られない。辛うじて公選法違反容疑は固まったものの、猪瀬氏逮捕に踏み込むのは、法務・検察の上層部が難色を示した。公選法違反などチンケな罪で捕まえることへの反対論があったほか、個人的な借り入れだという主張を公判で突き崩せなかった場合、検察が傷を負うという危惧もあったという。
 エリート検察官僚に捜査現場が抑え込まれた格好になる。
 とはいえ、検察には不起訴の選択肢を取れないジレンマもあった。猪瀬氏は市民団体に告発されており、不起訴にすれば検察審査会の対象になる。・・・
 そこでひねり出したのが、罰金ですむ略式起訴という妥協策。これなら、検審にひっかからないし、猪瀬氏側も起訴されるよりマシという判断で受け入れたというより、検察の都合を押し付けられた。要するに、検察は「正義の機関」などではなく、組織の保身とメンツを優先する官僚組織に過ぎない。
 ところで騒動の発端となった能宗氏だが、貴重な情報を持ち込んだのに、一連の捜査で警視庁に業務上横領容疑で逮捕されてしまった。
 最終的に猪瀬氏は50万円の罰金を納めて落着し、検察に屈服してすべてを認めた徳田氏の一族も保釈された。一方、能宗氏は現在も収監中である。 

週刊誌も馬鹿にしたものでない(2)

2014-05-13 | 経済と世相
「ドクターZはしっている」というコラムに、こんな文章。
『文科省が新たな補助金制度をスタートさせる。日本の大学の国際競争力の向上を目的に、全国30校を「スーパーグローバル大学」に指定し、億単位を補助するという。具体的には、世界の大学ランキングの100位以内を目指す力のある大学を「トップ型」とし、指定した10校に最大で年間5億円、先進的な研究や取組みを行う「クローバル化牽引型」も20校指定し最大で3億円をそれぞれ補助する。
 ・・・そもそも大学の「グローバル化」とか「世界レベル」はどう考えたらいいのだろうか。
 大学の世界ランキングは、いろいろな機関から出されている。その中で有名なものには、イギリスのタイムス紙が出しているタイムズ・ハイアー・エデュケーシヨンによるランキングがある。
 その「2013-2014版」によれば、世界ランク100位以内の日本の大学は、東大(23位)と京大(52位)の2校しかない。日本の大学を10校以上選ぼうとすると、世界ランク350位まで広げなければいけない。東工大、阪大、東北大、名古屋大、首都大学東京、東京医科歯科大、北大、九州大、筑波大が出てくる形だ。
 これらが「トップ型」の有力候補なのだろうが、何のことはない。首都大学東京以外はみな、国立大学、しかも旧帝大がほとんどである。
 ちなみに2013年度の国立大学運営費交付金のベスト10を見ると、東大783億円、京大520億円、東北大446億円、阪大438億円、筑波大393億円、九大388億円、北大357億円、名大302億円、広島大244億円、東工大202億円と、トップ型の候補とかなり重複している。屋上屋が否めない。
 こうした国立大学には、文科省からの天下り官僚が事務局に入る。さらに、カネをつけて、天下りシステムを強固にしたのだろうか。
 億単位の公的支援なら、他のいい方法がある。民間からの大学への寄付を税額控除するのだ。つまり、民間から大学へ寄付すればその分の税金がすくなくなるようにするのだ。
 従来の補助金が、税金で吸い上げて文科省の官僚が予算で「個所付け」するのに対して、この制度は文科省の官僚に代わって民間が「個所付け」るのだ

 こうしたことを言うと、「民間では適正にカネを使えず、官が公平にやらなければいけない」という官からの反論が出てくる。しかし、官が天下りをセットにしてカネを付けるのと、どちらがいいかと言う問題だ。
 世界ランク100位以内で教育を受けていないような文科省官僚が、それらに対抗していく大学を選べるとは思えない。』
 ゴジック文字の箇所は、小生大賛成の意見です。(続く)

週刊誌も馬鹿にしたものでない(1)

