古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

知的ヒントの見つけ方

2018-05-11 | 読書

『知的ヒントの見つけ方』(立花隆著、文春新書、2018年2月刊)を読みました。月刊文芸春秋の巻頭随筆の2014年8月号から2017年12月号までをまとめた本です。

 第二次安倍内閣が成立したのが、13年の12月ですから、ほぼ現安倍内閣の治世にかかれたものと言えます。現在の内閣について立花さんがどう分析しているかを知りたいと買い求めてきた本です。

 まずは、「文民統制の危機」(2016年11月)です。

 9月17日の安保法案恐慌採決。

 野党が鴻池委員長の不信任動議を出して議長が自民党筆頭理事の佐藤正久議員(かつてのイラク派遣自衛隊のヒゲの体調)に代わり、不信認が否決され鴻池委員長が復帰した瞬間、強行採決が一挙に進行した。

突如屈強な自民党若手議員団が入ってきて委員長席を取り囲んだ。野党議員も駆けつけ、怒鳴りあい掴み合いの乱闘シーン。怒号が飛び交う中、ヒゲの隊長が手を何度か上下に振ると、それに合わせて与党議員たちが建ったり座ったりを繰り返した。聴取不能の8分間で合わせて11本の安保関連法案の採決が全部終わっていた。高等手品のような法案さばき。目立ったのは議場の一郭から全体の指揮をとっていたヒゲの隊長の采配ぶりであった。

 軍がかかわる最重要の国策変更を元軍人が全面に出て強行突破で片づけた。わずか8分で。これを見て、軍が中心になって行動すればクーデターなんかすぐにできると思った。軍はそうした危険性を内包した組織であるから暴走を絶対にさせない仕掛けを内部に持っていないといけない。シビリアンコントロールである。

日本は軍隊を持ちながらその内部にシビリアンコントロールの原則が貫徹していないという世界でも珍しい国になったのだ。

 それから「この後イスラム国問題、どういう展開を採るのか。全く予想がつかない。そもそもあの地域における日本国の存在意義もわからない。日本は英米仏の尻尾にくっついて有志連合の一国に入っているらしいが、それについて国会でまともな議論がんされたこともない。湯川さん、後藤さんの死に安倍首相の中東における親イスラエル的振る舞いが関係いしているのではないかと言われたがこれまたほとんど議論されていない。彼らを殺害した黒服の死刑執行人の方はアメリカの無人機で狙われ殺されている。話の背後に何らかの大義が認められるなら、まだ読む方も救われるが、殺害の意義など誰も論じない。一連の事件は空しい話ばかり。日本国の側に大儀があるのかといえばそれもない。大義のない者同士が空しい死闘を繰り広げる時代になってきている。」(2016年2月号)

「最近政治というものは面白いものだと思っている。何が面白いって、政治の世界ではたびたび思いもかけなかったことがハプニング的に起こり、それまで「これで決まり」と思われていたことが、突然ひっくり返ることがあるからだ。」

 何の話をしているかと言えば、最近に週刊文春の記事である。

『安倍一驚時代の陥穽』と題する文を読みだすと、

「最近も週刊誌のスクープでいろんなことあったと思った。」ここで言っているのは最近の出来事でなく「甘利経済再生大臣のあっせん収賄の話。二年前の話だった。「最近日本と言う国は、妙に一般道徳水準が弛緩して勝手なら起こり得なかったことが平気の平左で起こる国になった。」

 「首相の施政方針演説も美辞麗句を並べているが、一億総活躍社会だの、アベノミクス3本の矢だの、もっともらしいが、美辞麗句の裏側は、実は怪しい運転技能しかもたない運転手が日本国民みんなを載せたツアーバスを猛スピードで運転しているのに等しい。(2016年3月号)

「日本の政治は小選挙区制に移行してから、政治家のスケールが、中選挙区制の時代とくらべて驚くほどちいさくなってしまったようである。」

 

 甘利大臣の口利き疑惑、宮崎健介議員の妻の出産目前の不倫で議員辞職など、日本の政治家はどうなってしまったと唖然とするような話ばかりだ。

これらの一連の出来事に真正面からぶつかる形で発せられたのが、日銀のマイナス金利政策。

この政策が日本の手詰りに陥りつつあった金融政策にどのようなプラスないしマイナスの効果をもたらすのか、いまのところまだ何とも言えない。NHKの「日曜討論」で、識者を集めてその功罪を語るというので、聞き入ったが、わかったことは何もなかった。というよりも、識者たちもみんな確実なことは何もわかっていないことが分かった。教科書に書いてあるようなことはわかるが、それ以上のことは、経済に関してはやってみないとわからないことが多すぎるというのが正直なところだ。日本に限らず、いま各国でマイナス金利の世界にあしを踏み出そうとしているところが多いようだが、各国とも、その世界に死を踏み入れたら何が起こるか、必ずしもわかっていないようだ。(2016年4月号)

最後に、立花さんの心配。

「日本人はみな、米国と北朝鮮の戦力の差は圧倒的な差があるものだから、金正恩がいくらバカでも(相当のバカにはちがいないようだが)本当の戦争をするところまではいくまいとタカをくくっていて、まだ本当のパニックを起こすところまではいっていない。

しかし歴史的には、現状以上に戦争なんてありえないと思われる状況から本当の戦争が起こってしまった事例は沢山ある。そろそろ日本人も本気でリアルウオーが朝鮮半島で突発してしまうことを警戒しはじめたほうがいいのかもしれない。トランプも金正恩も同じ程度にアタマが少し狂っているから、戦争の発生を本気で心配すべきところまで来ているのではないかと思う」(2017年12月)


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