shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Punkles For Sale

2010-09-20 | Beatles Tribute
 9月に入って少年ナイフにラモーンズと、このブログもすっかりガレージ・ロック月間と化した感がある。特にこの1週間はラモーンズ三昧で、愛車の中でもガンガン鳴らしながらヘイホー・レッツゴー状態だ。ラモーンズというと十把一からげにして “パンク・ロック” に分類され、もうそれだけでネガティヴ・イメージを持たれて敬遠されてしまうかもしれないが、彼らは逆立てた髪に安全ピンというアホバカ・ファッションで客に唾を吐きかけたりするイメージ先行型の有象無象UKパンク・バンドとは激しく一線を画す正統派のロックンロール・バンドなのだ。確かに彼らのロンドン公演をきっかけにしてUKパンク・ムーヴメントが爆発したのは歴史的事実だが、当のラモーンズはあくまでも純粋に、贅肉を削ぎ落としたシンプルなロックンロールを追及していただけで、「エンド・オブ・ザ・センチュリー」という彼らのドキュメンタリー・フィルムによると、アナーキズムの象徴みたいなUKパンク・バンドと一緒くたにされてかなり迷惑していたらしい。
 彼らの音楽を聴き込めば聴き込むほど、2分前後で完結するその荒々しいロックンロール・サウンドの中に、かつて私を魅了した初期ビートルズと同質のものを感じる。 “N.Y.パンクの旗手” ラモーンズとビートルズって一見何の接点も無さそうだが実は大アリで、そもそもラモーンズというバンド名自体、ポール・マッカートニーがハンブルグ時代に使っていた “ポール・ラモーン” という芸名に因んで全員が“ラモーン”姓を名乗ったことから来ているし、リード・ヴォーカルのジョーイはジョン・レノンから多大な影響を受けたと公言している。お揃いのファッションにマッシュルーム・カットというのも初期ビートルズを意識しているのは一目瞭然だ。
 そんなラモーンズ・スタイルで珠玉のビートルズ・ナンバーを次々と高速化して楽しませてくれるのがドイツの “おバカ” バンド、ご存じパンクルズである。私は彼らの大ファンでこれまでも「パンク!」と「ピストル」という2枚のアルバムを取り上げてきたが、今日は後期のナンバーを中心に選曲された「パンクルズ・フォー・セール」でいってみたい。
 このバンドに関してはアレコレ分析するのではなく、 “ビートルズのあの曲をパンク・スタイルで演奏するとこんな風になるんか... めっちゃオモロイやん(^o^)丿” といった感じで何も考えずにその血湧き肉躍るロックンロールを楽しむというのが正しい聴き方なのだろう。パロディというのは基本的に “笑ってもらってナンボ” の世界なので、そういう意味でもこのアルバムは笑撃の傑作だと思う。
 まず目を引くのが「アビー・ロード」を模したジャケット。メンバーはもちろん、背後には何故か高くそびえるタワーを合成し、ご丁寧にLPの皺やリング・ウェアーまで再現、CDの裏ジャケの上下には何と Garrod & Lofthouse 社製のフリップバック仕様のラインまで印刷するという徹底したマニアックさに脱帽だ。
 このアルバムの一番の目玉は “アビー・ロードB面メドレー” をパンクロック・スタイルで再現した⑫~⑲だろう。コレって常識的には考えられない無謀な発想で、一歩間違うとムチャクチャな演奏になってしまうのがオチだが、いざ聴いてみるとコレが実に見事なパンク・パロディになっている。表面的にはおバカを装っているが、彼らがずば抜けた音楽センスと高度なテクニックを持っている何よりの証だろう。又、コレを聴くと改めてビートルズ・ナンバーの素晴らしさが再認識できるという効用もあるのではないだろうか。 「アビー・ロード」からの選曲では②「カム・トゥゲザー」や③「ヒア・カムズ・ザ・サン」、⑨「オクトパス・ガーデン」もノリノリだ。後期ビートルズのナンバーを初期ビートルズのシンプル&ストレートなロックンロール・スタイルで楽しめるのだからファンとしては堪えられない。
 正調ロックンロールであるオリジナル・ヴァージョンを更に高速回転させた①「バック・イン・ザ・USSR」や⑦「グラス・オニオン」なんか実に痛快だし、⑤「コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロウ・ビル」のドライヴ感溢れる演奏もめっちゃ斬新でカッコ良い。チップマンクスみたいな⑩「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」にはもう笑うしかないし、ゴスペル調の原曲をあろうことかレゲエのリズムを巧く使って換骨堕胎した⑪「レット・イット・ビー」も、心の広いビートルズ・ファンなら(笑)きっと楽しめると思う。やっぱりビートルズはロックンロールと相性抜群だし、何よりも彼らの “ビートルズ楽しいです感” がダイレクトに伝わってくるところが最高だ。
 とまぁこのように私は彼らの大ファンなのだが、2006年にこのアルバムをリリースして以降、彼らの動静が全く伝わってこないのが少々心配だ。まさか「アビー・ロード」をパロッたジャケットで⑲「ジ・エンド」でシメてるのは “これで最後” っていう意味とちゃうやろな(>_<) ビートルズの公式録音曲213にソロ・ワークスも含めれば、まだまだネタはあるだろうから、これからもラモーンズ・スタイルでビートルズの名曲の数々をどんどんパンク化していってほしいものだ。私はそんな彼らのニュー・アルバムを楽しみに待ちたいと思う。

The Punkles "The Punkles For Sale!" - Promo Video 2006


バンガロウ・ビル

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