古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

円安亡国

2017-03-02 | 読書
トランプ大統領の最近の発言が気になっている。「日本は為替安に誘導し、日本の対米輸出を増やして米国人の雇用を奪っている」。これに対して豊田社長の反論も気になる。「トヨタは米国に投資し米国での生産台数を増やして米国の雇用に貢献している。トヨタは日本のブランドだが、トヨタ車は米国の車でもある」。
日本の製品に限らないが、米国に輸出される製品は米国人に安価で性能も良く、米国人の消費生活を豊かにしているのでは?そうだとすると、米ドル高は米国人を豊かにしている?
一体円安ドル高は、日本人を豊かにしているのか、米国人を豊かにしているのか?為替の問題を整理して勉強する必要があると考えていたところ、書店で文春新書の「円安亡国」(山田順著、2015年7月)を見つけた。
 著者は、「光文社ペーパーバック編集長を経て、フリーランス。著書に「出版大崩壊」、「税務署が隠したい増税の正体」(いずれも文春新書)あある。
この本で一番興味深かったのは、「帝国循環」という言葉です。
 世界史を見れば、覇権国家は常に従属国家群から富を奪うことで成立してきた。これを「帝国循環」と呼び、世界経済はいまもこのシステムで回っている。
 ただし、現代の帝国循環は、通貨制度が固定相場制から変動相場制に変わったなかで、資本(つまりドル)が世界中を駆け回ることで成立している。通貨発行権は国家主権の基盤である。しかし、ドルを基軸通貨とする変動相場制とグローバル経済の進展は各国からそれをほぼ奪ってしまった。
 ニクソンショック後の日米関係を見れば、1985年のプラザ合意も、1990年代後半からの金融ビッグバンも、すべて帝国循環をどうするかという日米の話し合いだった。帝国循環のためには、覇権国のシステムと従属国のシステムを同じにする必要がある。資本移動を自由にさせ、自由貿易を促進させ、貿易ルールを同じにさせる必要がある。グローバリゼーシヨンがかつて「アメリカナイゼーシヨン」とされたのは、これを意味する。
 これまでアメリカは、BIS規制、時価会計、三角合併、時価総額経営などの新しいルールを日本に要求してきた。これに対し日本は、その要求をどこまで飲むかという交渉を繰り返してきた。
 残念ながら、日本が新しいルールを作ったことは一度もない。覇権国は常にルールメーカーであり、従属国家群はそのルールの中でプレーするプレーヤーに過ぎない。
 現在、アメリカは世界最大の対外純債務国で、日本は世界最大の対外純債権国である。普通に考えれば、債務国のアメリカより債権国の日本の方が豊かでなければおかしい。しかし実際には、アメリカは」世界の富をほぼ独占し、日本よりはるかに豊かである。なぜそれが可能か?帝国循環である。
 アメリカは、毎年年度の資金循環統計を発表している。また毎月月次国際資本統計を発表している。これらを見ると、アメリカには絶えず外国からの資金が流入している。常に外国人はアメリカ債券(アメリカ国債)を買い越している。その買い手の筆頭は日本や中国である。
 アメリカは、世界最大の対外純債務国で、貿易収支も経常収支も常に大幅な赤字です。2013年の経常収支は、日本は610億ドルの黒字、アメリカは4510億ドルの赤字。アメリカの経常収支は1980年以降黒字化したことは一度もない。
 ところが、所得収支を見ると、アメリカは世界最大の黒字国です。常にアメリカに資金が流れ込み、それをアメリカが世界中に投資しているからです。アメリカは国債などによって低金利の資金を大量に調達し、それを対外直接投資に回して利ざやを稼ぎ、またその投資は世界の株式など金融市場にも投入されて所得収支を稼いでいる。
 2015年4月15日、アメリカ財務省は2月の国際収支統計で、日本がアメリカ国債保有額で中国を抜いてトップになったと報じた。(日本が12244億ドル、中国は12237億ドル))
 アベノミクスが始まって以来、日本は米国債を買い増し続けている。
 2013年7月で11354億ドルだったから、1年半で900億ドルもアメリカ国債を買いました。2014年は消費税増税で約6兆円を国民は日本政府に差出したが、この額は米国債買い増し額に匹敵しない・
 日本政府は為替介入をするとき、その理由を「輸出産業を支えるため」としてきたが、しかし、円売りドル買いは最終的に米国債を買っているのだから、輸出企業救済以上にアメリカ救済措置である。なぜなら、日本政府は為替介入するときは必ず米国財務省の許可を得て実施しているからである(米国に為替誘導を非難されるいわれはない。)
 この本を読んでわかった結論。
米国は帝国循環で充分所得を稼いできたが、稼いだ所得が米国内でどのように配分されたかを見ると、当然ながら投資家にのみ渡っていて、低所得の白人層には渡らない。その不満がトランプ大統領を産んだ。これを解決するには米国内のシステムで、国内の所得配分を正さねばならないのに、外国企業に雇用への貢献を要求しているのだ。

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