古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

お金を貸す側の問題

2015-08-28 | 経済と世相
 図書館で新着雑誌を見ていたら堤未果さんの「ギリシャ軍事予算」という寄稿を見つけました。
【6月30日、ギリシャはIMFへの返済ができず、事実上債務不履行に陥った。7月5日にはEUからの要望である緊縮策の賛否を問う国民投票が実施された。ここで財政赤字が膨れ上がった原因は・・・債務の半分以上を占めると言われる防衛予算だ、
 NATO同盟国28ヶ国の中で、ギリシャの予算に占める軍事支出比率はトップのアメリカに次いで2位と突出している。金融危機から5年経った2015年においても財政赤字がGDPの175%だった前年よりも軍事費は1%増やしGDP比2.45%というEU最大規模を維持し続けている。
「1300車両というイギリスの2倍以上の数の戦車が本当に必要かどうかは議論が分かれるところだろう。だが、トルコの軍事的脅威に対しバランスをとるためには、やむを得ない」
トルコの脅威。だが本当にそれだけか?
奇妙なことに、危機に陥ってからこの間、IMFやEU、欧州中央銀行から提示された緊縮財政メニューの中に軍事費削減は載っていない。
 ギリシャへの財政支援条件として最も強く緊縮財政を要求している最大債権国のドイツも、ギリシャに軍事費を半減させ、ドイツと同じGDP比1%台に抑えることでIMFへの当座の支払をさせるという現実的な要求は決してしなかった。代わりにメルケル首相は、救済金の大半を国内経済の立て直しでなく軍事支出に振り分けるよう、ギリシャ政府に圧力をかけている。
だがメルケル首相にはそうするだけの理由があった。ドイツは武器輸入大国ギリシャから、アメリカに次いで恩恵を受けている。因みに輸出国3位は、ドイツ同様長年ギリシャ政府に軍事費造の政治的圧力をかけてきたフランス。2010~2014までの5年間、ギリシャ政府は5億5100万ドル分の武器をドイツから。1億3000万ドルの武器をフランスから購入している。
2010年に、メルケル首相とサルコジ大統領が、借入金が入る前に武器輸入契約の維持をギリシャ政府に約束させた。2013年には、ドイツの防衛産業からの収賄でギリシャの元防衛大臣他政府高官が逮捕された。(堤未果)】
お金を借りている側の問題だけでなく、お金を貸している側の問題もあるようです。
そこで、最近評判の『「ドイツ帝国が世界を破滅させる」(エマニエル・トット著、文春新書)の記述を思い起こしました。
 (余談になりますが、この著者は、フランスの歴史人口学者で、人口動態に注目することで、『最後の転落』(76年)で「ソ連崩壊」を、『帝国以後』(2002年)で、米国発の金融危機を、『文明の接近』(2007年)で「アラブの春」を予言しています。)
この本は、「ドイツがヨーロッパを牛耳る」ことを記述しますが、それを論ずる過程で、
「国家債務が今日問題とされているが、問題は、お金を借りる側でなく貸す側にある。」と論じていました。「政府への貸し付けは、富裕層のもつカネの安全化だ。政府債務は民間金融機関の発明なのだ」と。
「2008年の危機(サブプライムローン・ショック)の出発点は、中国その他の国々が、低賃金のおかげで世界の生産のうちの大きな部分を占有して、それが富裕な国のなかでの所得の抑制、需要の不足を生み出したことに起因する。即ち、今日の資本主義の問題は需要不足、カネの貸出先不足という貸す側の問題だというのです。
面白い着眼点だと思いました。


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