古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

BSEの謎 2

2005-03-04 | 読書
以上の復習から、動物の身体の中のたんぱく質は、自ら
のDNAの設計によるたんぱく質だけが存在し,そうでないたんぱく質が存在したら
異常であることが分かる。
 そうした異常を生じないため、身体はいくつかの防壁を設けている。まず、胃や腸
の壁は目の細かいフィルタになっていて、分子量の小さいアミノ酸は通過できるが、
分子量の大きいたんぱく質は通過できない。次に,もし体内に入っても、血液中に入
ると、免疫細胞が発見して処理してしまう(拒絶反応)。特に、脳に入る血管には、
特別なフィルターがあって、危険な異物が入らないようにしている。
 BSEというのは、プリオンなるたんぱく質が脳に入りこんで脳細胞を破壊する。
脳がすかすかになって、空隙ができる病気(海綿状脳症)で、最初は羊に見られるスクレーピーとい
う病気でしたが、この病気にかかった羊から作った肉骨粉を牛に食べさせたことから
広がった。
 ヤコブ病という病気があります。これも脳がすかすかになる病気ですが、脳の外科
手術で、ヒト乾燥硬膜「ライオヂュラ」(ドイツの医薬品メーカー、B.ブラウン社
の製品)を使ったことで感染が起こりました。この場合,最初から防壁をパスして、
脳に病原体が入ったと思われます。

 プリオンはどうやって牛の身体の防壁を乗り越え牛の脳にまで入ったか?
 動物の身体には,免疫という機能があり、免疫には病気に対する抗体が必要です。
抗体は体内で作られますが,生まれたばかりの時には授乳などによって母親から貰
う。乳を飲んでも、前述したように、胃や腸の壁は抗体(たんぱく質)を通さない、
分解されてしまうと、母親からの抗体は子供の体内に入らないことになります。とこ
ろが、うまく出来ていて、誕生後しばらくの期間、胃や腸の壁のフィルターの目が粗
い期間があって、抗体蛋白が体内に入ることが出来るというのです。うまく出来てる
んですが,この期間は、抗体蛋白以外の、入っては困るものが入りうる危険な期間な
のです。
 で、三番目の謎ですが、英国では、生まれたばかりの牛に乳を飲ませず、水に溶か
した肉骨粉を飲ませていたのです。他の国では、肉骨粉は飼料として与えたが、乳
の代わりに肉骨粉を与えることはしなかった。英国の牛の新生牛は母乳を取り上げら
れ、代わりに奇妙な餌を与えられ、BSEが発生したら,集団殺害された。牛にとっ
ては、ナチス以上の蛮行だった。
 次に二番目の謎。前述したように、動物の体内には、異常なたんぱく質が入らない
ように、いくつもの防壁があるのですが、この防壁での検査の眼を潜り抜けやすいの
は,同じ動物のたんぱく質なのです。別の動物の蛋白はすぐ判断できるが、同種の動
物のたんぱく質は、自分のたんぱく質との違いが微妙ですから、見逃す危険性があり
ます。これが、共食いのケースで、この病気の発生率が高い理由です。
 4番目の謎です。実はBSEは潜伏期間の長い病気なのです。だから、新生児の
時、感染したとしても、発病するのは成牛になってから。若い牛を検査しても、今の検査制度ではBS
Eは発見できない。だから、現状では検査をしても意味がない。とは言えるが、それは若い牛
は安全だと言うことではない?と危惧するのです。(続く)

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