2014-05-12 | 経済と世相
週刊誌も馬鹿にしたものでない、と思わせる記事が、週刊現代5月3日号にありました。
その一つ、「理研は利権」と題するコラム、筆者は古賀茂明氏。
『「特定国立研究開発法人」という新しい制度を作るための法案の国会提出が先延ばしになっていることをご存じだろうか。この制度で認められる「特定国立研究開発法人」に指定されると、国から巨額の予算がもらえるだけでなく、国際的に優秀な「スター研究者」を億単位の報酬で招くことができるなど、世界最高水準の研究遂行体制が整備されるというものだ。
 何故か法案成立前にもかかわらず、3月には、「理研」が「候補」に選ばれていたのだが、STAP細胞騒動が起きたので、菅官房長官は、この法案の閣議決定を先延ばしする方針を示した。騒動の原因を解明し、対策をとった上で法案を国会に提出し、成立後に理研を指定する意向だという。
 マスコミは何も指摘しなかったが、これは、非常におかしなことだ。なぜなら、理研はあくまでも特定国立研究開発法人の一候補に過ぎない。実は、他にも候補がいる。理研同様、国の独立行政法人である産業技術総合研究所である。本来は、法案を早く成立させ、理研の指定を見送って、産総研だけを指定すればよいはずだ。
 では何故、法案提出が先送りされたのだろうか。実は、この法案は元々「理研のための談合法案」だったからである。
 理研には役職員に現役の文科省官僚が出向し、給料を払ってもらっている。文科省にとって大事な独法である。そこで、理研の所管官庁である文科省の官僚たちが、自らの「利権」の源である「理研」に巨額の予算を流し込んで、好きなように使える仕組みを作ろうとしたのだ。経産省所管の産総研だけが指定されてそこに今年度の巨額の予算が流れる、なんてことは文科官僚にとっては到底許されることではない。
 今、文科官僚が考えているシナリオは、小保方氏に全責任を負わせて幕引きし、理研には簡単な原因究明と対策を実施させて、特定国立研究開発法人認定の環境整備をする。理研の指定を確実にしてから法案を国会に提出するという段取りだ。
 理研の尻を叩いて。野依理事長じきじきに自民党の部会に出席して説明を行わせたのもそのため。・・・・』
 「理研問題」には利権が絡んでいるようです。(続)

思考停止状態

2014-05-07 | 読書
『銀行問題の核心』(江上剛&郷原信郎著、講談社現代新書、2014年2月)を図書館の棚で見つけて読んでみました。マスコミでおなじみの二人の対談ですが。ご両人の履歴がユニークです。江上さんは、早大政治経済学部政治学科の卒業後、第一勧銀に入行。97年の勧銀総会屋事件の混乱収拾に尽力。支店長時代に小説家としてデヴュー。
 片や、郷原さん。東大理学部卒で、検事任官。2006年退官後、弁護士。著書に「『法令順守』が日本を滅ぼす」(新潮新書)、『思考停止社会』(講談社現代新書)など。
―――大学で地質学をやっていた関係で、卒業後に鉱山会社の技術者として就職したんですが、すぐに自分が地質屋にまったく向いていないことがわかって、会社を辞めて司法試験を目指すという無茶なことを考えました―――
 お二人は、陸山会事件、銀行のシステム障害、大阪地検の証拠改ざん事件など、語り合っているのですが、事件の背景に、以下の言葉がすべて共通するように思われました。
郷原 九州電力の「やらせメール事件」の第3者委員会をやっているとき、中堅社員が「うちの会社は思考停止しないと出世できない組織ですから」と言っていました。まともにものを判断する人間はどんどん排除されていく。現場では電力を安定的に供給するために日々状況に対応し、判断して仕事をしていかないといけないのですが、課長以上になると、上のいうことを聞いて上に気に入られる人間が出世していく、そういう思考停止状態の人間だけが会社に生き残っていく・・・・
 まず、銀行のシステム障害。
江上 2002年に3行が統合して、システムも一緒にするときに大規模なシステム障害事故がありました。そのとき僕はまだ銀行にいて支店長をやっていました。そこでシステム統合前に富士銀行の役員などを集めて、絶対お宅のシステムのほうがいいからそれをもっと主張してくれと働きかけていたら、第一勧銀の役員から、おまえはなんだ、余計なことを言うなと言われましてね。だってどう考えても富士銀行のシステムの方が優れていて問題はおきませんよと、いったんですけどね。第一勧銀は第一と勧銀が一緒になるときも問題を起こした諸先輩の過去があるんじゃないですかというようなことまで言ったんですが、第一勧銀のシステムを使うことはもう既定路線だ、400億円も使っているんだ、余計なことを言うなって言われました。
 システム統合に合わせて、新しい伝票に全部切り替えるから古い伝票を全部破棄しろと本部から指示がきたんです。でも僕は・・・古い伝票を最低一か月分を持つように指示しました。
 そしたらオンライン事故でしょう。当然、古い伝票以外は使えない。他の支店の連中が古い伝票を僕の支店に取りに来ましたよ。
 次に陸山会事件と検察の証拠改ざん。
郷原 2009年の西松建設事件、翌年の陸山会の土地取得を巡る事件での政治資金規正法違反の立件に対しては、徹底して批判しました。従来の政治資金規正法の罰則適用からはあり得ないやり方で、まさに暴走捜査でした。そして、大阪地検の郵便不正事件では、厚労省の現職局長村木敦子氏(現事務次官)を逮捕、起訴しましたが、無罪判決を受け、しかも、主任検事の証拠改ざんまで明らかになり、検察に対する信頼は失墜した。・・・共同捜査に組み込まれると、検事個人は何も考えず、ストーリー通りの供述調書を作って署名させるだけの組織のマシーンになることを求められるのです。
郷原 西松建設社長を外為法違反で逮捕したのですが、その容疑事実というのは、交通違反程度の微罪でした。一部上場企業の社長をこんな微罪で逮捕したのに、その先に何もなかったことになると、特捜幹部の責任問題です。そうなると、普通ならやらないような事件でもなんとか立件して、特捜部として捜査の出口をつくりたいということで、政治資金規正法の強制捜査に着手したんだと思います。
 政権側が検察上層部に指示して、特捜部が動いたという「国策捜査」ではなく、あくまで特捜部の現場が無理な操作に着手しようとしたのに対して、検察内部で、どうしてそれをとめられなかったのか、という問題だと思います。
郷原 特捜部として捜査の対象とすべき案件かどうかということを見極めることがきわめて重要です。しかし、そもそも特捜部というところは、事件を選別しているところだというところが、一般の人にはあまり理解されていないように思います。
 たとえば、殺人事件であれば、事件が発生しているのに捜査しないということはあり得ない。・・・しかし、特捜部が手掛ける事件というのはそうではなくて、事件を捜査の対象とするかどうかについて、まず特捜部の現場が判断する。そこで、やろうという話になった事件について、最高検も含めて上層部の了承の下に強制捜査に着手するんです。ですから・・・問題は、そういう事件の取捨選択が適切に行われているのかどうか、そこをチェックする仕組みがうまく機能していないということなんです。
 昨年秋のみずほ銀行への業務改善命令。
郷原 2013年9月の金融庁のみずほ銀行への業務改善命令は、「反社会的勢力との取引を把握してから2年以上も対応を行っていなかった」「反社会的勢力との取引が多数存在するという情報も担当役員止まりとなっていた」の2点を問題にしたものです。
 後者について言うと。報告が担当役員止まりだったというのは事実でなくて、取締役会やコンプライヤンス委員会に報告されていた。
江上 「頭取の佐藤さんの説明しかないんですが、報告書には反社融資に関して2,3行・・
 この話を聞いて僕は1997年の第一勧銀の総会屋事件のことを思いだしたんです。総会屋事件で東京地裁が審査担当役員などみんな捕まえていったんですが、あのときもみんな、担当者は総会屋のことを報告書に1行か2行しか書いてないんですよ。1行か2行しか書いていない書類に、役員ははんこを押した。そのはんこを押した人たちが、みんな捕まっていった。
 では、なんで1行2行しか書かなかったのか。重大なことなのに不思議なことだと普通は思いますね。たとえばAという融資先を、こうやって鵜飼融資しましたといったことが1行しか書いていない。でも、ここで総務の担当者の意図として、上にあまり知られたくないという思いが働いたんだと思うんですよね。」
 上も下も思考停止状態だった?
もしかしたら、小保方問題にも、理研内部に思考停止状態があったのかもしれない?

