古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

RE:円安亡国

2017-03-06 | 読書
[円安亡国]の記事に読者から質問が寄せられました。
ご質問は「帝国循環」の意味?と、円安は日本経済にプラスか?の二つです。
「帝国循環」の意味から始めます。ここでいう『帝国』は基軸通貨を発行する権限を持つ国です。「基軸通貨」とは貿易の決済に使用できる通貨です。
即ち、「帝国循環」とは、基軸通貨を発行する国が、通貨の循環過程で、基軸通貨が発行国に還る仕組みが出来ていて、その循環過程を利用して発行国が利益を上げられるようになっていることです。
 現在の国際経済で、基軸通貨は米ドルで、帝国、即ち基軸通貨発行権を有するのは米国です。
なぜ米ドルは基軸通貨なのか。第2次大戦後のブレトンウッヅ協定では、米ドルは金本位制をとり、その他の国の通貨は米ドルとの間で固定相場制をとることで、米ドルを基軸通貨にしたのです。ところが、1971年のニクソンショックで、米国はドルの金交換を停止しました。それまでは米ドルは金との兌換券として価値を保障されていました。金兌換停止でドルは価値を保守するシステムはなくなり印刷した紙切れに過ぎなくなりました。そこで、米政府は、産油国に原油取引は米ドルで決済することにさせたのです。つまり、ニクソンショック以前の米ドルは金本位制でしたが、ニクソンショック以後は原油本位制にしたのです。それによって米ドルは基軸通貨の地位を保ったのです。ところが、このシステムに挑戦したのが、イラクのフセイン大統領です。米国はイラク戦争を起こしてフセインを打倒し、米ドルの基軸通貨の位置を守りました。
では、米ドルが基軸通貨であることを利用して、どのように利益を上げているのか?
国際収支で黒字を稼いでいる国に稼いだカネで米国債を買わせるのです。これで得た資金を外国に投資して資本収支を稼ぐのです。貿易収支の悪化でドル安になっても、外国の購入した米国債の価格低下のリスクは、購入した国が負担します。
ところがそうして稼いだ米国の富は、米国の国民大衆には分配されないので、米国内の貧富格差は大きくなり、トランプ大統領は、海外企業に「米国雇用への貢献」を要求しています。今回のトランプ大統領の誕生も、米国国内の貧富格差の拡大が原因します。

次に円安は日本経済にどう影響するか。アベノミキウスで考えてみましょう。
異次元の金融緩和で、はっきりしたのは円安です。円安の結果何が起こったか。輸出企業の収益向上です。円安で、円評価の売り上げが拡大し、海外に有する資産の評価金額が増加したからです。株価は上昇しましたが、賃金は上がっていません。
 また、アベノミクスで目的とした2%の物価上昇は起こりませんでした。金融を緩和すれば物価が上がり、物価が上がる前にカネを使おうとすればデフレは脱却できるという目論見でした。しかし、貨幣価値の安定を使命とする中央銀行が物価の上昇を測るというのは異常です。日銀が通貨を増発しても、その通貨が市中で使われず日銀の民間金融機関の日銀当座預金額が積みあがるだけでした。
 円安になれば海外から輸入するものの価格が上昇するから物価が上がる筈なのに、賃金が上がらない庶民にとっては幸運にも上がらなかった。原油価格が低迷していたからです。
 通過を増やせば物価は上がるという説は必ずしも正しくないということを実験したのがアベノミクスであったと私は考えます。
 しかし、原油価格が上昇に転ずれば、円安のデメリットはもろに出てきます。円安で海外に売れるものが増加し、国内生産が増えれば、円安のメリットがあるのですが、企業は円高対策で海外生産体制を構築しています。だから、単純に海外生産を減らして国内生産を増やすわけにいかない。企業収益が増えても直ちに賃金を増やすわけではない。円安で株価が上がっても日本経済の景気が良くなるとは言えないのです。

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