古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

4次元時計は狂わない

2017-03-01 | 読書
22日の株式講演会の帰途、丸善で立ち読みしてGETした文春新書2冊は、掘り出し物でした。
立花隆著『4次元時計は狂わない』(2014年10月刊)と、『円安亡国』(山田順著、2015年7月刊)です。以下に内容紹介です。まず、『4次元時計は狂わない』
著者が文藝春秋2011年5月号から執筆した巻頭論文を編んだ本です。面白い話題がいっぱいでしたが、最初に、時計の話です。
 日本でいま世界最高の時計が作られつつある。世界で最も正確な時計で、光格子時計と
呼ばれる。100億年に1秒しか狂わない。宇宙創成(ビッグバン)から動かしても1秒しか狂わない。
 いま、世界でもっとも正確とされ、世界標準時刻を刻むのに用いられているのは、セシウム原子時計。ところがこの時計は数千年に1秒くらい狂う。千万年は秒で数えると10の15乗だから、これを時間制度15ケタという。光格子時計は、理論的に18ケタの制度を出せるというのだ。
 時計もこれくらいの制度になると、全く異質の計測器になる。単なる時間の計測器ではなくなって、アインシュタインの相対性理論でいう「時空の歪み」を測れるのだ。
 アインシュタインによれば、我々が住んでいるこの世界は、時間と空間が結びついた4次元世界である。
 しかしこれまでは、時間や空間が縮むという相対論的な効果は、光速に近いスピードで動く空間についてだけ言えることで、我々の日常世界とは無縁と考えられていた。しかし、時間を測る制度が18ケタまで上がると、そうでなくなる。
 この時計の基本のアイデアを出し、試作器を作っている東大大学院の香取秀俊教授。
「これだけ精度の高い時計だと、地球の重力のほんのちょっとした違いもその時間計測に影響する。逆に言うと、時間計測の微小な変化でもってその時空の重力によるゆがみを精密検出できる。今この時計を試作して精度を確認中ですが、すでに17ケタに達していることが確認されている。時計を置く場所の高さが50m違うと確かに50mの重量差を感知する。精度が18ケタ迄上がると1センチの上げ下げ下だけでその重力変化を感知する。そこまで行くと、地球は太陽と月の引力の影響で46時中潮汐変化を起し、その効果で地球全体がゴムまりのように膨らんだり縮んだりしているのがわかる。それだけ鋭敏な時空の歪み検出系になる。将来的には、いわゆる地下資源(密度の違う物質の存在は微妙な重力の変化をもたらす)の探査にも使えるし、地殻変動による重力の変化も鋭敏に察知するので、プレートの移動が測れて大地震の予測にも使える。
いま、日米欧で次世代世界標準時間の基準となる新しい原子時計作りの激烈な競争が始まっている。時計技術と言えば、江戸時代、日本人は西洋式機械時計にいろいろな工夫を凝らして、和風不定時法の時刻表示(夜明けが開け六つ、日暮れが暮れ六つ)の時刻表示をさせた。これが和時計で、その最高傑作が科学博物館[上野]にある。からくり儀右衛門と呼ばれた江戸期最高のエンジニア田中久重が作ったもので七曜、24節季.10干12支、月の満ち欠けまで示した。
 田中は明治以後、電気通信分野に進出し東京に工場を作った。これが後に東芝になった。

最新の画像もっと見る