渡辺淳一さんの訃報に関連して

2014-05-06 | 読書
 渡辺淳一さんの訃報に関連して、今朝の中日春秋にこんな記事が載っていました。
『政治記者は朝、政治家の自宅を訪問し、情報を得る。十数年前、保守系政治家が日経新聞の記者を大切にするという現象があった。スクープを許すかもしれない。こちらとしては放置しておけない
▼なぜ日経新聞の記者をかわいがるのか。噴き出しそうな理由だった。この政治家は日経連載の『失楽園』の続きを一刻も早く読みたくて、この記者に相談していた
▼後年のテーマは老い。その理想は「年甲斐(としがい)のなさ」である。「地味な格好をして、恋愛もせず、庭いじりと孫の相手をして死んでいく。そんなもったいない話はありません」。時代に敏感だった流行作家の死。勇気とエールをもらったシニアたちは「年甲斐もなく」嘆いてもいいか。』


 今日もプールに出掛けた後、3Fの図書館に寄ると、渡辺淳一さんの著書が並べられていた。早速『熟年革命』(講談社、2008年4月刊)を借りてきました。
冒頭、こんな文がありました。
『日本人の平均寿命はいま男性が79歳、女性が86歳・・・定年退職してからもまだ20年はあるわけで、この時期をいかに生きるかは、きわめて重要な問題です。
 まず、これまでは老人とか、シルバーとかいった故障で一括りにされていた高齢者の呼び方を変えるべきです。・・私が提唱したいのは「プラチナ世代」という呼び方です。
 「プラチナ世代の誓い」として、次のような言葉を考えてみました。
われわれは世間体のこだわらず
常に好奇心いっぱいに
好きなものを追いかけ
相手と自分を誉めて
おしゃれで素敵なワルになることを誓います。
・・・年相応にオイルなど、誰でもできるつまらないことです。
それよりもぜひ「年甲斐のない人」になってほしいのです。』

年甲斐のない人か!でも、階段を踏み外して大怪我をする年甲斐のない人は、まずかった!