shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Best! Menu / サディスティック・ミカ・バンド

2010-09-03 | J-Rock/Pop
 B'zやエルヴィスといった男性ヴォーカル一辺倒だった8月の反動か、先週あたりから女性ヴォーカル、特にマイラバを始めとする日本のガールズ・ロック/ポップスをよく聴いている。元々大好きなジャンルだけにネタには不自由しないので、マイラバのような癒し系ポップスからバリバリのロックンロールまでガンガン聴きまくっている。
 私が “日本のガールズ・ロック” と聞いて真っ先に頭に浮かぶのはサディスティック・ミカ・バンドの「タイムマシンにお願い」である。この曲こそがまさにガールズ・ロックの原点であると同時に未だに超えられていない最高峰だと思っている。実際のところミカ・バンドの全作品中に占めるミカのリード・ヴォーカル率は思った以上に低いし、そもそも女性はミカ1人なので彼らはガールズ・ロック・バンドとは呼べないのだが、何と言ってもこの1曲のインパクトが絶大なので、 “ガールズ・ロック祭り” にミカ・バンドは欠かせない。
 私のミカ・バンドとの出会いは中学生の時で、ラジオから流れてきた「タイムマシンにお願い」を聞いて圧倒され、すぐにアルバム「黒船」を購入。この辺りの経緯は「黒船」の時に書いたと思うのでここでは省くが、とにかく「黒船」がめちゃくちゃ気に入った私はミカ・バンドの2枚目は何を買おうかと考えた。1970年代後半の話だからもちろん今のように手軽にネットでディスコグラフィを調べたり試聴したりすることは出来ない。そこで思いついたのがベスト・アルバムである。まずはベスト盤を買って気に入った曲を探し、次にそれが入ったオリジナル・アルバムへと進んでいけばいいと考えた私は、早速この「The Best! Menu」を買ってきた。
 このアルバムは13曲入りで、オリジナル・アルバム収録曲としては、1st アルバム「加藤和彦とサディスティック・ミカ・バンド」からA②「怪傑シルヴァー・チャイルド」、A③「空の果てに腰かけて」の2曲、2nd アルバム「黒船」からA④「タイムマシンにおねがい」、A⑥「四季頌歌」、B②「颱風歌」、B⑤「さようなら」の4曲、3rd アルバム「Hot! Menu」からB③「ヘーイごきげんはいかが」、B④「ファンキーMAHJANG」の2曲、4th アルバム「Mika Band Live in London」からB⑥「塀までひとっとび」の計9曲、それにシングルのみで発売されていたA①「サイクリング・ブギ」とA⑤「ハイ・ベイビー」、未発表ナンバーだったA⑦「お花見ブギ」、そしてバンドがロンドンへ飛び立つ直前に神田共立講堂で開かれた日本でのラスト・ライヴの未発表テープからB①「マダマダ産婆」が選ばれている。
 この LP は前期ミカ・バンドの曲が並ぶA面の方が好きで、私はいつもそちらばかり聴いていた。正直言って後期の3rd アルバム「Hot! Menu」は器楽志向が強すぎて、テクニック的に上手いのは十分わかるのだが持ち味のカラフルなポップさが後退しており、そのフュージョンっぽいサウンドにはイマイチ馴染めない。私にとって、感心はしても感動はしないタイプの音楽だ。ミカ・バンドはやっぱり 1st と 2nd に限ると思っている。
 個々の曲について言えば、“史上最強のガールズ・ロック” な A④「タイムマシンにおねがい」は別格として、まずアルバム冒頭を飾る A①「サイクリング・ブギ」がごっつうエエ感じ。風を切って走るサイクリングの心地良さをサウンド化したような軽やかなノリが絶品で、飄々としたトノバンのヴォーカルに絡む洒脱なコーラス・ワークも見事なグルーヴを生み出している。因みにこの曲ってダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「スモーキン・ブギ」の元ネタになってるような気がするので興味のある方は1度 YouTube で聞き比べてみて下さいな。
 A②「怪傑シルヴァー・チャイルド」は和製クリームみたいなヘヴィー・サウンドにビックリ(゜o゜)  様々な音楽的要素をごった煮風に詰め込んだこの何でもアリの精神がいい。 A⑦「お花見ブギ」はアクの強いヘタウマ・ヴォーカルで毒を撒き散らすミカの独壇場。 “なんと!お花見ブギウギ~♪” で炸裂するミカ節のケタ外れのパワーは圧巻だ。B面では曲・演奏・アレンジと全ての面で最高のミカ・バンド・ミュージックが展開される B②「颱風歌」と、熱気溢れるロンドン・ライヴの様子が伝わってくる B⑥「塀までひとっとび」(英題は「Suki Suki Suki」)が気に入っている。特にこの B⑥はオリジナルのスタジオ録音ヴァージョンとは違って歌詞の一部が英語で歌われており、そこがもうめちゃくちゃカッコイイのだ。
 結局この「The Best! Menu」という LP は CD 化されることはなく、その代わりに数曲を追加した「20 Songs to 21st Century」というベスト CD がリリースされた。ベスト盤として考えれば7曲も多い CD の方がお買い得に決まっているが、バンドの系譜を図解したような無味乾燥なジャケットはあまり好きではないし、アルバム・タイトルも芸が無い。3rd アルバム「Hot! Menu」をもじった洒落たタイトル・センスも含め、私にとってミカ・バンドのベスト盤といえばやっぱりこのアルバムなのだ。

タイムマシーンにお願い♪


サイクリング・ブギ


お花見ブギ